神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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復讐鬼

人間兵器たち

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 鼓膜が破れるような音、振り返ると、俺のいた場所に巨大なクレーターが出来ていた。
 琵琶だ。
「よお。久しぶりだな慎二。」
 琵琶だけではない、俺は複数の契約者に囲まれている。
 迂闊だった。
 心を落ち着かせるよりも、この試験が「公平に」行われないことも考慮し、手を打っておくべきだっただろう。
 だが、過去を悔やんでいても何も始まらない。何も成し遂げられない。何も殺せないまま終わってしまう。
---水喰破イーター・ブレイク---
 前方から凄まじい水圧が俺を襲う。回避を試みるも、攻撃が右耳に当たり、一瞬にして消し飛んだ。
 切り口が一瞬にして塞がり、治癒が始まるが、しばらく右耳は使えない。
 俺はヤケクソになり、銃鬼を側頭に当てる。
---疾風ハヤテ---
 俺は視界を確保するために飛び上がった。
---空波真水ハイドライド---
 爆発音と共に、圧縮された空気が俺の足元をかすった。
「オイ、水崎!! 灰弩!! あぶねえだろ。」
 俺の背後から琵琶の声が聞こえる。
 声の位置から察するに、琵琶は最初に攻撃を放ってきたところから、それほど動いていないように思える。
 問題は他の二人だ。移動して俺の視界の外から再度攻撃を仕掛けてくるであろう。
---風神砲---
 そう言っている間にも、俺は他の契約者から攻撃を受けていた。
 視界が広くなるということは、向こうからも見つかりやすくなるということ。
 俺は恰好の的だ。
 だが、その表現はおかしい。向こうには、人間レーダーが少なくとも二人いるのだから。
 そのため、隠れているより、こうやって姿を現した方が状況確認には勝手が良い。
 上空から見渡すに五人。
 契約者五人相手に、魔術を少し齧ったような三流呪術師が勝てるわけがない。
 このまま身体強化魔術で二日間振り切るか? 
いや、それは合理的ではない。
 俺も鬼の子とはいえ、体力に限界がある。
 対して向こうは、他の契約者と代わり代わりに俺を追うことが出来る。
 頭数が足りない。
 足りていないのはそれだけではない。
 先述した能力と、視野と、知識と……
 どこから手をつけるべきだろうか??
 ええい、考え込むのは俺の悪い癖だ。どうにかこの契約者たちを無力化させなくてはならない。
 もたもたしていると、他の契約者たちもやって来る。
 聴覚強化……いやこれは辞めておこう。
 視覚は……ダメだまだ術式が完成していない。
 となれば俺が強化すべき感覚は決まっていた。
 臭覚。
 俺は全意識を鼻腔へと集中させる。 
 息を大きく吸い込む。
---狼鼻ロウビ---
---翔佳同音ショウケイドウオン---
 俺が銃鬼を側頭に当て、呪術を発動させたと同時に、凄まじい音圧が周囲を震わせた。
 俺は、左耳を左手で塞ぐ。
(右耳は、さっき削ぎ落とされた。)
「琵琶!! それやる前に、合図してって言ったでしょ!! 」
「本当にお前のそういうとこ嫌い。」
 各契約者から非難の声が上がった。
 俺は、その声で彼らの位置を特定し、固定撃破を狙う。
 疾風で強化された脚力で地面に着地すると、まずは水崎という契約者の後頭部を殴りつけ、意識を飛ばす。
 それを見た風の契約者が、未知術を飛ばしてくるが、それを避ける。
 避けた先には、先程、圧縮した空気を飛ばしてきた少女がいた。
 少女は紙一重、未知術を交わす。
 俺は確信した。
 彼らはまるで統率が取れていない。
 というのも、統率を取る必要性が、まるで無いからだ。
「いける。」
 風の契約者が、耳を塞いでいるうちに、回し蹴りを叩き込もうとするが。
"背後から術式の臭いがする。"
 俺は慌てて風の契約者から離れる。
 琵琶の未知術だ。だが彼の未知術は俺には当たらず、再び風の契約者へと音波が飛んでいく。
---寸鉄殺人スラッシャー---
 彼女へと向かう音の塊を、鈍い灰色が切り裂いた。
「オイ、琵琶。」
 俺と同じぐらいか、少し年上ぐらいの少年が、琵琶を睨んだ。
「わ、悪かったよ哲司。」
 すると哲司というその少年は、琵琶の謝罪を無視すると、「誰か」に話しかけた。
「おい、馬田。頼む。コッチは想定以上に手こずってるみたいだ。」
 哲司がそういうと、起きている契約者たちは一斉に動き出した。
「おい、羽々斬!! しっかりしろ。」
 哲司が風の契約者を揺すると、羽々斬という風の契約者は、手のひらに風を集め始めた。
 風の影響で周囲の木々が軋み始め、やがて根こそぎ持っていかれる。
「何をしようとしているんだ? 」
 わざわざ俺のために、視野を広げてくれたというのか?
 そういう馬田の心意気か?
 が、彼の狙いはすぐに分かった。
 鼻が効かない……
 羽々斬が起こした風によって、木々だけでなく、臭いまで飛ばされたようだ。
 鼻がおかしくなり始めたので、俺は慌てて狼鼻を切った。
「グキッ。」
 一瞬何が起こったのか分からなかった。
 が、背中で起こった感触はどんどん大きくなっていき、やがて痛みへと変わった。
「がは。」
 グレート・フレームの骨元か……
 彼は二発目の拳で、俺を回転させると、そのまま腹に蹴りをぶち込んでくる。
 反動でぶっ飛ぶ俺に、鋭い鋼が回転しながら飛んでくる。
 哲司の出したソレは、俺の脇腹と胸を切り裂く。
 俺は散々転がりながら、根が抜けかけている大樹へと激突した。
 灰弩と呼ばれていた少女が俺に向けて、水素砲撃を加えようとする。
 このような危機的状況に陥っても俺の心にあったのは……
「勝ちたい。」
 という気持ちだけだ。そうだ、力が欲しい。何かを破壊する力が……
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