93 / 109
復讐鬼
虚数電子
しおりを挟む
「調子はどうですか?隊#長
__・__#。」
「辞めてくれ。俺はもう隊長じゃない。」
二者は、極東の摩天楼から書物を開いている桐生慎二を見下ろしていた。
「慎二に会いたいですか? 」
男は首を振った。
「慎二との接触を禁じているのはお前らだろ。」
「それに、俺にアイツと会う権利なんて無いさ。」
「隊長は私が憎いですか? 」
男は一瞬戸惑った。一呼吸置いてから答える。
「別に恨んでないんていないさ。美鬼が死んだのも、慎二があんな風になってしまったのも、全て半端者である俺の責任なんだ。俺が守るものと守らないものの線引きをしなかったのが悪い。
「結果、村が襲われ、美鬼は死んだ。」
「でも……」
「お前が極長を裏切り、俺たちと共に戦ってくれたら、もっと別の道を歩めたかもしれない。」
七宝は自分を責めた。許してもらおうとしている自分に。反吐が出そうだ。原因はこの男では無い。自分がもう少し精神的に強ければ、このような最悪の事態を回避できたかもしれないのだ。
「一週間後は最終試験だな。息子は無事通過出来そうか? 」
「慎二の封印、解いてあげないんですか? 」
「いや、今のアイツでは自分の中の鬼影を抑えられないだろう。然るべき時がくれば、解いてやろうと思う。あのままじゃ、未知術も、ろくに使えないからな。」
* * *
C+の情報閲覧権を手に入れた俺は、あれから色々なことを調べた。
一つはこの歪な形をした呪具についてである。
この銃のような形をした呪具は「銃鬼」と言うらしい。
使用者から虚数電子を吸い込み、任意で呪術を発動させる魔術媒体だそうだ。
もう一つは、母さんが極東に来たことがあったと言うこと。
母さんは何も教えてくれなかった。
俺が母さんと父さんのことを聞くと、彼女は
「父さんはみんなの英雄なのよ。」
とだけ答え、はぐらかすだけだった。
その他、俺は最終試験へ向けて、虚数電子についての文献を読んだ。
虚数電子とは、通常の電子と全く逆の性質を持つ物質であり、工夫することで通常の電子の代わりを担える他、脳に打ち込むことで、さまざまな身体強化が見込めるらしい。
俺が無意識に使っていた身体強化呪術や、聴覚強化もその類いだ。
俺は銃鬼を使い、視覚強化の呪術を編み出すことに専念していた。
と言うものの、俺は魔術というものをまるで理解していなかったので「どのように」術式を編めば良いか分からなかった。
術式はイメージだ。だが、大抵の術師は、言葉にしないと術式のイメージを組めない。
俺は一番最初の壁に絶賛ぶち当たり中と言うわけだ。
俺は図書館の椅子に腰掛け、鉛筆を鼻で挟み、腕を組むと一人悩んでいた。
「槍馬どうしてっかな? 」
* * *
「一週間後の最終試験の件についてですね。」
亀田は極長室に入ると、すぐに坂上へと質問した。
「そうだ。君は察しが良くて助かる。」
「鍵垢は七人、既に決まっている。」
「その者たちは、契約者たちに襲わせないようにしろ。」
亀田はため息をついた。
「なぜにこのような方法を取られるのですか? 」「鍵穴を有する人間が全て決まっているなら、無駄死も時間の浪費も避けられるはずですが? 」「それにこのような出来レースに無駄な血税を割く理由がまるで分かりません。」
坂上は答えた。
「八人目。」
亀田は首を振った。
「流石に私も訳が分からなくなって来ました。貴方は彼を追い詰めて、何をしようとしているのですか? 彼は極東の戦士として、順調に力をつけつつあります。」
「亀田くん。奴はな、内に強大な力を封印されているんだ。そのせいで満足に慎二郎の力も使えない。」
亀田は震えの止まらない手を必死に押さえていた。
「彼自身の内に眠る本当の鬼を目覚めさせるんですね。」
「そうだよ君は理解が早くて助かる。早速、契約者たちに命令したまえ。」
「『全員で慎二を殺しにかかれ。』と」
__・__#。」
「辞めてくれ。俺はもう隊長じゃない。」
二者は、極東の摩天楼から書物を開いている桐生慎二を見下ろしていた。
「慎二に会いたいですか? 」
男は首を振った。
「慎二との接触を禁じているのはお前らだろ。」
「それに、俺にアイツと会う権利なんて無いさ。」
「隊長は私が憎いですか? 」
男は一瞬戸惑った。一呼吸置いてから答える。
「別に恨んでないんていないさ。美鬼が死んだのも、慎二があんな風になってしまったのも、全て半端者である俺の責任なんだ。俺が守るものと守らないものの線引きをしなかったのが悪い。
「結果、村が襲われ、美鬼は死んだ。」
「でも……」
「お前が極長を裏切り、俺たちと共に戦ってくれたら、もっと別の道を歩めたかもしれない。」
七宝は自分を責めた。許してもらおうとしている自分に。反吐が出そうだ。原因はこの男では無い。自分がもう少し精神的に強ければ、このような最悪の事態を回避できたかもしれないのだ。
「一週間後は最終試験だな。息子は無事通過出来そうか? 」
「慎二の封印、解いてあげないんですか? 」
「いや、今のアイツでは自分の中の鬼影を抑えられないだろう。然るべき時がくれば、解いてやろうと思う。あのままじゃ、未知術も、ろくに使えないからな。」
* * *
C+の情報閲覧権を手に入れた俺は、あれから色々なことを調べた。
一つはこの歪な形をした呪具についてである。
この銃のような形をした呪具は「銃鬼」と言うらしい。
使用者から虚数電子を吸い込み、任意で呪術を発動させる魔術媒体だそうだ。
もう一つは、母さんが極東に来たことがあったと言うこと。
母さんは何も教えてくれなかった。
俺が母さんと父さんのことを聞くと、彼女は
「父さんはみんなの英雄なのよ。」
とだけ答え、はぐらかすだけだった。
その他、俺は最終試験へ向けて、虚数電子についての文献を読んだ。
虚数電子とは、通常の電子と全く逆の性質を持つ物質であり、工夫することで通常の電子の代わりを担える他、脳に打ち込むことで、さまざまな身体強化が見込めるらしい。
俺が無意識に使っていた身体強化呪術や、聴覚強化もその類いだ。
俺は銃鬼を使い、視覚強化の呪術を編み出すことに専念していた。
と言うものの、俺は魔術というものをまるで理解していなかったので「どのように」術式を編めば良いか分からなかった。
術式はイメージだ。だが、大抵の術師は、言葉にしないと術式のイメージを組めない。
俺は一番最初の壁に絶賛ぶち当たり中と言うわけだ。
俺は図書館の椅子に腰掛け、鉛筆を鼻で挟み、腕を組むと一人悩んでいた。
「槍馬どうしてっかな? 」
* * *
「一週間後の最終試験の件についてですね。」
亀田は極長室に入ると、すぐに坂上へと質問した。
「そうだ。君は察しが良くて助かる。」
「鍵垢は七人、既に決まっている。」
「その者たちは、契約者たちに襲わせないようにしろ。」
亀田はため息をついた。
「なぜにこのような方法を取られるのですか? 」「鍵穴を有する人間が全て決まっているなら、無駄死も時間の浪費も避けられるはずですが? 」「それにこのような出来レースに無駄な血税を割く理由がまるで分かりません。」
坂上は答えた。
「八人目。」
亀田は首を振った。
「流石に私も訳が分からなくなって来ました。貴方は彼を追い詰めて、何をしようとしているのですか? 彼は極東の戦士として、順調に力をつけつつあります。」
「亀田くん。奴はな、内に強大な力を封印されているんだ。そのせいで満足に慎二郎の力も使えない。」
亀田は震えの止まらない手を必死に押さえていた。
「彼自身の内に眠る本当の鬼を目覚めさせるんですね。」
「そうだよ君は理解が早くて助かる。早速、契約者たちに命令したまえ。」
「『全員で慎二を殺しにかかれ。』と」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
蒼海のシグルーン
田柄満
SF
深海に眠っていた謎のカプセル。その中から現れたのは、機械の体を持つ銀髪の少女。彼女は、一万年前に滅びた文明の遺産『ルミノイド』だった――。古代海洋遺跡調査団とルミノイドのカーラが巡る、海と過去を繋ぐ壮大な冒険が、今始まる。
毎週金曜日に更新予定です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【なろう440万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

グラッジブレイカー! ~ポンコツアンドロイド、時々かたゆでたまご~
尾野 灯
SF
人類がアインシュタインをペテンにかける方法を知ってから数世紀、地球から一番近い恒星への進出により、新しい時代が幕を開ける……はずだった。
だが、無謀な計画が生み出したのは、数千万の棄民と植民星系の独立戦争だった。
ケンタウリ星系の独立戦争が敗北に終ってから十三年、荒廃したコロニーケンタウルスⅢを根城に、それでもしぶとく生き残った人間たち。
そんな彼らの一人、かつてのエースパイロットケント・マツオカは、ひょんなことから手に入れた、高性能だがポンコツな相棒AIノエルと共に、今日も借金返済のためにコツコツと働いていた。
そんな彼らのもとに、かつての上官から旧ケンタウリ星系軍の秘密兵器の奪還を依頼される。高額な報酬に釣られ、仕事を受けたケントだったが……。
懐かしくて一周回って新しいかもしれない、スペースオペラ第一弾!

北の森の大蛇
弐式
ファンタジー
王国の北には森が広がっている。その中には大蛇のような魔獣がいるという。魔獣討伐のために森に足を踏み入れた二人の男。男たちは魔獣と出会うが、その結果起こることをまだ知らなかった。
35,000文字くらいの短篇になる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる