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亡霊共
神族を探して
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僕はあの後、セイを追いかけてカタルゴ大陸までやって来た。
そのあと兄さんたちを治療していたアイシャから、従者のエイレネが攫われたということを耳に入れた。
カタルゴ大陸は広大だ。
だが僕にはわかった。
代行者システムと長い間繋がっていたセイの居場所に。
彼女はある貴族の家に居た。
うまく話せないけど、モヤモヤとした感情が頭を覆った。
僕は石造の街の、丘の上に聳え立つ豪邸へと赴くことにした。
門番が僕を制した。
僕は無言グランディルの証を見せて、兵士たちを黙らせた。
グランディルの皇帝がアポ無しで来たと言うことで、宮内は急に騒がしくなった。
セイを抱いている貴族が吹き抜けから僕を見下ろしている。
「これはこれはカーミラ様、代行者を戴冠されたと言うことは、耳に入れておりました。」
四方八方から兵士が槍を向ける。
「セイ、エイレネをどこにやったの? 僕の大切な術者なんだ。」
セイは嘯いているようだ。
「ねえ旦那様? セイって誰? エイレネって知っている? 」
「君は酷い奴だよ。」
セイの表情が変わる。
「酷いのはアンタの方でしょ。」
貴族はびっくりして、セイから離れる。彼女が今までにこんな表情をしたことが無かったからだ。
「私が封印している間、こんな子とイチャイチャして。アイシャ見たいなお姉さんに愛されて、さぞ楽しかったでしょうね。」
「信じてもらえないかもしれないけど、僕は君のことを忘れたことは無かった。ずっと死んだと思ってた。苦しくてもやりきれなかったんだ。」
僕は空間転移で周りの従者を吹っ飛ばす。
それから僕はポケットから花冠を取り出した。冠は当時の輝きを未だに放っている。
「アイシャに頼んで、時間を止めてもらったんだ。人間に出来ることはこれが精一杯。不死の呪いをかけることぐらい。」
ここで呪いなんて言わずに、魔法って言っておけば良かっただろう。
でも「魔法使い」にそんなことを言うのは野暮だった。
「い、ぐすん。いらないわよ。今更そんなもの。遅い、遅すぎるわよ。」
セイが裏口から逃げていく。
僕はそれを追いかけた。
「逃げてるのは君の方じゃ無いか。そうやって!! 僕は昔も今も君を愛している。なんでこんなことをするだ。」
僕は彼女を捕まえて抱きしめた。
彼女が嫌がっているのは分かっている。
彼女は魔法まで発動させようとしていた。
歯車が逆回転を始める。
が、僕は代行者の力でそれを止めた。
「離して!! 」
「嫌だ、行かないで。もうどこにも。」
「嫌ッ。」
「ずっと隣にいてほしい。」
そう言うと、彼女は大人しくなった。
「そうやって他の子たちにも色目使ってたぶらかして来たのね。クズ男。」
僕はセイをひっくり返すと、さらに強く抱きしめた。
そして彼女の魔眼を強制発動させる。
僕の心が彼女の中へと流れ込んでいく。
彼女は涙を流していた。
僕も涙を流していた。
しばらくして(それは5分だったかもしれないし、30秒だったかもしれない。)
僕は立ち上がった。
「ドミニク兄さんはどこ? 」
セイは答えてくれた。
「反乱軍リーダーラレオって言う男のところよ。そこにエイレネもいる。」
「なぁセイ。」
「分かってる。グランディルへの攻撃は辞めさせるわ。」
「行っちゃうのね。あの女のところに。」
僕は彼女の腕を引っ張った。
「なんか君がここにいると、ムカムカするんだ。一緒に来て。」
「ふふふ、なんか攫われているみたい。」
「行くよセイ。」
僕は空間転移を使い、館の空に出る。
そこから一気に南を目指した。
そのあと兄さんたちを治療していたアイシャから、従者のエイレネが攫われたということを耳に入れた。
カタルゴ大陸は広大だ。
だが僕にはわかった。
代行者システムと長い間繋がっていたセイの居場所に。
彼女はある貴族の家に居た。
うまく話せないけど、モヤモヤとした感情が頭を覆った。
僕は石造の街の、丘の上に聳え立つ豪邸へと赴くことにした。
門番が僕を制した。
僕は無言グランディルの証を見せて、兵士たちを黙らせた。
グランディルの皇帝がアポ無しで来たと言うことで、宮内は急に騒がしくなった。
セイを抱いている貴族が吹き抜けから僕を見下ろしている。
「これはこれはカーミラ様、代行者を戴冠されたと言うことは、耳に入れておりました。」
四方八方から兵士が槍を向ける。
「セイ、エイレネをどこにやったの? 僕の大切な術者なんだ。」
セイは嘯いているようだ。
「ねえ旦那様? セイって誰? エイレネって知っている? 」
「君は酷い奴だよ。」
セイの表情が変わる。
「酷いのはアンタの方でしょ。」
貴族はびっくりして、セイから離れる。彼女が今までにこんな表情をしたことが無かったからだ。
「私が封印している間、こんな子とイチャイチャして。アイシャ見たいなお姉さんに愛されて、さぞ楽しかったでしょうね。」
「信じてもらえないかもしれないけど、僕は君のことを忘れたことは無かった。ずっと死んだと思ってた。苦しくてもやりきれなかったんだ。」
僕は空間転移で周りの従者を吹っ飛ばす。
それから僕はポケットから花冠を取り出した。冠は当時の輝きを未だに放っている。
「アイシャに頼んで、時間を止めてもらったんだ。人間に出来ることはこれが精一杯。不死の呪いをかけることぐらい。」
ここで呪いなんて言わずに、魔法って言っておけば良かっただろう。
でも「魔法使い」にそんなことを言うのは野暮だった。
「い、ぐすん。いらないわよ。今更そんなもの。遅い、遅すぎるわよ。」
セイが裏口から逃げていく。
僕はそれを追いかけた。
「逃げてるのは君の方じゃ無いか。そうやって!! 僕は昔も今も君を愛している。なんでこんなことをするだ。」
僕は彼女を捕まえて抱きしめた。
彼女が嫌がっているのは分かっている。
彼女は魔法まで発動させようとしていた。
歯車が逆回転を始める。
が、僕は代行者の力でそれを止めた。
「離して!! 」
「嫌だ、行かないで。もうどこにも。」
「嫌ッ。」
「ずっと隣にいてほしい。」
そう言うと、彼女は大人しくなった。
「そうやって他の子たちにも色目使ってたぶらかして来たのね。クズ男。」
僕はセイをひっくり返すと、さらに強く抱きしめた。
そして彼女の魔眼を強制発動させる。
僕の心が彼女の中へと流れ込んでいく。
彼女は涙を流していた。
僕も涙を流していた。
しばらくして(それは5分だったかもしれないし、30秒だったかもしれない。)
僕は立ち上がった。
「ドミニク兄さんはどこ? 」
セイは答えてくれた。
「反乱軍リーダーラレオって言う男のところよ。そこにエイレネもいる。」
「なぁセイ。」
「分かってる。グランディルへの攻撃は辞めさせるわ。」
「行っちゃうのね。あの女のところに。」
僕は彼女の腕を引っ張った。
「なんか君がここにいると、ムカムカするんだ。一緒に来て。」
「ふふふ、なんか攫われているみたい。」
「行くよセイ。」
僕は空間転移を使い、館の空に出る。
そこから一気に南を目指した。
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