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拾弍ノ劔

帰ってきたヒーロー

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 カーミラ・ブレイクの極東襲撃以来、俺は夷を退けた人間として征夷大将軍に任命された。
 そして、慎二は連れ去られた美奈を連れ戻し、美奈は天子と結婚した。
 それから慎二は軍規違反で処刑されることとなり、俺も美奈も天子もなんとか取り繕ってアイツを救い出そうとしていた分けだが……
「槍馬、慎二のこと? 」
 俺が難しい顔をしていたからだろう。
 皇后の彼女が話しかけてきた。
「私が天子と結婚したからだよね。あんなに優しくしてくれていたのに。」
「やめてくれ……そういう言い方は。俺も奴もお前に見返りを求めていた訳じゃない。」
「ごめんなさい。美奈じゃなきゃいけないのに、美奈を演じられなくて。」
「それもやめてくれって言ったはずだ。それもこんな時に。」
「槍馬……」
「みんなの元に行ってくる。」
 そう言って俺は逃げるように彼女の両用車から逃げた。
 極東の新兵器。御装用水陸両用車。
 装甲も火薬もない。
 その分、機動力は申し分ない。
 契約者には魔硝石も火薬も必要ない。
 彼ら自身が一人一人それ以上のスペックを有しているからだ。
 ジャンプで味方の両用車をつたると、斥たちが乗っている車両へと入った。
「槍馬、皇后の護衛はもう良いのか? 」
「ああ、守る必要も無い。もうアイツは極東最強の女なんだから。」
 座席にひとつ空きがある。
 慎二の席だ。
 彼は極東を裏切ったと言うのに、それを糾弾するものは誰一人居なかった。
「どうした、そこには誰も居ないぞ。」
 上官の馬田さんだ。
 いや、その言い方はおかしい。
 尊敬の念からか、未だに敬語を治さずにいた。
「いえ、なんでもありませんよ。」
「集中しろ。相手は神族だ。」
「……分かりました。」
 セル帝国が見えてくる。
 そして、対峙する天と魔、二体の怪物。
 天使のような様相をした女は、形容し難い怪物に自軍の兵士が殺されるたびに、秒針のような魔法陣を発動させると、何事もなかったかのように生き返らせる。
 生き返った兵士たちは、再び彼女に挑み、また肉片と化す。
 流石の契約者たちも、その形相を見て阿鼻叫喚し、彼らを助けるべく、両用車から飛び降りると、目の前のバケモノに飛びかかっていく。
 が、彼女が腕を掲げると、契約者たちは、意識を失い、パタリと倒れる。
 馬田さんと、骨元さんと、加賀谷木、灰弩さんと、吉川や歌川もやられた。
 それを見た美奈が飛び出し、彼女へ向けて術式を発動させる。
---千手観音センジュカンノン---
 美奈は神格化すると、無数の拳を彼女向けて放った。
---術式透視ディスペル---
 あれは、馬田さんの術式……
 なぜ彼女たちが動かなくなったのかも今理解した。
 俺も思い出したかのように、天沼矛で攻撃する。
 が、の斬撃は彼女の指で受け止められ、俺も能力を吸い取られる。
 体から何かが剥がされたようで、気を失いそうになる。
 しかし、スンデのところで耐えると、今度は布津御魂を振るう。
 斬ったところが灰になる。
 しかし、切り口から骨が再生したかと思うと、元通りに腕が戻ってしまった。
 そればかりでは無い。
 それまでにグランディル軍が与えていたダメージまでそっくりそのまま回復している。
「助かったわ。まざか自分から能力を渡しに赴いてくれるなんてね。バカで助かったわ。」
 ほとんどの契約者が力を吸い取られそうにやっている。
 が、その中で唯一なぜか動けた羽々斬は、飛び上がると、彼女へ向けて未知術を放った。
---風神砲フウジンホウ---
 彼女の腕から、竜巻が放出される。
 俺は仰向けに倒れた状態でそれを見た。
 そこに、まだ力をとられていなかった斥と鏡子がやってきて、同時に未知術をを発動させる。
---八咫ノ鏡リフレクション---
---超重力ハイパーグラビテーション---
 ハムサの周りに展開された八咫ノ鏡が、羽々斬と斥の未知術を反発させまくる。
「小賢しい!! 」
 彼女は閉じていた天使の翼を思いっきり解放すると、八咫ノ鏡が割れ、砕けちり、中で暴れ回っていた未知術が飛び出す。
---風神雷神砲フウジンライジンホウ---
 ハムサの右手から迸る雷が、左手から暴れ狂う竜巻が放出される。
 羽々斬は再び術式を発動した。
---風神砲フウジンホウ---
 力の差は歴然だ。
 単純計算で、ハムサは羽々斬の二倍の力を放出している。
 俺は彼女を援護しようとした。
 去太刀を使えばハムサの力の一部を分散できるかもしれない。
 が、身体が動かなかった。
 だめだ!! このままではみんなやられてしまう。
 誰か、誰か助けてくれ。


       ---雷神砲ライジンホウ---


 見覚えの面影、魔具の凛月。
「慎二? 」
 では無かった。
 背の丈も筋肉の量も、彼よりもずっと高い。
「慎二…郎お…じさん? 」
 おじさんは、ハムサの攻撃を一人で弾き切ると、羽々斬の前にたち、彼女を庇うように左手を伸ばす。
「あら? 新手かしら。」
 そこへ七宝隊長もやって来る。
「随分と派手にやってくれたな。」
 ハムサは眉を顰める。
「アンタに用は無いんだけど。」
「お前になくても俺にはある。よくも部下たちをやってくれたな。」
「さぁ行くぞ七宝。」
 二人は同時に武器を構えた。
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