神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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復讐鬼

感情は食べ物

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 燃える村
 殺される大人たち
 犯される女たち。
 子供たちは、聖たちのゲームに使われ、あるものは殺されて、あるものは犯され、あるものは互いに刃を握らされて、片方が動かなくなるまで殺し合いを続けさせられた。
 勝った子供が殺されるところで、俺は意識を取り戻し、自分の家へと急ぐ。
「母さん!! 母さん!! 」
 家の障子を開けると、やっぱり母さんは犯されていた。
 コレは俺の記憶だ。俺の全ての始まり。
 だが俺の記憶と違うところは……
 母さんが快楽を貪っていたところだ。
「いいのぉ いいのぉ 人間とは。」
 母さんのふりをしたソレは、こちらに振り向く。
「やぁ坊、またあったのぉ。」
 コレは記憶でも無く、目の前の女性は母さんでは無い。
「銃鬼。」
 銃鬼は彼女を貪っていた男たちを弾き飛ばし、顔を一つ一つ丁寧に握りつぶすと、立ち上がり、着物を着た。
「なんじゃ、今いいところだったというのに。」
 俺は彼女の着物の袖を掴んで激しく揺すった。
「力をよこせ!! 力がいるんだ俺には!! 」
 銃鬼はニマリと笑うと答えた。
「良いぞ。そちの感情は、甘美だが、しつこく無く、スッキリしていて……それでいて。」
「迷いが無い。」
(彼女は俺の手を振り払う)
「じゃがのお。この世界は、おいそれと力が手に入るほど優しいものでは無いぞ。」
「そんなことぐらい分かっている。早くしろ。」
「ごういんじゃのぉ。じゃが悪くない。その感情もワシが美味しくいただいてやろう。」
 そういうと、彼女は俺の耳元で囁いた。
「坊の感情よりももっと深いところのモノ。魂をいただくとしようかのぉ。」
 俺はヤケクソになって答えた。
「命でも体でもなんでも持っていけ!! 俺に力をよこせ。契約は絶対だ。」
「……そうじゃのぉ久しぶりに肉を食うのも悪くない。」
「おいおい、冗談じゃぞ。ワシはもっと成長した肉が好みじゃからのぉ。」

 俺はこうして現実世界に引き戻された。身体は痛むが、凄まじい速度で再生を開始しているのが分かる。
 視力がはっきりしない。他の器官が、視覚を補填しようと活性化していた。
「そうか……」
 俺が眼を強化出来なかったのは、見ようとしていなかったからではない。
 モノの見方を知らなかったからだ。
 意識を鼻と耳に集中させる。
 色はいらない。
 必要なのはこの世界でいち早く情報を届けられる「赤」と『その先』だ。
 俺は無意識に銃鬼を側頭に当てていた。
---The thing seen in this world is slower than me……---
 長たらしい詠唱を終えた後、銃器のトリガーを引いた。
 世界がモノクロに変わった後、朱色が扇状に広がっていく。
 俺の眼は少し先の未来を見ていた。
 気絶させた水崎が立ち上がり、水の壁を貼ろうとしている。
 琵琶が未知術を発動させようと構えている。
 水崎の後ろでは、灰弩が追撃の準備をしていた。
 骨元が起き上がった俺に反応し、手を伸ばしている。
 哲司は、両手を翳し、無数の鋼の鶴をこちらに向けて放とうとしていた。
---疾風ハヤテ---
 再度脳内に銃弾を撃ち込む。
 超加速した世界で、俺は強化された脚力を使い、一気に水崎の作った壁まで距離を詰めた。
---鬼ノ手デモンズ・クロー---
 虚数電子をまとった左手で壁を切り裂く。虚数電子が、光を吸収し、同時に熱も吸収する。
 左腕が焼けるように熱い。
 対照的に水崎の壁は凍りつき、音もなく砕けさった。
 彼女を再び蹴飛ばすと、後ろの灰弩を鬼の手で氷漬けにする。
 哲司は蹴り飛ばし、羽々斬は右手で殴り飛ばした。
 契約者たちが集まって来ているのが分かる。どうやら、他の訓練兵を「始末」した契約者たちがこちらに向かっているようだ。
 偶然ではない。契約者総出で俺を叩きのめすつもりだ。
「上等だ……やってやろうじゃねえか。」
 俺は契約者たちに急接近すると、一人ずつ殴り飛ばした。
 ゆっくりと流れていく世界で、彼らは殴られたことも認識出来ず、気絶していく。
---流星光底ライトニング---
 俺は目が焼けた。痛くて目が開けられなくなる。
 しまった。コレも馬田の作戦だろう。
 無数の契約者たちが俺に攻撃を加える。
 俺は、そのままバタリと地に落ちた。
 自分の底に眠る力が疼き始めた。そうだ、俺は思い出した。
 俺は食われるのだろう。俺の本質に……
 ふと懐かしい声が聞こえ、俺は正気に戻った。
---rewind---
---去刀サルタチ---
「よぉ。試験会場はここで間違いないな。」
「途中入室は認められるか? 」
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