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復讐鬼
改造手術
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「やぁ、そろそろ来るんじゃないかと思っていたよ。」
俺は散々考え込んだ挙句、極長室に姿を現した。
「このままじゃ、俺と凛月の溝は深まるばかりだ。アンタなら知っているだろ? 俺はなぜ未知術まだしも、能力すら使えないんだ? 」
坂上は眉を上下させると、背もたれに腰掛け、腕を組んだ。
「ん? 随分と凛月に対して入れ込むじゃ無いか? コレも、魔具の代償の現れかな? 」
俺は彼の机に勢い良く手をつく。
「俺の身に何が起こっている? 答えろ!! 」
坂上は少し考えてから答えた。
「キミの体は、陽電子のバランスと虚数電子のバランスが不安定なんだ。」
「だから呪具を使うための虚数電子と、魔具を使うための陽電子が互いに干渉し、互いの能力発動を妨げている。」
その理屈はおかしい。なぜなら俺は、魔具と契約した今も、虚数電子をある程度使いこなせているからだ。
原因がもっと別の場所にあることは分かっていた。
「呪術は問題なく使えるが? 」
「なんでだろうね? 」
コイツは!! 俺にも分かった。彼が何かを隠していることを。
だが、焦燥している俺にとって、そんな問題はどうでも良かった。
俺の求めるものは聖を殺すための能力。俺の身体の秘密ではない。
「好きに使えよ。鬼に魂を売った。今更戻れる場所なんてないさ。」
坂上は両手をパンと叩いた。
「君ならそう言ってくれると思ったよ。」
俺は、ラボのような場所に連れて行かれると、そこで研究者たちに身体をいじくりまわされた。
そこでは、身体に導体を通す必要があるだの、導体がイオンとして血中に溶け出し、身体に悪影響を及ぼすことや、溶け出した導体を定期的に補充しなければならないとかいう意味の分からないことを散々話し込んだ後、俺のRNAで作ったタンパク質でコーティングするなどと言う結論に至ったらしい。
手術は二十時間にも及んだ。俺は後頭部から両手両足までをパックリ開かれ、中に導線を埋め込まれたらしい。
というのも、その時は麻酔を撃たれていたので、よく覚えていない。
というか、人間用の麻酔は効かず、馬専用のものを使われたらしい。
そっちの方が衝撃的だった。
目を覚ました俺は、七日間程度、身体を満足に動かすことが出来なかった。
また血中のイオン濃度が変化し、ふらつくこともあった。
八日目、身体の違和感はさっぱり消え去っていた。
俺は悲田院内を探し回り、凛月の痕跡を追う。
俺は中庭で花を見つめている彼女を見た。
気まずい。
そういえば、あの試合の後、黙って姿を消してしまった。
せめて一言何か言っておけば良かったと思うも後の祭りだ。
「慎二、どこに行っちゃったんだろ? 」
「どうしよう、このままどっか行っちゃったら。」
自分の人格がクソッタレだということは自分で嫌というほど分かっていたが……
「俺はなんて奴だ。」
俺は2階から中庭に飛び降りると、彼女の前まで走って行った。
「探したぞ凛月。」
「慎二!! 」
彼女は武器の姿になると、再び俺の腰に収まった。
---もう会えないんじゃないかって---
「悪い、身体の調整をしてもらっていたんだ。もう虚数電子をお前の身体に流さなくて良いようにな。」
---ごめんね慎二---
なんかズルいやつだ。俺が一番に発しないといけない言葉を、簡単に吐きやがる。
俺は謝るタイミングを失った。
---なんか懐かしい感じ---
懐かしい。そうだ。俺も彼女と出会って間もない訳では無いような気がする。
俺は彼女に父親のことを聞こうと、口を開こうとする。
敵襲 敵襲
悲田院内、いや、都内に警鐘が鳴り響いた。
* * *
極長は窓から慎二を見下ろし、一人呟いた。
「さぁチュートリアルの始まりだ。」
俺は散々考え込んだ挙句、極長室に姿を現した。
「このままじゃ、俺と凛月の溝は深まるばかりだ。アンタなら知っているだろ? 俺はなぜ未知術まだしも、能力すら使えないんだ? 」
坂上は眉を上下させると、背もたれに腰掛け、腕を組んだ。
「ん? 随分と凛月に対して入れ込むじゃ無いか? コレも、魔具の代償の現れかな? 」
俺は彼の机に勢い良く手をつく。
「俺の身に何が起こっている? 答えろ!! 」
坂上は少し考えてから答えた。
「キミの体は、陽電子のバランスと虚数電子のバランスが不安定なんだ。」
「だから呪具を使うための虚数電子と、魔具を使うための陽電子が互いに干渉し、互いの能力発動を妨げている。」
その理屈はおかしい。なぜなら俺は、魔具と契約した今も、虚数電子をある程度使いこなせているからだ。
原因がもっと別の場所にあることは分かっていた。
「呪術は問題なく使えるが? 」
「なんでだろうね? 」
コイツは!! 俺にも分かった。彼が何かを隠していることを。
だが、焦燥している俺にとって、そんな問題はどうでも良かった。
俺の求めるものは聖を殺すための能力。俺の身体の秘密ではない。
「好きに使えよ。鬼に魂を売った。今更戻れる場所なんてないさ。」
坂上は両手をパンと叩いた。
「君ならそう言ってくれると思ったよ。」
俺は、ラボのような場所に連れて行かれると、そこで研究者たちに身体をいじくりまわされた。
そこでは、身体に導体を通す必要があるだの、導体がイオンとして血中に溶け出し、身体に悪影響を及ぼすことや、溶け出した導体を定期的に補充しなければならないとかいう意味の分からないことを散々話し込んだ後、俺のRNAで作ったタンパク質でコーティングするなどと言う結論に至ったらしい。
手術は二十時間にも及んだ。俺は後頭部から両手両足までをパックリ開かれ、中に導線を埋め込まれたらしい。
というのも、その時は麻酔を撃たれていたので、よく覚えていない。
というか、人間用の麻酔は効かず、馬専用のものを使われたらしい。
そっちの方が衝撃的だった。
目を覚ました俺は、七日間程度、身体を満足に動かすことが出来なかった。
また血中のイオン濃度が変化し、ふらつくこともあった。
八日目、身体の違和感はさっぱり消え去っていた。
俺は悲田院内を探し回り、凛月の痕跡を追う。
俺は中庭で花を見つめている彼女を見た。
気まずい。
そういえば、あの試合の後、黙って姿を消してしまった。
せめて一言何か言っておけば良かったと思うも後の祭りだ。
「慎二、どこに行っちゃったんだろ? 」
「どうしよう、このままどっか行っちゃったら。」
自分の人格がクソッタレだということは自分で嫌というほど分かっていたが……
「俺はなんて奴だ。」
俺は2階から中庭に飛び降りると、彼女の前まで走って行った。
「探したぞ凛月。」
「慎二!! 」
彼女は武器の姿になると、再び俺の腰に収まった。
---もう会えないんじゃないかって---
「悪い、身体の調整をしてもらっていたんだ。もう虚数電子をお前の身体に流さなくて良いようにな。」
---ごめんね慎二---
なんかズルいやつだ。俺が一番に発しないといけない言葉を、簡単に吐きやがる。
俺は謝るタイミングを失った。
---なんか懐かしい感じ---
懐かしい。そうだ。俺も彼女と出会って間もない訳では無いような気がする。
俺は彼女に父親のことを聞こうと、口を開こうとする。
敵襲 敵襲
悲田院内、いや、都内に警鐘が鳴り響いた。
* * *
極長は窓から慎二を見下ろし、一人呟いた。
「さぁチュートリアルの始まりだ。」
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