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大陸遠征
市内交戦
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「ったくお前はよ。ろくに端末も使えないとはなぁ。そんなんで良く極東でやって来れたぜ。」
俺は今、馬田と任務に当たっている。理由は上記の通りだ。
「だって誰も教えてくれなかったんですよ。」
「あーもー分かった分かった泣くなよ新入り。俺がやるのを良く見てろ。ほーらアソコに俺たちと同じ肌の色した奴らがいるだろう? なぁ分かりやすいぜ。ココらは色白で血の気がない奴ばっかりだからな。間違いないワーメリゴンだ。」
俺たちはワーメリゴンたちに対する聴き込み調査を開始した。
彼は声に覇気がなく、それでいて、口調に抑揚が無い。
「これは酷いな。」
まるで人間と話している気がしない。言うならば、人形と話しているような。
「奴隷にされて、人格すら破壊されてしまったのかも知れませんね。」
こう言う他愛無い会話をしながらも、俺たちは、レンガの屋根から向けられる視線に気がついていた。
お互い気づいていないフリをしながら、奴の死角で、手でお互いの状況を確認する。
"怪しい人影、俺から見て三時の方向、お前から見れば……"
"気づいています。俺から見て六時の方向、ロープから覗く肌の色は白、聖の可能性あり、神聖魔術に注意。"
不意に人形が俺の手をガッチリ掴んだ。
"バレたか!! "
屋根の上の悪趣味ない野郎がロープを剥ぎ捨てる。
透き通るような白い肌、そして、吸い込まれるような赤い二対の眼。
「霧し? 」
馬田は驚きの余り、反応が遅れていた。
---疾風---
俺は右手で右側頭を撃ち抜くと共に、左腕で彼を担ぎ上げる。
冷ややかな神聖魔術を背中で感じながら、
紙一重
氷の槍をかわすことに成功する。
「この俺が新入りに助けられるとはな。礼を言うぞ慎二。」
「早く立って下さい。霧島をこのままにしておくと、大変なことになる。霧島を止められるのは貴方だけです。」
霧島は、三ブロック先で、情報収集をしている重力使いを見つけると、そのまま奴の方へと走り出した。
「志…築…せ…き か こ…ト…ラ…ウ…マ 」
こう言う緊急事態に限って事は悪い方へと進む。
このままでは、霧島が斥を暴走させてしまう。
「馬田さん!! 早く!! こんなところで奴を暴走させたら、島ごと沈んでしまいます。」
彼は強い口調で叫んだ。
「んな事は分かっている。今の奴を殺すことなんて簡単だ。」
彼だって心の中では分かっている。こうなった時に、霧島を止めるために自分はいる。
だが現実は、彼女が思想犯罪を起こすと言う事象より、もっと残酷だった。
「慎二!! 」
「言われなくても分かってますよ!! 」
彼も俺も、同じ第二の選択を取る。
"俺が斥の暴走を止めているうちに、馬田が霧島を無力化する。"
俺は先回りし、斥へと手をかける。
「彼は一瞬、俺の存在に気づいてから、顔を真っ青にして、白眼を向き、天へと叫んで昇天した。」
次の瞬間、全身を押しつぶす鉛のような感覚が、俺を襲った。
慌てて磁場を操作し、能力を均衡させる。
神聖魔術である火の鳥が、俺を弾き飛ばす。
ベクトルの介入で、計算式の狂った俺の頭は、クルクル回った。
電気磁石状態となった両足で、なんとか地面をキャッチする。
そのままレンガの壁を走り出し、左手に持ち替えた銃鬼で側頭を撃ち抜く。
---The thing seen in this world is slower than me…---
赤を超えた視界で、彼女の神聖語を視る。
それを次々と、凛月で弾き返して、刃に稲妻を宿すと、回転しながら斬りつける。
---雷刃---
雷が号す。
彼女は、その白い刃をバックステップで避ける。
避けた先に、斥が倒れている。
俺は彼の腹部に一発入れようと試みる。
"縺雁燕縺ョ荳。隕ェ縺梧ュサ繧薙□縺ョ縺ッ縲√♀蜑阪↓蜉帙′辟。縺九▲縺溘°繧峨□縲。"
不快なノイズが俺の脳を犯す。
言語を理解する事は出来ないが、その意味は、俺の言語領域へと直接届いた。
霧島の周り蹴りが、俺の胴体を蹴り飛ばす。
凛月を投げ飛ばし、全身で受け身をとる。
煉瓦造りの地面に衝撃を出来るだけ受け流す。
蹴られた時の衝撃と、分散した←方向の力を、両手の摩擦力で軽減し、一回転。両足でガッチリ地を捉えると、凛月をキャッチする。
電極が軋んできた。ショート覚悟で挑んでも、斥を抑えられるのは、五分が限界。
それまでに、斥を眠らせて、霧島を無力化しなくてはならない。
だが、斥の元に近づくと、霧島が邪魔をしてくる。
今度は馬田がこちらにブッとんできた。
「絶望的にコンビネーションがねえな俺たちは。」
「全くですよ。」
お互いの意思疎通が取れていないせいか、連携がまるで取れていない。
「慎二!! 一瞬で良い。プロテクトを剥がせ。」
彼は俺に「思考を差し出せ。」と言っている。
その一瞬の隙を狙って、霧島を操っている人間が、俺に洗脳を施すかも知れない。
いや、そもそも馬田は大丈夫なのか? こう言う能力者は精神攻撃にめっぽう弱い。
現に、てだれの霧島はあんな風になっているではないか?
「慎二!! 俺を信じろ。」
信じろも何も、迷っている余裕など無かった。
どっちにせよ、このままズルズル言ったとしても、俺たちに勝機は無い。
俺は電磁バリアーを外した。
俺は今、馬田と任務に当たっている。理由は上記の通りだ。
「だって誰も教えてくれなかったんですよ。」
「あーもー分かった分かった泣くなよ新入り。俺がやるのを良く見てろ。ほーらアソコに俺たちと同じ肌の色した奴らがいるだろう? なぁ分かりやすいぜ。ココらは色白で血の気がない奴ばっかりだからな。間違いないワーメリゴンだ。」
俺たちはワーメリゴンたちに対する聴き込み調査を開始した。
彼は声に覇気がなく、それでいて、口調に抑揚が無い。
「これは酷いな。」
まるで人間と話している気がしない。言うならば、人形と話しているような。
「奴隷にされて、人格すら破壊されてしまったのかも知れませんね。」
こう言う他愛無い会話をしながらも、俺たちは、レンガの屋根から向けられる視線に気がついていた。
お互い気づいていないフリをしながら、奴の死角で、手でお互いの状況を確認する。
"怪しい人影、俺から見て三時の方向、お前から見れば……"
"気づいています。俺から見て六時の方向、ロープから覗く肌の色は白、聖の可能性あり、神聖魔術に注意。"
不意に人形が俺の手をガッチリ掴んだ。
"バレたか!! "
屋根の上の悪趣味ない野郎がロープを剥ぎ捨てる。
透き通るような白い肌、そして、吸い込まれるような赤い二対の眼。
「霧し? 」
馬田は驚きの余り、反応が遅れていた。
---疾風---
俺は右手で右側頭を撃ち抜くと共に、左腕で彼を担ぎ上げる。
冷ややかな神聖魔術を背中で感じながら、
紙一重
氷の槍をかわすことに成功する。
「この俺が新入りに助けられるとはな。礼を言うぞ慎二。」
「早く立って下さい。霧島をこのままにしておくと、大変なことになる。霧島を止められるのは貴方だけです。」
霧島は、三ブロック先で、情報収集をしている重力使いを見つけると、そのまま奴の方へと走り出した。
「志…築…せ…き か こ…ト…ラ…ウ…マ 」
こう言う緊急事態に限って事は悪い方へと進む。
このままでは、霧島が斥を暴走させてしまう。
「馬田さん!! 早く!! こんなところで奴を暴走させたら、島ごと沈んでしまいます。」
彼は強い口調で叫んだ。
「んな事は分かっている。今の奴を殺すことなんて簡単だ。」
彼だって心の中では分かっている。こうなった時に、霧島を止めるために自分はいる。
だが現実は、彼女が思想犯罪を起こすと言う事象より、もっと残酷だった。
「慎二!! 」
「言われなくても分かってますよ!! 」
彼も俺も、同じ第二の選択を取る。
"俺が斥の暴走を止めているうちに、馬田が霧島を無力化する。"
俺は先回りし、斥へと手をかける。
「彼は一瞬、俺の存在に気づいてから、顔を真っ青にして、白眼を向き、天へと叫んで昇天した。」
次の瞬間、全身を押しつぶす鉛のような感覚が、俺を襲った。
慌てて磁場を操作し、能力を均衡させる。
神聖魔術である火の鳥が、俺を弾き飛ばす。
ベクトルの介入で、計算式の狂った俺の頭は、クルクル回った。
電気磁石状態となった両足で、なんとか地面をキャッチする。
そのままレンガの壁を走り出し、左手に持ち替えた銃鬼で側頭を撃ち抜く。
---The thing seen in this world is slower than me…---
赤を超えた視界で、彼女の神聖語を視る。
それを次々と、凛月で弾き返して、刃に稲妻を宿すと、回転しながら斬りつける。
---雷刃---
雷が号す。
彼女は、その白い刃をバックステップで避ける。
避けた先に、斥が倒れている。
俺は彼の腹部に一発入れようと試みる。
"縺雁燕縺ョ荳。隕ェ縺梧ュサ繧薙□縺ョ縺ッ縲√♀蜑阪↓蜉帙′辟。縺九▲縺溘°繧峨□縲。"
不快なノイズが俺の脳を犯す。
言語を理解する事は出来ないが、その意味は、俺の言語領域へと直接届いた。
霧島の周り蹴りが、俺の胴体を蹴り飛ばす。
凛月を投げ飛ばし、全身で受け身をとる。
煉瓦造りの地面に衝撃を出来るだけ受け流す。
蹴られた時の衝撃と、分散した←方向の力を、両手の摩擦力で軽減し、一回転。両足でガッチリ地を捉えると、凛月をキャッチする。
電極が軋んできた。ショート覚悟で挑んでも、斥を抑えられるのは、五分が限界。
それまでに、斥を眠らせて、霧島を無力化しなくてはならない。
だが、斥の元に近づくと、霧島が邪魔をしてくる。
今度は馬田がこちらにブッとんできた。
「絶望的にコンビネーションがねえな俺たちは。」
「全くですよ。」
お互いの意思疎通が取れていないせいか、連携がまるで取れていない。
「慎二!! 一瞬で良い。プロテクトを剥がせ。」
彼は俺に「思考を差し出せ。」と言っている。
その一瞬の隙を狙って、霧島を操っている人間が、俺に洗脳を施すかも知れない。
いや、そもそも馬田は大丈夫なのか? こう言う能力者は精神攻撃にめっぽう弱い。
現に、てだれの霧島はあんな風になっているではないか?
「慎二!! 俺を信じろ。」
信じろも何も、迷っている余裕など無かった。
どっちにせよ、このままズルズル言ったとしても、俺たちに勝機は無い。
俺は電磁バリアーを外した。
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