神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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聖の国

悪い知らせ

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 俺はあの後極東軍に捕まり、新兵器の軍事用四輪車にて護送されることになった。
 そこで兵士たちの世間話を小耳に挟む。
「おい聞いたか? 極東で契約者が人質に取られたってよ。名前はなんだけっけ? す…す…す…」
「須崎だろ? 」
"須崎? 美奈がか? "
 俺は拘束を無理やり引き払うと、走っている軍事用四輪車のドアをぶちあけ、そのままグランディルの、塔が見える方へと走り出した。

---なぁオイ? ---
 サバンナを抜け、山脈の尾根を抜けるたところで、見覚えのない声がどこからとなく聞こえ、不意に警戒した。
---俺だよ俺、オイ無視すんな。鬼影だ---
 俺は構えた。今奴に出て来られて、好き放題されるわけにはいかない。
---そんなに警戒すんなよ聞きたいことがあるだけなんだ---
「今忙しい。手短に頼むぞ。」
---なぁ慎二郎が死んだって本当か? ---
 無神経だとは思わないかオイ?
 時間がないので、俺も手短に話した。
「俺が殺した。」
 そう言うと、鬼影は急に笑い出す。
「何がおかしい? 」
---いやいや、お前面白い奴だな---
---よろしくな兄弟---
 馴れ馴れしい奴だ。さっきまで暴れ回ってた奴のセリフか?コレは。
「なんだよ兄弟って。」
---なんだぁ水臭え奴だな---
---あー人間が食いたいぜ。オイ慎二郎のガキ、街に行け食事にするぞ---
 なんだろう、どこらからツッこんでやろうか。
「俺は慎二郎じゃない、慎二だ。あと、人間はやめとけ。極東にはもっと美味いもんがある。帰ったら食わしてやるよ。すき焼きをな。」
---なんだそのスキ___---
「カーミラだ。」
 彼は背中に見覚えのある女を背負い、故郷のグランディルを目指していた。
「おいお前!! 」
「僕だってしたくてしたい訳じゃ無かった。」
「オイそれはどう言うことだ? 説明しろ。お前が美奈を連れ去ったのか? 」
 どうやら話が噛み合っていないらしい。
 俺は二ヶ月ほど前、極東に潜入しに来た女をカーミラが背負っていて、(恐らくセル帝国に囚われていた女というのはコレのことだ。)その女の話をしているのに、カーミラは美奈を誘拐したことを糾弾されたと勘違いしているらしい。
 が、今はコイツとやり合っている暇もない。
「女を貸せ!! 明け方までにグランディルに着くぞ。」
 俺はカーミラから女を掻っ攫っておぶると、疾風をかけて、身体強化をする。
「待ってくれ慎二、アイシャに聞きたいことがあるんだ。」
「なら走りながら頼む。美奈を守るというのが、との契約だ。」
 彼はまず初めに俺へと話しかけてきた。
「なぁ慎二、術式の代償が消えることなんてあると思うか? 」
「俺の身体を見ても、お前はそう思うか? 」
「いや、そうは思わない。」
「そんなもの始めから決まっているだろ。代償が無くなっているなら、それはそう見えるだけで、何かで補完されているか、上書きされているかのどっちかだ。」
 カーミラは覚悟を決めたようで、俺におぶられている女の肩を譲り、彼女を起こそうとした。
「なぁアイシャ、起きてくれ。」
「んんっ。」
 女は目を覚ますと、カーミラのことを見て安堵したようだ。
 背中に生暖かい息がかかる。
 彼は恐る恐る彼女にことの真相を聞こうとしていた。
「君の言っていた代行者の代償を消し去る術式、セイが使われていたり……しないよね。」
 少しの間。
 俺は彼女の表情がよく見えないが、どう話して良いか、考えているのだろう。
「どうやらカーミラには隠しきれない見たいね。」
 そこで俺は、セイという美奈の姉が、代行者システムの代償をその生命力で肩代わりしていること、領土を広げ、地脈を張るごとに、その力が徐々に弱まり始めていること、美奈は親父から正式に力を与えられて「継承者」と呼ばれていることを小耳に挟んだ。
 だとすると、美奈が危ない。彼女も時期に儀式の触媒とされ、地脈の一部になるのだろう。
 カーミラがアイシャに問いかける。
「でもどうして僕に本当のことを言ってくれなかったんだい? 」
 話しぶりからセイはカーミラととても仲が良かったらしい。俺は聞かなくても分かった。
「カーミラ。着いたぞ。グランディルだ。」
 そこには見覚えのある男が立っていた。
「チッ、一番会いたくない奴に会っちまったな。」
 男は俺のことなんて見えていないようなそぶりで、カーミラへと話しかけた。
「なんでお前が極東のガキと一緒なんだ? 」
 カーミラは震えて、何も口に出来ていない。
 まるで兄の存在に怯える弟のような。
 俺は背中のアイシャをカーミラに渡した。
「先に行け、ここは俺が引き受ける。」
「でも慎二……」
「美奈を頼んだ。」
 そう言うと、カーミラは美奈のいるであろう宮殿に走っていった。
「この一ヶ月、とても長く感じたぞ台与鬼子。」
 父さんの仇、ドミニク・ブレイクだ。
「そうか? 俺はこの一ヶ月、とても身近く感じたがな。お前とは時間の密度が違う。」
「調子に乗ってんじゃねえぞクソガキ。」
---時空壊クロック・アウト---
 俺たちは同時に地面を蹴った。




 
 
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