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ファイル:1 リべレイター・リベリオン
決戦
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昨日はどうやって帰って来たのかは思い出せないが、気がつくと俺は、自分の部屋のベットで眠っていた。
這い上がると、今日が決戦当日であることを思い出す。
手錠を確認すると……
鵞利場は先に出たようだ。
[ごめん。昨日は一人にして欲しいの。会場で会いましょう。]
試合を万全な状態で臨みたいのだろう。
俺もそうだから分かる。
冷蔵庫からエネルギーバーを取り出して、齧ると、洗面所で髭を剃り、歯を磨く。
自分の険悪な顔つきを両手でポンポンと叩き、それから顔を洗う。
それからタオルで顔を拭き、洗濯機へと放り込む。
服を公安のものに着替えると、そのまま部屋から出た。
まだ登っていない陽が、俺の顔を照らした。
大きな欠伸をして、それからゆっくりと歩き出す。
マンションを後にして、地下鉄は復旧したようだが、俺はどうも公共機関を利用する気にはなれなかった。
「走るか…… 」
誰に言ったわけでもない。
[スタジアムまでのルートを検索します。]
俺の言葉に反応した手錠のプログラムが、ランニングのルートを導き出した。
息を軽く吸い、それからゆっくりと走り出した。
呼吸は浅く、規則的に。
朝風に当てられた俺の身体が、少しずつ熱を帯びていく。
身体が少しずつ目覚めていっている証拠だ。
身体に血液が回り始めて筋肉が活動を始める。
ギアが上がり始める。
それと共にスピードも徐々に増していっている。
あとコロシアムまで1.5キロほど。
心が引き締まり、鋭く尖る。
それに反して瞳孔が開き、視野が広がっていく。
行き行く人々を、相手の攻撃と見立てて交わす。
途中で手錠に気がついた無能力者たちが俺を捕まえようと躍起になる。
ウォーミングアップには、ちょうど良い。
体勢を低くする。目の前に、俺を、はがいじめにしようとしている男がいるからだ。
懐に潜り込み、そのまま、すり抜ける。
続く右ストレートをスライディングで避ける。
俺をはがいじめにしようとした男の顔に、右ストレートが直撃する。
ナイフで接近してくる男の肩を踏みつけ、寄せくる無能力者たちの頭を踏み台に跳躍する。
空中で回転してから着地し、さらに速度を上げた。
アリーナの入り口に人が集まっている?
だが俺はすぐに意識を集中し直し、どうにかアリーナの裏口についた。
当然だが、鵞利場は先についていた。
「おはよう。私のカワイイ執行者くん。」
心持ちか、いつもとは目つきが違う。
まん丸い彼女の目は、鋭く尖り、吊り上がっている。
"近づいてはいけない。"
俺は本能的にそれを感じ取った。
「さぁ、控室に入りましょうか。」
「うん。分かった。」
アリーナの廊下を抜けて俺たちの控室を見つける。
長官が、ソファーに腰掛けている。
俺たちが来る何時間も前から、準備をしていたのだろう。
「おはよう、鵞利場くん、北条くん。」
「「おはようございます長官。」」
それから俺は、長官とテーブルを挟んで向かいに座る二人の人物を見て、驚愕する。
「リベリオン、サムライ刀の鋼左衛門と摩天楼の錬金術師、金川錬華!! 」
俺は反射的に身体をこわばらせてしまう。
「綱右衛門だ!! 」
と、サムライ野郎は訂正した。
「お前らとなれあうつもりは無いけどな。」
「長官っ!! 」
本堂はというと、手を上下に振って俺を宥めた。
「まぁまぁ落ち着き給え。全部私の意向だよ。」
そこで鵞利場が会話に割って入った。
「いくらなんでも、犯罪者をこんな催しに出すだなんて。」
「君たちに話していなかったことは謝罪しよう。公安にも、彼らと同じぐらい腕の立つ人間が少なからず存在するのは事実だよ。だけどね。彼らは経験という面で、私たちよりもアドバンテージがある。異世界で戦って来た彼らにはね。」
「だとしても私たちに一声ないと困ります。勝手に一人で決められるなんて。」
本堂はトボケる。
「だって、君たちにこのことを話したところで、絶対賛成してくれなかっただろう? 」
「当たり前です。」
[本堂長官。時間です。能力者たちを連れて、アリーナに出て来てください。]
本堂、玉鉄、金川が立ち上がる。
空気が重くなった。
まるでさっきまでの口論が無かったかのようである。
俺たちは廊下に出ると、アリーナの入り口に向けて歩き出す。
「さぁ、思い知らせてやろうじゃないか、奴らに、平等社会の恐ろしさって奴をね。」
長官が両開きのドアを弾き飛ばす。
それと同時に、甲高い悲鳴の混じった罵声と、眩い光が溢れ出してくる。
俺たちは一歩、また一歩と、その異様な空間に足を踏み入れていった。
這い上がると、今日が決戦当日であることを思い出す。
手錠を確認すると……
鵞利場は先に出たようだ。
[ごめん。昨日は一人にして欲しいの。会場で会いましょう。]
試合を万全な状態で臨みたいのだろう。
俺もそうだから分かる。
冷蔵庫からエネルギーバーを取り出して、齧ると、洗面所で髭を剃り、歯を磨く。
自分の険悪な顔つきを両手でポンポンと叩き、それから顔を洗う。
それからタオルで顔を拭き、洗濯機へと放り込む。
服を公安のものに着替えると、そのまま部屋から出た。
まだ登っていない陽が、俺の顔を照らした。
大きな欠伸をして、それからゆっくりと歩き出す。
マンションを後にして、地下鉄は復旧したようだが、俺はどうも公共機関を利用する気にはなれなかった。
「走るか…… 」
誰に言ったわけでもない。
[スタジアムまでのルートを検索します。]
俺の言葉に反応した手錠のプログラムが、ランニングのルートを導き出した。
息を軽く吸い、それからゆっくりと走り出した。
呼吸は浅く、規則的に。
朝風に当てられた俺の身体が、少しずつ熱を帯びていく。
身体が少しずつ目覚めていっている証拠だ。
身体に血液が回り始めて筋肉が活動を始める。
ギアが上がり始める。
それと共にスピードも徐々に増していっている。
あとコロシアムまで1.5キロほど。
心が引き締まり、鋭く尖る。
それに反して瞳孔が開き、視野が広がっていく。
行き行く人々を、相手の攻撃と見立てて交わす。
途中で手錠に気がついた無能力者たちが俺を捕まえようと躍起になる。
ウォーミングアップには、ちょうど良い。
体勢を低くする。目の前に、俺を、はがいじめにしようとしている男がいるからだ。
懐に潜り込み、そのまま、すり抜ける。
続く右ストレートをスライディングで避ける。
俺をはがいじめにしようとした男の顔に、右ストレートが直撃する。
ナイフで接近してくる男の肩を踏みつけ、寄せくる無能力者たちの頭を踏み台に跳躍する。
空中で回転してから着地し、さらに速度を上げた。
アリーナの入り口に人が集まっている?
だが俺はすぐに意識を集中し直し、どうにかアリーナの裏口についた。
当然だが、鵞利場は先についていた。
「おはよう。私のカワイイ執行者くん。」
心持ちか、いつもとは目つきが違う。
まん丸い彼女の目は、鋭く尖り、吊り上がっている。
"近づいてはいけない。"
俺は本能的にそれを感じ取った。
「さぁ、控室に入りましょうか。」
「うん。分かった。」
アリーナの廊下を抜けて俺たちの控室を見つける。
長官が、ソファーに腰掛けている。
俺たちが来る何時間も前から、準備をしていたのだろう。
「おはよう、鵞利場くん、北条くん。」
「「おはようございます長官。」」
それから俺は、長官とテーブルを挟んで向かいに座る二人の人物を見て、驚愕する。
「リベリオン、サムライ刀の鋼左衛門と摩天楼の錬金術師、金川錬華!! 」
俺は反射的に身体をこわばらせてしまう。
「綱右衛門だ!! 」
と、サムライ野郎は訂正した。
「お前らとなれあうつもりは無いけどな。」
「長官っ!! 」
本堂はというと、手を上下に振って俺を宥めた。
「まぁまぁ落ち着き給え。全部私の意向だよ。」
そこで鵞利場が会話に割って入った。
「いくらなんでも、犯罪者をこんな催しに出すだなんて。」
「君たちに話していなかったことは謝罪しよう。公安にも、彼らと同じぐらい腕の立つ人間が少なからず存在するのは事実だよ。だけどね。彼らは経験という面で、私たちよりもアドバンテージがある。異世界で戦って来た彼らにはね。」
「だとしても私たちに一声ないと困ります。勝手に一人で決められるなんて。」
本堂はトボケる。
「だって、君たちにこのことを話したところで、絶対賛成してくれなかっただろう? 」
「当たり前です。」
[本堂長官。時間です。能力者たちを連れて、アリーナに出て来てください。]
本堂、玉鉄、金川が立ち上がる。
空気が重くなった。
まるでさっきまでの口論が無かったかのようである。
俺たちは廊下に出ると、アリーナの入り口に向けて歩き出す。
「さぁ、思い知らせてやろうじゃないか、奴らに、平等社会の恐ろしさって奴をね。」
長官が両開きのドアを弾き飛ばす。
それと同時に、甲高い悲鳴の混じった罵声と、眩い光が溢れ出してくる。
俺たちは一歩、また一歩と、その異様な空間に足を踏み入れていった。
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