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神々の談話
割田優
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私は大理石の階段を一段ずつ登った。
いや、コレは正確に言えば大理石ではない。
大理石の硬度、質量、融解度、その他諸々の物理量に加え、質感、匂い、味覚などの非科学的データまでを集約させた3dモデル。
つまりポリゴンだ。
つまりここは現実世界ではないと言うことになる。
現実世界??
それも今は曖昧になってしまっている。
私は魔法で世界を作った。
彼から貰った魔法の力で。
物質と反物質を分けるところから始めた。
彼女は「そこまでしなくても。」と言ったが、コレはもう科学者である自分の性分だ。
一から、世界を作りたいと思った。
能力者と無能力者が手を取り合う世界。
私はそんな世界を目指していた。
が、どの世界でも強きモノは弱きモノを
虐げ、世界はあるべき方向へと向かってしまう。
この世界でもそれは変わらなかった。
いや、一つ変わったことがある。
今、ここに訪れようとしているモノが存在するということだ。
もちろん、手招いたのは私の方であるが、そこは重要ではない。
なぜなら彼が自分の魔法で未来を見たからだ。
己の運命すら覆らない危険な魔法、未来決定にて。
私は科学者だ。
そんな非科学的な事象など信用できない。
バタフライ効果……そうだ。
蝶の起こした小さな空気の波は、やがて竜巻を起こすことだってありゆる。
あらゆる世界に私は干渉した。
しかし、そもそも、それを夢や幻覚と片付けてしまったり、目的を達成しようとした人間は、破滅し、蹂躙され、やがて息絶えた。
彼の予言は本物だ。
科学者の私に言えることはそれだけだった。
最後の大理石を踏み越える。
玉座で彼女が腰をかけている。
ワールド221の主神、割田優。
人間みたいな名前だろ。
彼女は人間だぞ。
彼女とは言ったが、私は彼女の性別をしらない。
中性的な見た目からどっちとも取ることが出来る。
が、そんな問題も些細なことである。
私は仕事ができる人間が欲しかった。
そこに性別などという感情的な要因が入る余地などないだろう。
用心棒として雇った彼も同じだ。
穢れた流派の使い手だとか、前科持ちのエクシーダーだとかどうでもよかった。
いや、むしろ好都合だろう。
こっち側の人間であれば、話の飲み込みも早い。
こちらの能力者は大半が腰抜けであるし、中には自分の点数稼ぎのために裏切るモノだっている。
誰だって自分の身が一番可愛い。
そしてエクシーダーに対する世界の扱いは冷たい。
いや、もうやめておこう。
感情的になることは思考を鈍らせる。
私はそれを飲み込むと、代わりに彼女へ向けて言葉を飛ばした。
「私が彼に見てもらった未来だ。どうだ。私の言った通りになっただろう? 」
彼女は私の声に気がつき、こちらを向いた。
十日ぶりの再会である。
世界内では十六、七年の時間が経過しているはずであるが。
「偶然だろう。いや、必然か。」
「君の推していたカーミラはどうした? 」
彼女は急に不機嫌になった。
また私が気に触れることを言ったのだろう。
「断られたよ私との取り引きを。」
「そりゃあそうだろう。消えた人間を元に戻せるなんて、彼が気づかないはずがない。」
割田は首を傾げた。
「僕が彼に揺さぶりをかけたのはそういう意味じゃ無いんだよなぁ。アイツ、多分最初から気がついていたよ。消えた人間は生き返らないって。」
私は首を傾げた。
「生き返る確率がゼロだと分かっていたのなら、なぜ彼は__」
「ああ、もう良いよ。やっぱり科学者と話をするのは疲れるなぁ。」
「ところでさ。君は僕との賭けに勝った訳だけど、この冠はどうすれば良い? 君に返せば良いかい? 」
私は首を横に振った。
「彼には君が合ってくれ。」
「僕の嫌いな慎二郎のガキと、僕が会えっていうのかい? 悪趣味だねキミは。」
私には目的があった。
「私にはワールド221の時間をこの世界と同期するという義務があるからな。」
「なるほどね。このボクが負けるという可能性を1パーセントでも見出しているキミには不服だけど、審判が居なければ、神判も行われないというのもまた確かだ。」
彼女は玉座の肘掛けに肘をつくと、こう言葉を放った。
「いや、君は負ける。コレは決定事項だ。彼の魔法は本物だからね。」
彼女はそっぽを向いた。
「ふん、まだ僕は信じていないよ。その大兄弟助とやらを。」
伝えるべきことを伝えた私は、この空間の出口を目指すべく、また大理石の階段へと向き直った。
「どこへ行くんだジャッチ? 」
「お客様だ。丁重におもてなししてやらねばな。」
「チッ、中でも外でも踏んだり蹴ったりだね。北条は出れるのかい? 」
「ああ、私も彼もビンビンだよ。終わったらまたここに来る。」
「そりゃあどうも。」
私はまた大理石を一歩踏み出した。
「死ぬなよ。」
「殺す訳ないじゃないか。」
「それじゃ彼らは僕を苦しめられないからね。」
いや、コレは正確に言えば大理石ではない。
大理石の硬度、質量、融解度、その他諸々の物理量に加え、質感、匂い、味覚などの非科学的データまでを集約させた3dモデル。
つまりポリゴンだ。
つまりここは現実世界ではないと言うことになる。
現実世界??
それも今は曖昧になってしまっている。
私は魔法で世界を作った。
彼から貰った魔法の力で。
物質と反物質を分けるところから始めた。
彼女は「そこまでしなくても。」と言ったが、コレはもう科学者である自分の性分だ。
一から、世界を作りたいと思った。
能力者と無能力者が手を取り合う世界。
私はそんな世界を目指していた。
が、どの世界でも強きモノは弱きモノを
虐げ、世界はあるべき方向へと向かってしまう。
この世界でもそれは変わらなかった。
いや、一つ変わったことがある。
今、ここに訪れようとしているモノが存在するということだ。
もちろん、手招いたのは私の方であるが、そこは重要ではない。
なぜなら彼が自分の魔法で未来を見たからだ。
己の運命すら覆らない危険な魔法、未来決定にて。
私は科学者だ。
そんな非科学的な事象など信用できない。
バタフライ効果……そうだ。
蝶の起こした小さな空気の波は、やがて竜巻を起こすことだってありゆる。
あらゆる世界に私は干渉した。
しかし、そもそも、それを夢や幻覚と片付けてしまったり、目的を達成しようとした人間は、破滅し、蹂躙され、やがて息絶えた。
彼の予言は本物だ。
科学者の私に言えることはそれだけだった。
最後の大理石を踏み越える。
玉座で彼女が腰をかけている。
ワールド221の主神、割田優。
人間みたいな名前だろ。
彼女は人間だぞ。
彼女とは言ったが、私は彼女の性別をしらない。
中性的な見た目からどっちとも取ることが出来る。
が、そんな問題も些細なことである。
私は仕事ができる人間が欲しかった。
そこに性別などという感情的な要因が入る余地などないだろう。
用心棒として雇った彼も同じだ。
穢れた流派の使い手だとか、前科持ちのエクシーダーだとかどうでもよかった。
いや、むしろ好都合だろう。
こっち側の人間であれば、話の飲み込みも早い。
こちらの能力者は大半が腰抜けであるし、中には自分の点数稼ぎのために裏切るモノだっている。
誰だって自分の身が一番可愛い。
そしてエクシーダーに対する世界の扱いは冷たい。
いや、もうやめておこう。
感情的になることは思考を鈍らせる。
私はそれを飲み込むと、代わりに彼女へ向けて言葉を飛ばした。
「私が彼に見てもらった未来だ。どうだ。私の言った通りになっただろう? 」
彼女は私の声に気がつき、こちらを向いた。
十日ぶりの再会である。
世界内では十六、七年の時間が経過しているはずであるが。
「偶然だろう。いや、必然か。」
「君の推していたカーミラはどうした? 」
彼女は急に不機嫌になった。
また私が気に触れることを言ったのだろう。
「断られたよ私との取り引きを。」
「そりゃあそうだろう。消えた人間を元に戻せるなんて、彼が気づかないはずがない。」
割田は首を傾げた。
「僕が彼に揺さぶりをかけたのはそういう意味じゃ無いんだよなぁ。アイツ、多分最初から気がついていたよ。消えた人間は生き返らないって。」
私は首を傾げた。
「生き返る確率がゼロだと分かっていたのなら、なぜ彼は__」
「ああ、もう良いよ。やっぱり科学者と話をするのは疲れるなぁ。」
「ところでさ。君は僕との賭けに勝った訳だけど、この冠はどうすれば良い? 君に返せば良いかい? 」
私は首を横に振った。
「彼には君が合ってくれ。」
「僕の嫌いな慎二郎のガキと、僕が会えっていうのかい? 悪趣味だねキミは。」
私には目的があった。
「私にはワールド221の時間をこの世界と同期するという義務があるからな。」
「なるほどね。このボクが負けるという可能性を1パーセントでも見出しているキミには不服だけど、審判が居なければ、神判も行われないというのもまた確かだ。」
彼女は玉座の肘掛けに肘をつくと、こう言葉を放った。
「いや、君は負ける。コレは決定事項だ。彼の魔法は本物だからね。」
彼女はそっぽを向いた。
「ふん、まだ僕は信じていないよ。その大兄弟助とやらを。」
伝えるべきことを伝えた私は、この空間の出口を目指すべく、また大理石の階段へと向き直った。
「どこへ行くんだジャッチ? 」
「お客様だ。丁重におもてなししてやらねばな。」
「チッ、中でも外でも踏んだり蹴ったりだね。北条は出れるのかい? 」
「ああ、私も彼もビンビンだよ。終わったらまたここに来る。」
「そりゃあどうも。」
私はまた大理石を一歩踏み出した。
「死ぬなよ。」
「殺す訳ないじゃないか。」
「それじゃ彼らは僕を苦しめられないからね。」
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