82 / 109
復讐鬼
良心の呵責
しおりを挟む
「待ってくれ慎二!! 」
なんと声を掛ければ良いのか分からない。全てを失った腐れ縁に、俺はなんで声を掛ければ良いか分からなかった。
復讐は何も生まない??
違う。自分自身聖が憎くてしょうがない。俺の父、剣城は、身を挺して村人たちを守ったがために、利き腕を削ぎ落とされた。
が、全てを奪われた腐れ縁は、どんな憎しみを胸に秘めているのであろうか??
「槍馬……」
腐れ縁は、振り返り、一瞬立ち止まったようであったが、また一人で歩き出した。
今、俺が奴にしてやれることなんてない。何にもないんだ。
なぜだ?
俺が無力だからだ。
坂田家の次期当主。(いや、父さんはもう布津御魂剣を握れない。だから、俺が実質当主だ。)
坂田槍馬が……
「なぁ、父さん? 」
「なんだ? 槍馬? 」
「八年前、村を救ったのは、俺じゃなくて、慎二なんだろう?? 」
「……そうだ。慎二が鬼の力を使い、お前と村を守った。そのせいで村人たちから疎まれ、その力を慎二郎が封印したが……」
「今度は俺が……」
「父さん。俺に戦い方を教えてくれ。」
しばしの沈黙。
「ああ、慎二は俺の友人の子供だ。そして、お前の竹馬の友でもあるだろう? 」
「頼むよ父さん。」
美奈が父さんの前に飛び出す。
「剣城さん……」
「ダメだ。お前はここで隠れて暮らしなさい。極東がお前の存在に気づけば何をされるか分からない。」
「私は……私のせいで村の人たちも、貴方の右腕も……あの子の両親も……」
父さんは、右肩の切り口をさすった。
「コレは……坂田家の宿命だ。気にやむことはない。」
「慎二郎たちは……」
そこに爺ちゃんが割り込んだ。
「二人とも、今すぐ道場に来なさい。半年だ。そしたら、すぐに慎二を追い、アイツの顔をぶん殴ってやれ。」
父さんが爺ちゃんを止めた。
「父さん!! 」
「剣城!! お前は、その腕で、まだ極東に勤めようと言うのか? 無理だ。大急ぎで布津御魂剣の後継者を育てる。異論はないな。」
父さんの代わりに俺が答えた。
「ありません師範。早速始めましょう。」
こうして、八つの子供二人の地獄の特訓が始まった。
* * *
「慎二は無事村を出たかね? 」
坂上は、七宝に訊いた。
「あんなことになって、村にいれるわけが無いでしょう。彼はただでさえ争いの火種として村人たちから疎まれていたんです。それに今回の件が重なれば……」
「まぁ村にはもう居られんだろうな。」
坂上は両手を組んで両肘をついた。
「七宝君。彼は、もうじき契約者試験を受けるな。」
「はい、もちろんです。私たちが何もしなくても向こうから。」
「彼が悲田院の門を叩いたらすぐに、彼を他の人間から孤立させろ。」
七宝は断固拒否という姿勢を見せた。
「もう…彼はもう十二分に兵士としても、契約者としても機能します。これ以上何をしろと言うのですか?? 」
坂上は鋭い眼光で七宝を睨んだ。
「鬼才というのは、孤高の上で大成するものだ。彼はこのままでは天才で終わってしまう。」
七宝は首を振った。
「貴方に!! 貴方に私の気持ちが理解できますか? 」
「慎二郎を殺した(そうとした。)のは私だ。私は一生、部下に親を殺したことを秘密にしながら、生きて行かなければならないんですよ。」
「理解できないね。君は僕じゃないから。」
七宝は「ガタッ」という音と共に飛び上がった。
「この良心欠落した人格破綻者め!! 」
七宝が七つの剣を構えていたにも関わらず、坂上は微動だにしなかった。
「まぁ落ち着きたまえ七宝君。」
「もう一度一から冷静になって考えてくれよ。」
坂上は自分のディスクに脚を上げると、静かに語り始めた。
「私は君に選択肢を出した。」
「慎二郎を殺すか、殺さないかだ。」
「だが君は、彼を殺すことを選んだ。」
七宝は地の剣で、坂上のディスクワークをひっくり返した。
「私を脅したのは貴方だ!! アレが選択だと?? アレを脅迫と言わずに何という?? 」
坂上は、背中をパンパン叩くと立ち上がり、倒れた椅子を起こすと、
「亀田君来たまえ。」
と、慎二郎の元部下を呼んだ。
「何でしょうか? 極長。」
「君に、次の契約者試験の師範を頼みたい。」
「分かりました。」
そこで七宝が横槍をいれる。
「オイ!! 亀田!! 」
亀田は、ポーカーフェイスで七宝の方を見た。
「何でしょうか隊長。」
その言葉が七宝をさらに刺激する。
「お前は、お前は上司がコイツの命令で殺されて、何の感情も抱かないのか?? 」
「慎二郎さんを殺したのは貴方でしょう。私には関係ありません。」
「お、お前!!最初から。」
そこで坂上がクックックと笑い出した。
「そうだよ七宝君。彼は元々慎二郎の監視役だった男だ。部下とは名ばかりのね。」
「君も気をつけたまえ。君の部下にも私の目と耳がいるかもしれないからね。」
七宝は怒りに任せて極長室を後にした。
なんと声を掛ければ良いのか分からない。全てを失った腐れ縁に、俺はなんで声を掛ければ良いか分からなかった。
復讐は何も生まない??
違う。自分自身聖が憎くてしょうがない。俺の父、剣城は、身を挺して村人たちを守ったがために、利き腕を削ぎ落とされた。
が、全てを奪われた腐れ縁は、どんな憎しみを胸に秘めているのであろうか??
「槍馬……」
腐れ縁は、振り返り、一瞬立ち止まったようであったが、また一人で歩き出した。
今、俺が奴にしてやれることなんてない。何にもないんだ。
なぜだ?
俺が無力だからだ。
坂田家の次期当主。(いや、父さんはもう布津御魂剣を握れない。だから、俺が実質当主だ。)
坂田槍馬が……
「なぁ、父さん? 」
「なんだ? 槍馬? 」
「八年前、村を救ったのは、俺じゃなくて、慎二なんだろう?? 」
「……そうだ。慎二が鬼の力を使い、お前と村を守った。そのせいで村人たちから疎まれ、その力を慎二郎が封印したが……」
「今度は俺が……」
「父さん。俺に戦い方を教えてくれ。」
しばしの沈黙。
「ああ、慎二は俺の友人の子供だ。そして、お前の竹馬の友でもあるだろう? 」
「頼むよ父さん。」
美奈が父さんの前に飛び出す。
「剣城さん……」
「ダメだ。お前はここで隠れて暮らしなさい。極東がお前の存在に気づけば何をされるか分からない。」
「私は……私のせいで村の人たちも、貴方の右腕も……あの子の両親も……」
父さんは、右肩の切り口をさすった。
「コレは……坂田家の宿命だ。気にやむことはない。」
「慎二郎たちは……」
そこに爺ちゃんが割り込んだ。
「二人とも、今すぐ道場に来なさい。半年だ。そしたら、すぐに慎二を追い、アイツの顔をぶん殴ってやれ。」
父さんが爺ちゃんを止めた。
「父さん!! 」
「剣城!! お前は、その腕で、まだ極東に勤めようと言うのか? 無理だ。大急ぎで布津御魂剣の後継者を育てる。異論はないな。」
父さんの代わりに俺が答えた。
「ありません師範。早速始めましょう。」
こうして、八つの子供二人の地獄の特訓が始まった。
* * *
「慎二は無事村を出たかね? 」
坂上は、七宝に訊いた。
「あんなことになって、村にいれるわけが無いでしょう。彼はただでさえ争いの火種として村人たちから疎まれていたんです。それに今回の件が重なれば……」
「まぁ村にはもう居られんだろうな。」
坂上は両手を組んで両肘をついた。
「七宝君。彼は、もうじき契約者試験を受けるな。」
「はい、もちろんです。私たちが何もしなくても向こうから。」
「彼が悲田院の門を叩いたらすぐに、彼を他の人間から孤立させろ。」
七宝は断固拒否という姿勢を見せた。
「もう…彼はもう十二分に兵士としても、契約者としても機能します。これ以上何をしろと言うのですか?? 」
坂上は鋭い眼光で七宝を睨んだ。
「鬼才というのは、孤高の上で大成するものだ。彼はこのままでは天才で終わってしまう。」
七宝は首を振った。
「貴方に!! 貴方に私の気持ちが理解できますか? 」
「慎二郎を殺した(そうとした。)のは私だ。私は一生、部下に親を殺したことを秘密にしながら、生きて行かなければならないんですよ。」
「理解できないね。君は僕じゃないから。」
七宝は「ガタッ」という音と共に飛び上がった。
「この良心欠落した人格破綻者め!! 」
七宝が七つの剣を構えていたにも関わらず、坂上は微動だにしなかった。
「まぁ落ち着きたまえ七宝君。」
「もう一度一から冷静になって考えてくれよ。」
坂上は自分のディスクに脚を上げると、静かに語り始めた。
「私は君に選択肢を出した。」
「慎二郎を殺すか、殺さないかだ。」
「だが君は、彼を殺すことを選んだ。」
七宝は地の剣で、坂上のディスクワークをひっくり返した。
「私を脅したのは貴方だ!! アレが選択だと?? アレを脅迫と言わずに何という?? 」
坂上は、背中をパンパン叩くと立ち上がり、倒れた椅子を起こすと、
「亀田君来たまえ。」
と、慎二郎の元部下を呼んだ。
「何でしょうか? 極長。」
「君に、次の契約者試験の師範を頼みたい。」
「分かりました。」
そこで七宝が横槍をいれる。
「オイ!! 亀田!! 」
亀田は、ポーカーフェイスで七宝の方を見た。
「何でしょうか隊長。」
その言葉が七宝をさらに刺激する。
「お前は、お前は上司がコイツの命令で殺されて、何の感情も抱かないのか?? 」
「慎二郎さんを殺したのは貴方でしょう。私には関係ありません。」
「お、お前!!最初から。」
そこで坂上がクックックと笑い出した。
「そうだよ七宝君。彼は元々慎二郎の監視役だった男だ。部下とは名ばかりのね。」
「君も気をつけたまえ。君の部下にも私の目と耳がいるかもしれないからね。」
七宝は怒りに任せて極長室を後にした。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

後悔はなんだった?
木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。
「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」
怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。
何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。
お嬢様?
私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。
結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。
私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。
その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの?
疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。
主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。
蒼海のシグルーン
田柄満
SF
深海に眠っていた謎のカプセル。その中から現れたのは、機械の体を持つ銀髪の少女。彼女は、一万年前に滅びた文明の遺産『ルミノイド』だった――。古代海洋遺跡調査団とルミノイドのカーラが巡る、海と過去を繋ぐ壮大な冒険が、今始まる。
毎週金曜日に更新予定です。

シカノスケ
ZERO
SF
これは歴史を変える物語。
ある大学生が戦国時代に来て、戦国武将として成長する物語。
尼子再興軍に入って歴史を変える物語。
熱い一騎討ちや熱い合戦に戦国大名の派閥争いとかも書いていきたいです。
明日も分からぬ戦国を華麗に生きたいくさ人
熱き漢の魂をとくとご覧あれ
神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!
芋多可 石行
SF
主人公 須舞 宇留は、琥珀の巨神アンバーニオンと琥珀の中の小人、ヒメナと共にアルオスゴロノ帝国の野望を食い止めるべく、日々奮闘していた。
最凶の敵、ガルンシュタエンとの死闘の最中、皇帝エグジガンの軍団に敗れたアンバーニオンは、ガルンシュタエンと共に太陽へと向かい消息を絶った。
一方、帝国の戦士として覚醒した椎山と宇留達の行方を探す藍罠は、訪ねた恩師の居る村で奇妙な兄弟、そして琥珀の闘神ゼレクトロンの化身、ヴァエトに出会う。
度重なる戦いの中で交錯する縁。そして心という琥珀の中に閉じ込めた真実が明らかになる時、宇留の旅は、一つの終着駅に辿り着く。
神樹のアンバーニオン 3
絢爛!思いの丈
今、少年の非日常が、琥珀色に輝き始める。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜
天海二色
SF
西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。
珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。
その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。
彼らは一人につき一つの毒素を持つ。
医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。
彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。
これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。
……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。
※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒物劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
特別展「毒」 公式図録
くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ
ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科
その他広辞苑、Wikipediaなど
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる