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復讐鬼
謹慎刑
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「こんにちは、僕が極東軍の最高司令官、坂上頼次だ。」
「いやー困るよ、こんな事されたら。軍は個人ではなく集団なんだよ。苦しい思いをしているのは君一人じゃないんだから。」
俺は今極長室にいる。
そこで両腕に手枷をつけられて、立たされている。
「……」
俺は何も答えない。だって俺は悪くないのだから。
こういう相手には黙っているのが一番だ。
そういったことを本能的に感じていた。
「それにしてもコレ、こんなオモチャを院に持ち込むなんてね。」
「それにしても君、面白いね。いやー前代未聞の事件だ。まざか教官の命に叛いて、逆に殴り始めるなんてね。どこぞの各式講師もビックリだよ。」
"饒舌な奴だな。"
「お陰で亀田吉暎上等兵は、訓練兵から、たびたびいたずらを受けるようになった。」
「バカな人間もいるもんでね。入隊したてのヒヨッコが、上等兵を倒したということを聞くと……」
「いたずら、不意打ち、果たし状のオンパレードだよ。」
「どうする? キミこのままだと退学だよ。」
流石に俺も、退学するわけにはいかない。
ここで奴に鎌をかけることにした。
「呪術と契約し、呪術使いになった人間には、『鍵穴』が出来るのでしょうか? 」
しばしの沈黙。
極長は急に笑い出した。
「何を言い出すのかと思えば。やっぱりキミは面白いな。」
「『契約者と呪術使いが真逆の性質を持つ』こと、コレは訓練兵なら誰でも知っていることだ。」
「だが、呪具の代償で空いた穴を魔具で埋めるという発想を思いついたのは、訓練兵では君が初めてだろうな。」
俺は最後の賭けに出る。
「今の俺の体には『鍵穴』がある。このような顔人間を、みすみす手放す気か? 」
極長は急に机をバンバン叩き出し、腹を抱えて笑い出した。
「ハハハハ。今度は脅しかな? 」
(彼は真顔になる。)
そして低い声で囁いた。
「大人を舐めるなよクソガキ。お前の代わりなんていくらでもいる。居ないなら作ることができる。」
「今回は十日間の謹慎刑ののち解放してやる。」
そして、彼は俺に呪具を放ってきた。
「あと、コレ。」
「取り上げたいところなんだけど、それは出来ないみたいだ。」
「なんか取り上げても、いつのまにか君の手元に帰ってるみたい。気持ち悪いねぇ。」
そのあと俺は、牢屋に放り込まれて、十日間、国粋主義者の肥溜めのような本を、読まされ続けた。
* * *
「派手にやったね。」
亀田は、全身包帯ぐるぐる巻きになり、松葉杖をついていた。
「まざか、魔術の原理を理解しただけで呪術を発現させるとは……」
坂上は首を傾げた。
「私も正直驚いたよ。契約者だって、原理を理解したところで、皆が皆、すぐに未知術を使えたわけではない。」
「やはり紅葉御前の子供だな。」
「申し訳ございません閣下。」
亀田は深々と頭を下げる。
「任務を忠実にこなすのはキミの長所ではあるが……」
「やりすぎるのは良くない。」
「以後気をつけます。」
坂上は首を横に振った。
「いやいや、彼は順調に兵士としての資質を獲得しつつある。引き続き頼むよ。私の目と耳よ。」
「はっ!! 」
亀田はぎこちない動きで、極長室を後にした。
「コレは面白くなりそうだ。」
「いやー困るよ、こんな事されたら。軍は個人ではなく集団なんだよ。苦しい思いをしているのは君一人じゃないんだから。」
俺は今極長室にいる。
そこで両腕に手枷をつけられて、立たされている。
「……」
俺は何も答えない。だって俺は悪くないのだから。
こういう相手には黙っているのが一番だ。
そういったことを本能的に感じていた。
「それにしてもコレ、こんなオモチャを院に持ち込むなんてね。」
「それにしても君、面白いね。いやー前代未聞の事件だ。まざか教官の命に叛いて、逆に殴り始めるなんてね。どこぞの各式講師もビックリだよ。」
"饒舌な奴だな。"
「お陰で亀田吉暎上等兵は、訓練兵から、たびたびいたずらを受けるようになった。」
「バカな人間もいるもんでね。入隊したてのヒヨッコが、上等兵を倒したということを聞くと……」
「いたずら、不意打ち、果たし状のオンパレードだよ。」
「どうする? キミこのままだと退学だよ。」
流石に俺も、退学するわけにはいかない。
ここで奴に鎌をかけることにした。
「呪術と契約し、呪術使いになった人間には、『鍵穴』が出来るのでしょうか? 」
しばしの沈黙。
極長は急に笑い出した。
「何を言い出すのかと思えば。やっぱりキミは面白いな。」
「『契約者と呪術使いが真逆の性質を持つ』こと、コレは訓練兵なら誰でも知っていることだ。」
「だが、呪具の代償で空いた穴を魔具で埋めるという発想を思いついたのは、訓練兵では君が初めてだろうな。」
俺は最後の賭けに出る。
「今の俺の体には『鍵穴』がある。このような顔人間を、みすみす手放す気か? 」
極長は急に机をバンバン叩き出し、腹を抱えて笑い出した。
「ハハハハ。今度は脅しかな? 」
(彼は真顔になる。)
そして低い声で囁いた。
「大人を舐めるなよクソガキ。お前の代わりなんていくらでもいる。居ないなら作ることができる。」
「今回は十日間の謹慎刑ののち解放してやる。」
そして、彼は俺に呪具を放ってきた。
「あと、コレ。」
「取り上げたいところなんだけど、それは出来ないみたいだ。」
「なんか取り上げても、いつのまにか君の手元に帰ってるみたい。気持ち悪いねぇ。」
そのあと俺は、牢屋に放り込まれて、十日間、国粋主義者の肥溜めのような本を、読まされ続けた。
* * *
「派手にやったね。」
亀田は、全身包帯ぐるぐる巻きになり、松葉杖をついていた。
「まざか、魔術の原理を理解しただけで呪術を発現させるとは……」
坂上は首を傾げた。
「私も正直驚いたよ。契約者だって、原理を理解したところで、皆が皆、すぐに未知術を使えたわけではない。」
「やはり紅葉御前の子供だな。」
「申し訳ございません閣下。」
亀田は深々と頭を下げる。
「任務を忠実にこなすのはキミの長所ではあるが……」
「やりすぎるのは良くない。」
「以後気をつけます。」
坂上は首を横に振った。
「いやいや、彼は順調に兵士としての資質を獲得しつつある。引き続き頼むよ。私の目と耳よ。」
「はっ!! 」
亀田はぎこちない動きで、極長室を後にした。
「コレは面白くなりそうだ。」
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