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復讐鬼
リンチ
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「馬田は、摩天楼の頂上で気絶した車夫を寝かせて、構える。」
「先生? 今日の訓練は人探しじゃなかったんですか? 街中でカーチェイスなんておっ始めちゃって、もう俺の勝ちで良いですよね? 」
「ターゲットにもそうやって言い訳をするのか? 」
「なるほど、あなたをボコボコにするまでが今回の訓練ってわけですか。」
十日間も謹慎していたのだ。極東のおかしな思想に侵されかけていた俺は、どこかにその吐口を求めていた。
何かを壊したい。
やり場のない憎しみをぶつけたい。
馬田を叩きのめしたい。
俺は腰から支給用のナイフを引き抜くと、逆手に持ち、一気に距離を詰める。
いくら思考が読めるとはいえども、反応できなければ意味がない。
頭脳戦では、明らかに向こうの方に分がある。
「なら、考える隙を与えるのは、自殺行為だよなぁ。」
俺はそう叫び、彼へと突進した。
---agility rabbit---
馬田は、軽く跳躍すると、俺の首に回し蹴りを放つ。
あまりの速さだったため、構える時間が無かった。
軽く視界が震えた後、屋上の端ギリギリまで飛ばされる。
事態を理解した俺は、紙一重建物の角を掴むと、勢をつけて、壁を走り出した。
"思い出せ!! 奴がやっていた壁走りを!! "
体感を意識する、足でキッチリ壁を捉える。
馬田の後ろに回り込んだ俺は、左手で駆け上がろうとする。
が、それを見越した馬田が、上から氷の刃を逆手に持ち、俺の喉笛に突き立てようとする。
俺は右手のナイフで、それを外側に弾き返した。
反動で脆いナイフが砕け散る。
俺たちは、瓦屋根を破壊しながら、猫のようになり、反転を繰り返した。
地上で着地すると、地面を蹴り、再び刃を交える。
俺は二本目のナイフを腰から引き抜き、今度はナイフを慎重に扱った。
もう予備のナイフは存在しない。
このナイフが砕け散ることは、すなわち敗北を意味する。
「うおおお!! 」
後ろから鉄パイプを持った源が馬田に飛びかかった。
彼はそれを察知すると、手で掴み、彼ごと背負い投げる。
「おい、源!! 無茶をするな。」
「んなぁ!! お前のせいで俺が前線送りになったらどーすんだ!! 」
「俺はなぁ。」「コイツを倒して 出世して。」
「楽に暮らすんだぁ。」
再び立ち上がり、鉄パイプを持って飛びかかる彼と呼応し、俺も馬田へと飛びかかった。
「「うわッ」」
俺も源も弾き飛ばされる。
が、馬田も無傷というわけでは無かった。
"鼻血? "
源鉄パイプが当たったのか?
いや、違う。
他の訓練兵たちが俺たちに追いついた。
「みんなで馬田を囲え!! 奴は能力を使いすぎると鼻血が出るんだ!! 」
「そんな卑怯な。」「俺はやるぞ、契約者になるんだ。」「教官お許しを。」
みんなが揉みくちゃになって馬田を押さえる。
「ゴーンゴーン。」
暁九つの鐘だ。
俺たちは無事、任務をこなすことが出来た。
あれからというものの、俺にはC+の情報閲覧権が与えられた。
源はと言うと、自分に契約者適性である鍵穴がないことを知り、さっさと観戦武官課に編入してしまった。
後一週間で最終試験だ。
半年前、二百人程度だった訓練兵は辞退や他の課への編入者が増え、五十人程度になっていた。
そのうち、契約者になれるのは十人程度、狭き門だ。
だが、俺は諦めるわけにはいかなかった。
奴に復讐を果たすまでは。
「先生? 今日の訓練は人探しじゃなかったんですか? 街中でカーチェイスなんておっ始めちゃって、もう俺の勝ちで良いですよね? 」
「ターゲットにもそうやって言い訳をするのか? 」
「なるほど、あなたをボコボコにするまでが今回の訓練ってわけですか。」
十日間も謹慎していたのだ。極東のおかしな思想に侵されかけていた俺は、どこかにその吐口を求めていた。
何かを壊したい。
やり場のない憎しみをぶつけたい。
馬田を叩きのめしたい。
俺は腰から支給用のナイフを引き抜くと、逆手に持ち、一気に距離を詰める。
いくら思考が読めるとはいえども、反応できなければ意味がない。
頭脳戦では、明らかに向こうの方に分がある。
「なら、考える隙を与えるのは、自殺行為だよなぁ。」
俺はそう叫び、彼へと突進した。
---agility rabbit---
馬田は、軽く跳躍すると、俺の首に回し蹴りを放つ。
あまりの速さだったため、構える時間が無かった。
軽く視界が震えた後、屋上の端ギリギリまで飛ばされる。
事態を理解した俺は、紙一重建物の角を掴むと、勢をつけて、壁を走り出した。
"思い出せ!! 奴がやっていた壁走りを!! "
体感を意識する、足でキッチリ壁を捉える。
馬田の後ろに回り込んだ俺は、左手で駆け上がろうとする。
が、それを見越した馬田が、上から氷の刃を逆手に持ち、俺の喉笛に突き立てようとする。
俺は右手のナイフで、それを外側に弾き返した。
反動で脆いナイフが砕け散る。
俺たちは、瓦屋根を破壊しながら、猫のようになり、反転を繰り返した。
地上で着地すると、地面を蹴り、再び刃を交える。
俺は二本目のナイフを腰から引き抜き、今度はナイフを慎重に扱った。
もう予備のナイフは存在しない。
このナイフが砕け散ることは、すなわち敗北を意味する。
「うおおお!! 」
後ろから鉄パイプを持った源が馬田に飛びかかった。
彼はそれを察知すると、手で掴み、彼ごと背負い投げる。
「おい、源!! 無茶をするな。」
「んなぁ!! お前のせいで俺が前線送りになったらどーすんだ!! 」
「俺はなぁ。」「コイツを倒して 出世して。」
「楽に暮らすんだぁ。」
再び立ち上がり、鉄パイプを持って飛びかかる彼と呼応し、俺も馬田へと飛びかかった。
「「うわッ」」
俺も源も弾き飛ばされる。
が、馬田も無傷というわけでは無かった。
"鼻血? "
源鉄パイプが当たったのか?
いや、違う。
他の訓練兵たちが俺たちに追いついた。
「みんなで馬田を囲え!! 奴は能力を使いすぎると鼻血が出るんだ!! 」
「そんな卑怯な。」「俺はやるぞ、契約者になるんだ。」「教官お許しを。」
みんなが揉みくちゃになって馬田を押さえる。
「ゴーンゴーン。」
暁九つの鐘だ。
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あれからというものの、俺にはC+の情報閲覧権が与えられた。
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後一週間で最終試験だ。
半年前、二百人程度だった訓練兵は辞退や他の課への編入者が増え、五十人程度になっていた。
そのうち、契約者になれるのは十人程度、狭き門だ。
だが、俺は諦めるわけにはいかなかった。
奴に復讐を果たすまでは。
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