31 / 145
燃える極東
聖人君子
しおりを挟む
「敵襲!! 敵襲!! 」
民主たちが奏でる騒音を、高いサイレンと、見張りの声がかき消す。
俺たちは顔を合わせると、すぐさま都の外へと直行する。
---blocking---
美奈が時間を止めてくれたおかげで、三条から羅城門を、0.1秒で駆けることができた。
俺たちはそのまま郊外へと出て、外で陳列している兵士たちの前へと立った。
聖だ。
青年は額に汗をかきながら、最先端で、両刃の武器(細くて剣なのかも分からない。)を地面に突き立てて、俺の言葉を待っていた。
「何しにやって来やがった。」
すると青年は静かに口を開く。
「金鉱を少しばかり分けて欲しいんだ。マルコに聞いたよ。極東は上質な金がたくさん取れるってね。」
極東の金山は、労働人口の20%を占めるほどの大産業だ。
その一部でもグランディルに明け渡せば、極東は失業者で溢れてしまうことになる。
青年はそれを察したのか、今度は両掌を胸の前で合わせて答えた。
「なら労働者も含めて、このカーミラ・ブレイクが買い取ろう。頼む、父が呪いで金を欲しているんだ。このままだと喉を掻き切るかもしれない。」
「もっと無理だ。」
青年が憂いのある表情をしたことを見逃さない。
「なんで僕がこんなこと言うか分かるかい。」
「ああ、分かるとも。お前が人も襲えない甘ちゃんだってことがな。」
青年は突き刺さった剣を抜き取ると、俺の方に向けて来た。
「僕が甘ちゃんなのは認めよう。だが、グランディルには、父さんには逆らわない方が良い。」
彼は何か勘違いをしているようだ。
「あーなんか話が噛み合わねえから、翻訳プログラムがポンコツなせいかと思ったが、ポンコツなのはお前の頭だったな。」
青年の目が鋭くひかる。
「後悔するなよ。」
俺は背中の天沼矛を取り出すと、腰の布津御魂を引き抜いた。
「極東を舐めてると痛い目見るぞ。」
「なぁカーミラさんよ。もう燃やしちまっても良いか? ここだろ、俺の父さんが殺されたって言うのは。」
「許可する。」
俺は憤りを感じ、彼へ向けて天沼矛の斬撃を放った。
が、それを空間転移した青年(カーミラと呼ばれていた。)が剣で受け止める。
「お前の間は僕だ。」
美奈が呪術を発動させて、都を襲おうとしている聖たちを止めようとしている。
それに気がついたカーミラがあっけに取られ、口を開く。
「レン? 」
彼は空間転移で彼女の前までくると、執拗に迫った。
「レン? レンなんだろ? 」
「あなた…誰? 」
「グランディルに帰ろう。大丈夫、兄様たちにも、父にも……アイシャにもバレないようにするから。セイみたいにはしないから。」
「いや!! やめて!! 」
極東の都に火がつく。木造の密集した建造物に次々と燃え移っていく。
---去刀---
布津御魂で予め美奈の周りにつけておいた刃の斬像を具現化させる。
「目ぇ瞑ってろ美奈。」
次の瞬間、彼女に触れていたカーミラの右腕が、肘から削ぎ落とされる。
彼は、その痛みで何かを思い出したかのように叫んだ。
「この痛み、その刀……お前あの時の!! 」
「レンを洗脳して契約者にしてコキ使っているのか……悪魔め!! 」
「なら悪魔らしくやらせてもらうぞ吸血鬼!! 覚悟の準備は良いか? 」
「槍馬!! 」
美奈が後ろで尻餅をついている。腰を抜かしたのだろう。
そこに水崎が都合良くやって来たので、彼女に向けて叫んだ。
「美奈を聖から守ってくれ!! 今は空いている手がない。」
右手に天沼矛、左手に布津御魂、俺に美奈を守り抜く手など残っていなかった。
「つい最近まで私の方が上官だったのに、随分と偉そうね。」
彼女はボヤ騒ぎを止めるためにここまで来たのだろう。
だが美奈を優先してくれた彼女に心から感謝した。
「逃げる事は出来るけど、ずっとは無理よ。私も能力で聖を止めないといけない。」
カーミラは血走った目で聖たちに指示を出した。
「何をしている!! レンを捕まえろ!! 」
部下の一人が、彼を宥める。
「カーミラ様、そんなに取り乱されてどうなされたのですか? 」
もう一人の部下がこちらにやってくる。
「人違いです。それより、正義を成す聖戦はもう始まっております。カーミラ様、剣を取って宮内まで攻め入らなくては!! 」
「……ずはお前からだ。」
彼は右手を再生させると、剣を拾い上げ、再び姿を消した。
右、左、前、後ろ、空間転移でフェイントをかけて、俺を翻弄する。
「どっからでも来い!! 狩ってやる。」
胸をドクンと刺す殺意とは違うただならない感情。
昔、近所のありんコを面白半分に潰していたことを思い出した。
"コレが、坂田家の能力? "
呪いのような感情が俺にガッチリ絡みつき、頭から離れない。
極東を聖から守ることが最優先なのに……
「狩りたい……」
天沼矛の力が発動し、カーミラの「未来を斬った。
彼は、体を粉々にされて、地面に崩れ落ちる。
が、さっき去刀で斬ったよりも早く再生し、俺に刃を向けてくる。
「気持ち悪い身体だな。」
「だが殺し甲斐がある。」
俺は布津御魂を逆手に持ち帰ると、再生の終わったカーミラ向けて突っ込んだ。
後ろから水平斬りがくると予測した俺は、体勢を低くし、攻撃を交わす。
切り口は、空間が歪み、アベコベにくっついた。
しばらくすると、剣の後は、ゴムに引っ張られたように元に戻る。
「この剣は次元を斬り裂く。もちろんお前もな。」
民主たちが奏でる騒音を、高いサイレンと、見張りの声がかき消す。
俺たちは顔を合わせると、すぐさま都の外へと直行する。
---blocking---
美奈が時間を止めてくれたおかげで、三条から羅城門を、0.1秒で駆けることができた。
俺たちはそのまま郊外へと出て、外で陳列している兵士たちの前へと立った。
聖だ。
青年は額に汗をかきながら、最先端で、両刃の武器(細くて剣なのかも分からない。)を地面に突き立てて、俺の言葉を待っていた。
「何しにやって来やがった。」
すると青年は静かに口を開く。
「金鉱を少しばかり分けて欲しいんだ。マルコに聞いたよ。極東は上質な金がたくさん取れるってね。」
極東の金山は、労働人口の20%を占めるほどの大産業だ。
その一部でもグランディルに明け渡せば、極東は失業者で溢れてしまうことになる。
青年はそれを察したのか、今度は両掌を胸の前で合わせて答えた。
「なら労働者も含めて、このカーミラ・ブレイクが買い取ろう。頼む、父が呪いで金を欲しているんだ。このままだと喉を掻き切るかもしれない。」
「もっと無理だ。」
青年が憂いのある表情をしたことを見逃さない。
「なんで僕がこんなこと言うか分かるかい。」
「ああ、分かるとも。お前が人も襲えない甘ちゃんだってことがな。」
青年は突き刺さった剣を抜き取ると、俺の方に向けて来た。
「僕が甘ちゃんなのは認めよう。だが、グランディルには、父さんには逆らわない方が良い。」
彼は何か勘違いをしているようだ。
「あーなんか話が噛み合わねえから、翻訳プログラムがポンコツなせいかと思ったが、ポンコツなのはお前の頭だったな。」
青年の目が鋭くひかる。
「後悔するなよ。」
俺は背中の天沼矛を取り出すと、腰の布津御魂を引き抜いた。
「極東を舐めてると痛い目見るぞ。」
「なぁカーミラさんよ。もう燃やしちまっても良いか? ここだろ、俺の父さんが殺されたって言うのは。」
「許可する。」
俺は憤りを感じ、彼へ向けて天沼矛の斬撃を放った。
が、それを空間転移した青年(カーミラと呼ばれていた。)が剣で受け止める。
「お前の間は僕だ。」
美奈が呪術を発動させて、都を襲おうとしている聖たちを止めようとしている。
それに気がついたカーミラがあっけに取られ、口を開く。
「レン? 」
彼は空間転移で彼女の前までくると、執拗に迫った。
「レン? レンなんだろ? 」
「あなた…誰? 」
「グランディルに帰ろう。大丈夫、兄様たちにも、父にも……アイシャにもバレないようにするから。セイみたいにはしないから。」
「いや!! やめて!! 」
極東の都に火がつく。木造の密集した建造物に次々と燃え移っていく。
---去刀---
布津御魂で予め美奈の周りにつけておいた刃の斬像を具現化させる。
「目ぇ瞑ってろ美奈。」
次の瞬間、彼女に触れていたカーミラの右腕が、肘から削ぎ落とされる。
彼は、その痛みで何かを思い出したかのように叫んだ。
「この痛み、その刀……お前あの時の!! 」
「レンを洗脳して契約者にしてコキ使っているのか……悪魔め!! 」
「なら悪魔らしくやらせてもらうぞ吸血鬼!! 覚悟の準備は良いか? 」
「槍馬!! 」
美奈が後ろで尻餅をついている。腰を抜かしたのだろう。
そこに水崎が都合良くやって来たので、彼女に向けて叫んだ。
「美奈を聖から守ってくれ!! 今は空いている手がない。」
右手に天沼矛、左手に布津御魂、俺に美奈を守り抜く手など残っていなかった。
「つい最近まで私の方が上官だったのに、随分と偉そうね。」
彼女はボヤ騒ぎを止めるためにここまで来たのだろう。
だが美奈を優先してくれた彼女に心から感謝した。
「逃げる事は出来るけど、ずっとは無理よ。私も能力で聖を止めないといけない。」
カーミラは血走った目で聖たちに指示を出した。
「何をしている!! レンを捕まえろ!! 」
部下の一人が、彼を宥める。
「カーミラ様、そんなに取り乱されてどうなされたのですか? 」
もう一人の部下がこちらにやってくる。
「人違いです。それより、正義を成す聖戦はもう始まっております。カーミラ様、剣を取って宮内まで攻め入らなくては!! 」
「……ずはお前からだ。」
彼は右手を再生させると、剣を拾い上げ、再び姿を消した。
右、左、前、後ろ、空間転移でフェイントをかけて、俺を翻弄する。
「どっからでも来い!! 狩ってやる。」
胸をドクンと刺す殺意とは違うただならない感情。
昔、近所のありんコを面白半分に潰していたことを思い出した。
"コレが、坂田家の能力? "
呪いのような感情が俺にガッチリ絡みつき、頭から離れない。
極東を聖から守ることが最優先なのに……
「狩りたい……」
天沼矛の力が発動し、カーミラの「未来を斬った。
彼は、体を粉々にされて、地面に崩れ落ちる。
が、さっき去刀で斬ったよりも早く再生し、俺に刃を向けてくる。
「気持ち悪い身体だな。」
「だが殺し甲斐がある。」
俺は布津御魂を逆手に持ち帰ると、再生の終わったカーミラ向けて突っ込んだ。
後ろから水平斬りがくると予測した俺は、体勢を低くし、攻撃を交わす。
切り口は、空間が歪み、アベコベにくっついた。
しばらくすると、剣の後は、ゴムに引っ張られたように元に戻る。
「この剣は次元を斬り裂く。もちろんお前もな。」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる