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平等社会へ
玉座の向こう側
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準備を整え、再び祭壇の前へ来た。
集まったのは、グランディルのカーミラ・ブレイクと神族のセイ・ボイド、セル帝国からはハムサの器であった碧野双薔と、アニーサリーム。そして極東からは、美奈と槍馬と俺。
「全員集まったみたいだね。」
約束の時間は刻一刻と迫っている。
カーミラがエクスカリバーを祭壇に突き立てる。
光る階段が出現し、天へと通ずる。
神を殺しに行った時と同じ光景。
俺たちはカーミラの後を追う。
光る床を一歩、また一歩と登っていく。
未知の世界に対する恐怖と、千代に対する焦燥。
手に汗が滲んでいる。
相変わらずこの階段は長かった。
雲を突き抜けた頃、道の終わり。
そこに立っていたのは、神の門ではなくて、一枚の殺風景な扉だった。
カーミラが俺を見る。
俺は首を振った。
「俺が来た時は、大きな両扉だった。その先には植生があべこべな野原が広がっていて、奥の宮殿の玉座に奴は座っていたんだ。」
彼は恐る恐るドアノブに手をかけようとする。
「罠かもしれない。」
「かもな。」
彼の手が震えている。
「変われ。」
俺は焦りからか、自分から扉を手に取っていた。
開けた先は……
カビとサビと、化学用品の刺激臭がする廃墟だ。
地面の赤錆が、ガサガサと音を立てる。
女は手を前に組むと、律儀にも俺たちの到着を待っていた。
彼女は宜野座輝子、あの大男の秘書らしい。
本堂守、それがあのチート野郎の名前だった。
「お待ちしておりました。異界の能力者様たち。」
彼女は無愛想なお辞儀をしてから、向き帰り、歩き出した。
「本堂長官から、あなたたちをホテルまでお送りします様に言付けされておりますので。」
「そりゃーどうもご丁寧に。」
「いえ、平等社会の治安維持のためです。」
槍馬が溜め息をついた。
「俺たちは特定外来種か何かか? そこまで俺たちを危険視する意味は…… 」
彼女は首を振ってそれを必死に否定する。
いや、しているのだろう。
「危険なのは、平等社会人ではなく、皆さまの方でございます。」
俺たちは宜野座の後に続いて階段を降りていく。
コトン コトン コツ コツ
そして、緑色のドアノブを捻り、六人全員が部屋から出たことを確認すると、部屋に鍵をかけた。
「おいおい、異世界の扉の管理の仕方がこんなにずさんで良いのかい? 」
カーミラがそう聞くと、宜野座は天井の角を指差した。
そこにはカメラらしきものが。
「国際政府が二四時間体制で監視をしているので問題ありません。」
「あのような人目につく機械、持ち出そうとすると、またリベリオンのような犯罪集団に目をつけられる。だからこの様な廃墟に隠すというのが、本堂長官のお考えです。」
「耐久面についてはご安心ください。事前に確認済みですので。」
大広間に出て、吹き抜けの階段を降りる。
扉から光が漏れている。
間違いない、あそこが出口だろう。
「裏口からの出入りをお願いします。正面から出られますと、後々隠蔽に困りますので。」
裏口にはバンが停められていた。
自動車、極東でも、科学者によって最近開発された鉄の乗り物。
「シートベルトをお閉めください。出ますよ。」
全員が座席につくのを確認した彼女はサイドブレーキを下ろした。
間違いない、草薙剣に入っていた能力のデータは、全てこの世界の技術を応用したものなのだろう。
裏路地を抜けると、鉄の柱が空を支配していた。
ユーヨーカに似たような街並み。
ある人は言った。
ビルを見上げる奴は田舎者なんだってさ。
昼間だというのに、光が眩しい。
ビルに貼っ付けられた巨大なスクリーンが派手に光っている。
どうやら何かの宣伝をしているらしい。
空を舞う建物も見受けられる。
「アレは無重力物件です。人口が増えすぎて、地上には人間を置ききれなくなりましたので。」
「購買者の方からも中々好評ですよ。」
「なんせ高階層に住む上流階級者たちを見下ろせるのですから。」
ふと見下ろすと、手錠と足枷をされた男が、複数人の人間に囲まれて、リンチを受けていた。
「おい、衛兵を呼ばないのか? 」
カーミラが不安そうに指をさす。
「必要ありません。手錠をされているのは能力者です。能力者はあの程度では死にません。むしろああして抑えておかないと、一般市民が危険に晒されますからね。」
「なんで……こんなことするんですか? 」
碧野双薔が今にも泣き出しそうな顔で、宜野座に訊いた。
それを隣でリームが支える。
「かつて無能力者を虐げ、支配しようとしたのも、能力者たちで、戦争の火種になったのも能力者、彼らは世界の癌です。」
「彼らが人類の均衡を崩し、秩序を乱し、世界に混乱を招いている。」
「ああやって抑えておくことで人間たちは、初めて平等になれるのですよ。」
「そして我々も、その方が人間たちをより良く統括出来ることに気がついた。」
「技術の進歩により、乾くことなくなった平等社会では、犯罪率が小数点を切りました。」
「さっき傷害事件が起こっていただろうが。」
「何度も言わせないでください。」
「アレは犯罪ではありません。我ら平等社会人が平等であるための儀式です。犯罪ではありません。」
その言葉を聞き、各々複雑な顔をし、何も話さなくなった。
「さぁ着きましたよ。」
俺たちはホテルの前で降ろされた。
「今は英気を養ってくれ。長官からのお言葉です。」
「それでは明日は八時に迎えに来ますので。」
「必要な物がございましたら、従業員に何でもお申し付けください。」
「くれぐれも外に出ないようにお願いします。」
集まったのは、グランディルのカーミラ・ブレイクと神族のセイ・ボイド、セル帝国からはハムサの器であった碧野双薔と、アニーサリーム。そして極東からは、美奈と槍馬と俺。
「全員集まったみたいだね。」
約束の時間は刻一刻と迫っている。
カーミラがエクスカリバーを祭壇に突き立てる。
光る階段が出現し、天へと通ずる。
神を殺しに行った時と同じ光景。
俺たちはカーミラの後を追う。
光る床を一歩、また一歩と登っていく。
未知の世界に対する恐怖と、千代に対する焦燥。
手に汗が滲んでいる。
相変わらずこの階段は長かった。
雲を突き抜けた頃、道の終わり。
そこに立っていたのは、神の門ではなくて、一枚の殺風景な扉だった。
カーミラが俺を見る。
俺は首を振った。
「俺が来た時は、大きな両扉だった。その先には植生があべこべな野原が広がっていて、奥の宮殿の玉座に奴は座っていたんだ。」
彼は恐る恐るドアノブに手をかけようとする。
「罠かもしれない。」
「かもな。」
彼の手が震えている。
「変われ。」
俺は焦りからか、自分から扉を手に取っていた。
開けた先は……
カビとサビと、化学用品の刺激臭がする廃墟だ。
地面の赤錆が、ガサガサと音を立てる。
女は手を前に組むと、律儀にも俺たちの到着を待っていた。
彼女は宜野座輝子、あの大男の秘書らしい。
本堂守、それがあのチート野郎の名前だった。
「お待ちしておりました。異界の能力者様たち。」
彼女は無愛想なお辞儀をしてから、向き帰り、歩き出した。
「本堂長官から、あなたたちをホテルまでお送りします様に言付けされておりますので。」
「そりゃーどうもご丁寧に。」
「いえ、平等社会の治安維持のためです。」
槍馬が溜め息をついた。
「俺たちは特定外来種か何かか? そこまで俺たちを危険視する意味は…… 」
彼女は首を振ってそれを必死に否定する。
いや、しているのだろう。
「危険なのは、平等社会人ではなく、皆さまの方でございます。」
俺たちは宜野座の後に続いて階段を降りていく。
コトン コトン コツ コツ
そして、緑色のドアノブを捻り、六人全員が部屋から出たことを確認すると、部屋に鍵をかけた。
「おいおい、異世界の扉の管理の仕方がこんなにずさんで良いのかい? 」
カーミラがそう聞くと、宜野座は天井の角を指差した。
そこにはカメラらしきものが。
「国際政府が二四時間体制で監視をしているので問題ありません。」
「あのような人目につく機械、持ち出そうとすると、またリベリオンのような犯罪集団に目をつけられる。だからこの様な廃墟に隠すというのが、本堂長官のお考えです。」
「耐久面についてはご安心ください。事前に確認済みですので。」
大広間に出て、吹き抜けの階段を降りる。
扉から光が漏れている。
間違いない、あそこが出口だろう。
「裏口からの出入りをお願いします。正面から出られますと、後々隠蔽に困りますので。」
裏口にはバンが停められていた。
自動車、極東でも、科学者によって最近開発された鉄の乗り物。
「シートベルトをお閉めください。出ますよ。」
全員が座席につくのを確認した彼女はサイドブレーキを下ろした。
間違いない、草薙剣に入っていた能力のデータは、全てこの世界の技術を応用したものなのだろう。
裏路地を抜けると、鉄の柱が空を支配していた。
ユーヨーカに似たような街並み。
ある人は言った。
ビルを見上げる奴は田舎者なんだってさ。
昼間だというのに、光が眩しい。
ビルに貼っ付けられた巨大なスクリーンが派手に光っている。
どうやら何かの宣伝をしているらしい。
空を舞う建物も見受けられる。
「アレは無重力物件です。人口が増えすぎて、地上には人間を置ききれなくなりましたので。」
「購買者の方からも中々好評ですよ。」
「なんせ高階層に住む上流階級者たちを見下ろせるのですから。」
ふと見下ろすと、手錠と足枷をされた男が、複数人の人間に囲まれて、リンチを受けていた。
「おい、衛兵を呼ばないのか? 」
カーミラが不安そうに指をさす。
「必要ありません。手錠をされているのは能力者です。能力者はあの程度では死にません。むしろああして抑えておかないと、一般市民が危険に晒されますからね。」
「なんで……こんなことするんですか? 」
碧野双薔が今にも泣き出しそうな顔で、宜野座に訊いた。
それを隣でリームが支える。
「かつて無能力者を虐げ、支配しようとしたのも、能力者たちで、戦争の火種になったのも能力者、彼らは世界の癌です。」
「彼らが人類の均衡を崩し、秩序を乱し、世界に混乱を招いている。」
「ああやって抑えておくことで人間たちは、初めて平等になれるのですよ。」
「そして我々も、その方が人間たちをより良く統括出来ることに気がついた。」
「技術の進歩により、乾くことなくなった平等社会では、犯罪率が小数点を切りました。」
「さっき傷害事件が起こっていただろうが。」
「何度も言わせないでください。」
「アレは犯罪ではありません。我ら平等社会人が平等であるための儀式です。犯罪ではありません。」
その言葉を聞き、各々複雑な顔をし、何も話さなくなった。
「さぁ着きましたよ。」
俺たちはホテルの前で降ろされた。
「今は英気を養ってくれ。長官からのお言葉です。」
「それでは明日は八時に迎えに来ますので。」
「必要な物がございましたら、従業員に何でもお申し付けください。」
「くれぐれも外に出ないようにお願いします。」
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