神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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燃える極東

聖人君子

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「敵襲!! 敵襲!! 」
 民主たちが奏でる騒音を、高いサイレンと、見張りの声がかき消す。
 俺たちは顔を合わせると、すぐさま都の外へと直行する。
---blockingストップ・ギア---
 美奈が時間を止めてくれたおかげで、三条から羅城門を、0.1秒で駆けることができた。
 俺たちはそのまま郊外へと出て、外で陳列している兵士たちの前へと立った。
 聖だ。
 青年は額に汗をかきながら、最先端で、両刃の武器(細くて剣なのかも分からない。)を地面に突き立てて、俺の言葉を待っていた。
「何しにやって来やがった。」
 すると青年は静かに口を開く。
「金鉱を少しばかり分けて欲しいんだ。マルコに聞いたよ。極東は上質な金がたくさん取れるってね。」
 極東の金山は、労働人口の20%を占めるほどの大産業だ。
 その一部でもグランディルに明け渡せば、極東は失業者で溢れてしまうことになる。
 青年はそれを察したのか、今度は両掌を胸の前で合わせて答えた。
「なら労働者も含めて、このカーミラ・ブレイクが買い取ろう。頼む、父が呪いで金を欲しているんだ。このままだと喉を掻き切るかもしれない。」
「もっと無理だ。」
 青年が憂いのある表情をしたことを見逃さない。
「なんで僕がこんなこと言うか分かるかい。」
「ああ、分かるとも。お前が人も襲えない甘ちゃんだってことがな。」
 青年は突き刺さった剣を抜き取ると、俺の方に向けて来た。
「僕が甘ちゃんなのは認めよう。だが、グランディルには、父さんには逆らわない方が良い。」
 彼は何か勘違いをしているようだ。
「あーなんか話が噛み合わねえから、翻訳プログラムがポンコツなせいかと思ったが、ポンコツなのはお前の頭だったな。」
 青年の目が鋭くひかる。
「後悔するなよ。」
 俺は背中の天沼矛を取り出すと、腰の布津御魂を引き抜いた。
「極東を舐めてると痛い目見るぞ。」
「なぁカーミラさんよ。もう燃やしちまっても良いか? ここだろ、俺の父さんが殺されたって言うのは。」
 「許可する。」
 俺は憤りを感じ、彼へ向けて天沼矛の斬撃を放った。
 が、それを空間転移した青年(カーミラと呼ばれていた。)が剣で受け止める。
「お前の間は僕だ。」
 美奈が呪術を発動させて、都を襲おうとしている聖たちを止めようとしている。
 それに気がついたカーミラがあっけに取られ、口を開く。
「レン? 」
 彼は空間転移で彼女の前までくると、執拗に迫った。
「レン? レンなんだろ? 」
「あなた…誰? 」
「グランディルに帰ろう。大丈夫、兄様たちにも、父にも……アイシャにもバレないようにするから。セイみたいにはしないから。」
「いや!! やめて!! 」
 極東の都に火がつく。木造の密集した建造物に次々と燃え移っていく。
---去刀サルタチ---
 布津御魂で予め美奈の周りにつけておいた刃の斬像を具現化させる。
「目ぇ瞑ってろ美奈。」
 次の瞬間、彼女に触れていたカーミラの右腕が、肘から削ぎ落とされる。
 彼は、その痛みで何かを思い出したかのように叫んだ。
「この痛み、その刀……お前あの時の!! 」
「レンを洗脳して契約者にしてコキ使っているのか……悪魔め!! 」
「なら悪魔らしくやらせてもらうぞ吸血鬼!! 覚悟の準備は良いか? 」
「槍馬!! 」
 美奈が後ろで尻餅をついている。腰を抜かしたのだろう。
 そこに水崎が都合良くやって来たので、彼女に向けて叫んだ。
「美奈を聖から守ってくれ!! 今は空いている手がない。」
 右手に天沼矛、左手に布津御魂、俺に美奈を守り抜く手など残っていなかった。
「つい最近まで私の方が上官だったのに、随分と偉そうね。」
 彼女はボヤ騒ぎを止めるためにここまで来たのだろう。
 だが美奈を優先してくれた彼女に心から感謝した。
「逃げる事は出来るけど、ずっとは無理よ。私も能力で聖を止めないといけない。」
 カーミラは血走った目で聖たちに指示を出した。
「何をしている!! レンを捕まえろ!! 」
 部下の一人が、彼を宥める。
「カーミラ様、そんなに取り乱されてどうなされたのですか? 」
 もう一人の部下がこちらにやってくる。
「人違いです。それより、正義を成す聖戦はもう始まっております。カーミラ様、剣を取って宮内まで攻め入らなくては!! 」
「……ずはお前からだ。」
彼は右手を再生させると、剣を拾い上げ、再び姿を消した。
 右、左、前、後ろ、空間転移でフェイントをかけて、俺を翻弄する。
「どっからでも来い!! 狩ってやる。」
 胸をドクンと刺す殺意とは違うただならない感情。
 昔、近所のありんコを面白半分に潰していたことを思い出した。
 "コレが、坂田家の能力? "
 呪いのような感情が俺にガッチリ絡みつき、頭から離れない。
 極東を聖から守ることが最優先なのに……
「狩りたい……」
 天沼矛の力が発動し、カーミラの「未来を斬った。
 彼は、体を粉々にされて、地面に崩れ落ちる。
 が、さっき去刀で斬ったよりも早く再生し、俺に刃を向けてくる。
「気持ち悪い身体だな。」
「だが殺し甲斐がある。」
 俺は布津御魂を逆手に持ち帰ると、再生の終わったカーミラ向けて突っ込んだ。
 後ろから水平斬りがくると予測した俺は、体勢を低くし、攻撃を交わす。
 切り口は、空間が歪み、アベコベにくっついた。
 しばらくすると、剣の後は、ゴムに引っ張られたように元に戻る。
「この剣は次元を斬り裂く。もちろんお前もな。」
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