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印の国で

「眼」覚め

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 カーミラは激しく顔を歪めると、空間転移を行う。
"俺はこんな顔をしていたのか。"
 俺は燃える丹楓村を思い出した。
 俺はあの、母が聖に犯されている夢を見るたびに、吐き気を催し、夜な夜な吐いていたわけなのだが、不思議と今は拒絶反応が起こることはなかった。
 そうだ俺は、あの炎の先が見たかった。
 だから俺は赤の向こう側を見た。
---燠見アウェイク---
 俺はあの長ったらしい詠唱を二文字に縮めた。
 全てを見通す世界で、移動する彼の輪郭を捉える。
 俺は彼が現れるその前に、凛月の小太刀から左手を離し、右手のチャクラムで薙ぎ払う。
「ぐかぁ。」
 どうやら空間転移の能力と、次元を歪める能力を一度に使うことは出来ないらしい。
 俺は逃げるカーミラを眼で追い、時空壊で加速した身体で、彼の元へ追いつく。
左手で再度小太刀を握りなおし、小太刀とチャクラムで彼を上半身と下半身に分ける。
---双・紅電ツイン・スプライト---
 俺は彼の上半身を追った。
 彼の下半身が消滅し、上半身の下に転移する。
 が、間髪入れずに次の術を発動させる。
---堕雷ラクライ---
 荒野に稲妻が堕ちる。
 が、カーミラはそれを受け止めた。
 左手には短剣ではなく、土色の剣が握られていた。
---zero gravityゼロ・グラビティー---
 ドミニクの愛剣、アルテマだ。
 重力から解放された彼は、常人ではあり得ない程の速度で動く。
 俺の目で追うことも難しかった。
 彼はあらゆる物理法則の切り替えで、俺を翻弄してくる。
 無理な演算で鼻から血を出している。
 俺の擦り傷に、奴の赤い液体が付着する。
 右上、左下、後ろ、前、徐々に感覚に慣れていく。
 俺は徐々に彼のペースに追いつき……
 そして、互角になった。
 俺とカーミラは、時間も空間も超えて、文字通り異次元の戦いを繰り広げた。
 砂の海にクレーターができる。
 奴のジゲンキリを紙一重でかわし、お返しにと、凛月の小太刀を振るう。
 奴のアルテマをチャクラムで弾き返すと、仕込んでいた銃鬼で奴の顔を吹き飛ばす。
 再生したところに、影丸を放ち、奴の左腕を持っていく。
 空間転移で元ある場所に戻った左手腕は音もなくくっつくと、今度は俺の右腕を斬り落とす。
 離れた腕を影で繋げ、捨て身で彼の身体を左右真っ二つにする。
 ジゲンキリの渾身の突きが俺の胸を貫く。
 一瞬心臓が止まり、時間の加速が止まるが、それも何事もなかったかのように動き出す。
 俺は彼の首に噛みつき、肉を抉る。
 首が取れかけるが、再び再生する。
 俺は剥ぎ取った肉をペッと吐き出すと、その口にアルテマが貫通する。
 脊椎が貫かれ、一瞬意識が飛ぶが、負けずと凛月で彼の両目を潰す。
「!! 」
 彼は目が見えなくなったことに焦っている。
 俺はその隙を見逃さない。容赦もしない。
 奴が空間転移で森に逃げる。
 俺は0.1秒で距離を詰める。
 そこら一帯の針葉樹が吹き飛んだ。
 そして彼の胸に銃鬼で銀の杭を打ち付ける。
「がぁっ。」
 痛みにもがき苦しみ、転がる彼を追い、追撃する。
 倒れた木をくぐり、彼の左腕を切り落とすと、木屑を舞わせながらジャンプし、首を落とす。
 カーミラは三本の手足でうまくバランスを取ると、俺の攻撃を的確に捌いた。
 視線を感じて、彼の首に再び銃鬼を撃ち込む。
 それよりも早く空間転移が発動し、俺は体勢を低くするハメになった。
 左側の角の半分から上が切り落とされる。
 再生した左手で俺の心臓をもぎ取った。
「ぐあっ。」
 時空壊の代償のような痛みが連続してキリキリとやって来る。
 彼は俺の心臓を握りつぶすと、古い左腕からアルテマを空間転移させ、俺を回し蹴りでぶっ飛ばした。
---void erasureトル・ツメ---
 空間が切り取られて、無理矢理繋ぎ止められる。
---release spaceマテリアル・バースト---
 ジゲンキリが光る。
 押し込められた空間に無理矢理物質が押し込められる。
 弱くなった箇所から、高エネルギー体が溢れ出す。
 俺もそれに合わせて、最後の大技を放った。
---rail gunロンギヌス---
 チャクラムから、ほど走る稲妻を宿した小太刀が発射される。
「「うおおおおおおおおおおお。」」
 二つの高エネルギー体がぶつかる。
 行き場を無くしたそれは、地を抉り、山を切り崩し、巨大な火柱を天へと昇華させた。
 眩い光に目が眩む。
 五秒後、視界が戻った俺は、目の前に現れた天使を当然かのように見上げていた。
"やはり来たか。"
 カーミラとの戦闘での最大の障壁。
 俺は神族に対抗する力を持ち得ていない。
 肋骨が突き出していたカーミラの身体は、セイの両手に包まれると、傷が綺麗さっぱり消えてしまう。
 奴に対する対策などない。
 ただ、死力を尽くして彼女と戦うだけだ。
 俺はもう一度凛月を握り直した。

 
 
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