神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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聖の国

地下空洞

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 俺は瓦礫まみれになったアグス城の中庭をあとにすると、カーミラがかけていった大きな岩の前に立った。アイシャによると、「ブレイク家は素晴らしい。」とつぶやくと、岩がひとりでに動き出し、地下への階段が出現するらしい。
 正直つぶやくのはしゃくであったが、これも美奈のためだと思い、
「ブレイク家は素晴らしいがそろいもそろって異常者。」
 とつぶやいた。
 言葉に反応して、岩が後ろに動き出す。
「ゴゴゴゴゴゴゴ。」
  階段を下りていくにつれて、カーミラの叫び声が、より鮮明に聞こえるようになる。
「やめてよ父さん。なんで、なんでこんなひどいことができるの? セイやレンが何をしたっていうんだ。」
「えええい黙れ。これもグランディルの未来のためだ。」
 俺がシド・ブレイクに受けた第一印象は最悪だった。子も子なら、親も親である。
 俺は螺旋階段から身を乗り出して、美奈の位置を確認する。
"中央、魔法陣の上で眠らされている。ドサクサに紛れて救出することは難しいか。"
 だからといって、正面から神器持ちを四人も相手に出来る能力など俺には無い。
 出ていったところで返り討ちに会うだけだ。
 そうこうしているうちに、カーミラが叫んだ。
「何が悪魔だ……何が滅するべき厄災だ……」

 「悪魔なのは父さんの方じゃ無いか!! 」

「確かに神族はその力で人間を支配して、虐げていたかもしれない。でも、神族ですらジェノサイドなんておこわなかった。」
 カーミラはおかしくなって笑い出した。
「クククッ……それが、滅するべき忌々しき力が、今のグランディルの動力源なんて……」
「これじゃ……」
 シドが耳を塞いで叫ぶ。
「言うな!! 」
「僕たちが神族みたいじゃ無いかぁ!! 」
 崩れるカーミラをプラウドという男が支える。
 もう後の二人は、腕を組むと、じっとその行く末を見守っていた。
 シド・ブレイクがアイシャという女に、支持を出したようだ。
「アイシャ、術式を発動させて、レンも水晶柱の中に入れなさい。そうすれば、もっと多くの地域のエネルギー問題を解決できる。土地が豊かになれば、作物が増える。作物が増えれば人が増える。それが我らに残された贖罪だ。」
 カーミラがアイシャにしがみ付く。
「ねえ辞めてよアイシャ姉さん。それは僕の大切な友達なんだ。」
「友達? あんたねえ!! セイに頼れなくなったから、今度はレンに依存しようとしてるんでしょ。この女ったらし。離せこの意気地なし。」
 魔法陣が光り始めた。俺も痺れを切らし、手すりを乗り越えて身を乗り出すと、プラウドが叫んだ。
「姐さん!! 術式を止めろ!! 何かがおかしい。」
「もう無理よ。後戻りできない。レンもグランディルの一部になるの。」
「おいお前ら!! 姐さんを止めろ。そして攻撃に備えろ!! コイツはやばい!! 」
 術式を再度掛け直す場合、術式が消え、再度展開するまでの間に、わずかな隙が生じる。
 その隙を、中のバケモノが見逃さないはずが無かった。
 水晶に亀裂が走る。
 やがてそれは砕け去り、中で眠っていた女が目を覚まし、ゆっくりと降下していく。
「ここ最近、地脈の力が弱まったのは……」
「ご名答。私のエネルギーの限界でもなんでも無いわ。神族を舐めすぎたみたいね。私が本気を出せば、この世界だって滅ぼせる。」
"アレが美奈の姉? "
 女が肩甲骨に力を入れると、三対の大きな白い翼が顕現する。
 頭には光輪が現れ、まっぱだった身体を白い衣が包み込む。
 これは……まるで……
「ケガワラシイ神族め!! 」
 最初に口を開いたのはシド・ブレイクだ。
 彼女は翼でカーミラの元に移動し、彼の顎を撫でると口を開いた。
「酷いよねカーミラ。私にこんなことするために近づいたなんて……結局身体が目当てだったんだ。」
 カーミラは首を振り、必死に否定している。
「違うんだセイ!! 僕は本当に君のことを……」
「じゃあ役交代ね。これから私が王様でキミが奴隷!! 」

「一生交代しないけどッ!! 」

「カーミラから離れろ!! 」
 アイシャが彼女に向けて憎しみの感情を向ける。
 と同時に俺も美奈を捕まえて逃げ出そうと、飛び降りた。
「この害虫ゥッ!! 」
 どうやら彼女は最初から俺の存在に気がついていたらしい。
 地面が粘ついて動きにくい。良く見ると、俺の左半身が灰化を始めていた。
 セイに触られているカーミラも同じような状況だ。
「ゴキブリが一匹潜り込んでいたようね。気をつけてね。ゴキブリって一匹見つけたら、三十匹はいるんだから。」
「さぁて虫ケラを始末するのは後にして…….」
「まずはお前からだ!! 」
---lepusスター・ラビット---
   セイが行動に移す前に、アイシャが動いた。
 セイの翼から、鋭い羽が降り注ぐ。
"美奈を助けなきゃ!! "
 俺は眠っている美奈へと手を伸ばした。
「もう辞めてよお姉ちゃん。」
 地面の粘着質な床が消える。
 俺はゆっくり立ち上がった。
「美奈……思い…出したのか? 」
 彼女は光り輝き、足元に蓮の花らしきものを出現させる。
「うん、全部。終わらせてくる。」
 額に赤い点が浮かび上がり、背中には光背が浮かび上がる。
「やっと思い出したのね。レン。」
 セイはアイシャへの攻撃を中断させると、神々しく光る美奈の方を見た。
「お姉ちゃん……」
 セイが手を掲げると、四人の神器保持者から力が吸い取られる。
 それは真鍮のラッパのような形に姿を変えた。
 俺は彼女に向けて叫んだ!!
「美奈っ!! 」
「そこで待ってて。これは私たち姉妹の問題だから。」

 
 

 
 
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