神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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復讐鬼

良心の呵責

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「待ってくれ慎二!! 」
 なんと声を掛ければ良いのか分からない。全てを失った腐れ縁に、俺はなんで声を掛ければ良いか分からなかった。
 復讐は何も生まない??
 違う。自分自身聖が憎くてしょうがない。俺の父、剣城は、身を挺して村人たちを守ったがために、利き腕を削ぎ落とされた。
 が、全てを奪われた腐れ縁は、どんな憎しみを胸に秘めているのであろうか??
「槍馬……」
 腐れ縁は、振り返り、一瞬立ち止まったようであったが、また一人で歩き出した。
 今、俺が奴にしてやれることなんてない。何にもないんだ。
 なぜだ? 
 俺が無力だからだ。
 坂田家の次期当主。(いや、父さんはもう布津御魂剣を握れない。だから、俺が実質当主だ。)
 坂田槍馬が……
「なぁ、父さん? 」
「なんだ? 槍馬? 」
「八年前、村を救ったのは、俺じゃなくて、慎二なんだろう?? 」
「……そうだ。慎二が鬼の力を使い、お前と村を守った。そのせいで村人たちから疎まれ、その力を慎二郎が封印したが……」
「今度は俺が……」
「父さん。俺に戦い方を教えてくれ。」
 しばしの沈黙。
「ああ、慎二は俺の友人の子供だ。そして、お前の竹馬の友でもあるだろう? 」
「頼むよ父さん。」
 美奈が父さんの前に飛び出す。
「剣城さん……」
「ダメだ。お前はここで隠れて暮らしなさい。極東がお前の存在に気づけば何をされるか分からない。」
「私は……私のせいで村の人たちも、貴方の右腕も……あの子の両親も……」
 父さんは、右肩の切り口をさすった。
「コレは……坂田家の宿命だ。気にやむことはない。」
「慎二郎たちは……」
 そこに爺ちゃんが割り込んだ。
「二人とも、今すぐ道場に来なさい。半年だ。そしたら、すぐに慎二を追い、アイツの顔をぶん殴ってやれ。」
 父さんが爺ちゃんを止めた。
「父さん!! 」
「剣城!! お前は、その腕で、まだ極東に勤めようと言うのか? 無理だ。大急ぎで布津御魂剣の後継者を育てる。異論はないな。」
 父さんの代わりに俺が答えた。
「ありません師範。早速始めましょう。」
 こうして、八つの子供二人の地獄の特訓が始まった。
 
       * * *
 
「慎二は無事村を出たかね? 」
 坂上は、七宝に訊いた。
「あんなことになって、村にいれるわけが無いでしょう。彼はただでさえ争いの火種として村人たちから疎まれていたんです。それに今回の件が重なれば……」
「まぁ村にはもう居られんだろうな。」
 坂上は両手を組んで両肘をついた。
「七宝君。彼は、もうじき契約者試験を受けるな。」
「はい、もちろんです。私たちが何もしなくても向こうから。」
「彼が悲田院の門を叩いたらすぐに、彼を他の人間から孤立させろ。」
 七宝は断固拒否という姿勢を見せた。
「もう…彼はもう十二分に兵士としても、契約者としても機能します。これ以上何をしろと言うのですか?? 」
 坂上は鋭い眼光で七宝を睨んだ。
「鬼才というのは、孤高の上で大成するものだ。彼はこのままでは天才で終わってしまう。」
 七宝は首を振った。
「貴方に!! 貴方に私の気持ちが理解できますか? 」
「慎二郎を殺した(そうとした。)のは私だ。私は一生、部下に親を殺したことを秘密にしながら、生きて行かなければならないんですよ。」
「理解できないね。君は僕じゃないから。」
 七宝は「ガタッ」という音と共に飛び上がった。
「この良心欠落した人格破綻者め!! 」
 七宝が七つの剣を構えていたにも関わらず、坂上は微動だにしなかった。
「まぁ落ち着きたまえ七宝君。」
「もう一度一から冷静になって考えてくれよ。」
 坂上は自分のディスクに脚を上げると、静かに語り始めた。
「私は君に選択肢を出した。」
「慎二郎を殺すか、殺さないかだ。」
「だが君は、彼を殺すことを選んだ。」
 七宝は地の剣で、坂上のディスクワークをひっくり返した。
「私を脅したのは貴方だ!! アレが選択だと?? アレを脅迫と言わずに何という?? 」
 坂上は、背中をパンパン叩くと立ち上がり、倒れた椅子を起こすと、
「亀田君来たまえ。」
 と、慎二郎の元部下を呼んだ。
「何でしょうか? 極長。」
「君に、次の契約者試験の師範を頼みたい。」
「分かりました。」
 そこで七宝が横槍をいれる。
「オイ!! 亀田!! 」
 亀田は、ポーカーフェイスで七宝の方を見た。
「何でしょうか。」
 その言葉が七宝をさらに刺激する。
「お前は、お前は上司がコイツの命令で殺されて、何の感情も抱かないのか?? 」
「慎二郎さんを殺したのは貴方でしょう。私には関係ありません。」
「お、お前!!最初から。」
 そこで坂上がクックックと笑い出した。
「そうだよ七宝君。彼は元々慎二郎の監視役だった男だ。部下とは名ばかりのね。」
「君も気をつけたまえ。君の部下にも私の目と耳がいるかもしれないからね。」
 七宝は怒りに任せて極長室を後にした。
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