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復讐鬼
代償:感情
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「うっ、ここは? 」
確か剣城おじさんが新しく連れてきた女の子と遊んでいたような気がする。
名前は確か……美奈だったっけ。確かそういう名前だ。
村が…燃えている??
母さん!!
早く母さんのところに行かないと!!
僕は、家に帰るために、石段を上り始めた。
一段一段。
走っているのに、一向にその距離は埋まらなかった。
早く、早く、お家に帰らないと!!
焦げ臭い。息が苦しい。熱い。
日の手が村の上の方にまで迫ってきているようだ。
息を切らしながら家の前にたち、ドアノブを回した。
そこで、聖たちの唸り声を聞き、慌てて両手で口を押さえる。
僕は、柱の影から恐る恐る彼らを覗いた。
聖たちが、母さんに馬乗りになっている。
母さんは、父さんに助けを求めていた。
「助けてくれ!! 慎二郎!! 」
「ん? 慎二郎? アンタの旦那の名前か? 」
母さんの腕をよく見ると、肘から下が、ナイフのようなもので切断されて、灰になっている。
すると一人の男が、仰向けに押さえつけられている母さん目掛けて腰を突き立てた。
男が腰を突きつけるたびに母さんが、声にならない悲鳴をあげる。
そこで耐えきれなくなった僕は、肘から崩れ落ち、嘔吐した。
「おっとまだガキが残っていやがったか。」
「そいつは、捕まえて、後で売り捌くことにしようぜ。物好きな貴族様がまた買ってくださるよ。」
僕と母さんの目が合う。
「慎二……」
母さんに腰を打ち付けている聖が、隣で下半身マッパの男に命令する。
「おいお前、そこのガキを抑えていろ。後で使わせてやるからよ。」
「ってもよ。早く終わらせろよ。その女、鬼だろ? 灰化が進んでる。俺が使う頃に穴が無くなってたら困るからよ。」
「安心しろよ相棒。そん時は俺がしごいてやる。」
コレが……コレが……神様を慕う者たちのやることなのだろうか……
---やぁ坊。気分はどうじゃ? ---
どこからもなく声が聞こえる。
"良いわけないだろ!! "
その何者か分からない声に対して反射的に答えた。
---残念じゃのお。美鬼はもう助からん---
"もう…良いんだ。僕では、どうにも出来ない。僕は父さんみたいに強くないし、母さんみたいに呪術は使えない。"
---本当にそうかのぉ? ---
"もう…放っておいてくれよ。もう何も感じたく無いし、何も聞きたく無い。『感情なんてなければ、こんなに苦しまずに済むんだ。』"
---そうじゃ。坊、お主は苦しまんで良い。全部ワシに任せれば良いんじゃ---
"なに? 苦しまなくて良いって? 任せれば良いって? "
---契約完了じゃ---
刹那、僕の胸から、頭から、大切な物が抜けていくような感覚に囚われた。
次に痛みと苦痛と、感情が消える。
そしてそれは俺の右手に集まっていき……
小さな鉄管へと姿を変えた。
超常現象的な出来事に、聖たちが一瞬戸惑った。
俺はその一瞬の隙も見逃さない。
彼らを払い除け、回し蹴りで首を吹き飛ばす。
すると、母さんを襲っていた聖たちが、向き直り、こちらに襲いかかってきたので、股の間に銃弾を撃ち込む。
またを押さえる彼の頭に飛び乗り、何度も何度も膝蹴りを加える。
鼻が潰れ、顔が潰れ、頭蓋骨が潰れ脳みそが溢れ出るまで。
もう一人は四肢を切り取り、彼の懐にあったナイフで串刺しにしてから、仲間の溢れ出した脳みそを彼の口にねじ込む。
「慎二……」
その言葉で我に返った。
串刺しにされた男の顎をもぎ取ると、数時間前まで母であったであろう肉塊へと顔を向けた。
「慎二…ご・え・ん・ね。」
そう言って肉塊は灰へと崩れ落ちた。
悲しみも、悔恨も、そこには無かった。
あるのは、憎しみと、憎悪だけだ。
---流石じゃぞ坊!! ワシでも吸いきれんほどの感情じゃあ。もっと!! もっとワシにくれ!! ---
脳に直接響いてくる。
ただただ不快だ。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
頭の中でこの二文字が永遠に響いている。
苦しくは…無い。
ただただ不快だ。
俺は無言で家を後にした。
村の麓を見ると、一人の青年が父の顔を踏みつけていた。
ハラワタが煮え繰り返る。
憎い。
そのまま滑空し、その青年へと襲いかかる。
が、身体が急に重くなり、慣性が死んだかと思うと、俺は地面に叩きつけられた。
「お前が、払暁の勇者の子供か? 」
「お前だな!! お前が父さんを!! 」
「質問をぉ!! 質問で返すなぁ!! 」
俺は地面に接吻した。
彼に後頭部を踏みつけられたのだ。
「ズキン。」
頭の中で何かが、切れたような音がした。
「ほう……やれば出来んじゃねえか。」
「父さんを殺したのは……お前か?」
俺は気がつくと、彼の首を掴んでいた。
「……そうだ。俺がコイツを殺した。」
(首を強く握る。)
「俺はなぁ。クズ親父を見ると、虫唾が走って殺したくなるんだよ。」
俺はものすごい勢いで弾き飛ばされた。
青年は宙に浮かび上がったかと思うと、上昇を始めた。
「俺とお前は似ている。グス親持ち同士、仲良くやろうぜ。あ、お前の親は俺が殺しちまったな。悪い悪い。」
俺は憎しみで一杯になった。ダメ元で鉛玉を何発も彼へ向けて飛ばす。
が、鉛玉は彼に当たる前に止まり、地に落ちてしまう。
「初めてだ!! こんなに人から感情を向けられたのは。桐生慎二……お前の名前覚えたぞ。」
確か剣城おじさんが新しく連れてきた女の子と遊んでいたような気がする。
名前は確か……美奈だったっけ。確かそういう名前だ。
村が…燃えている??
母さん!!
早く母さんのところに行かないと!!
僕は、家に帰るために、石段を上り始めた。
一段一段。
走っているのに、一向にその距離は埋まらなかった。
早く、早く、お家に帰らないと!!
焦げ臭い。息が苦しい。熱い。
日の手が村の上の方にまで迫ってきているようだ。
息を切らしながら家の前にたち、ドアノブを回した。
そこで、聖たちの唸り声を聞き、慌てて両手で口を押さえる。
僕は、柱の影から恐る恐る彼らを覗いた。
聖たちが、母さんに馬乗りになっている。
母さんは、父さんに助けを求めていた。
「助けてくれ!! 慎二郎!! 」
「ん? 慎二郎? アンタの旦那の名前か? 」
母さんの腕をよく見ると、肘から下が、ナイフのようなもので切断されて、灰になっている。
すると一人の男が、仰向けに押さえつけられている母さん目掛けて腰を突き立てた。
男が腰を突きつけるたびに母さんが、声にならない悲鳴をあげる。
そこで耐えきれなくなった僕は、肘から崩れ落ち、嘔吐した。
「おっとまだガキが残っていやがったか。」
「そいつは、捕まえて、後で売り捌くことにしようぜ。物好きな貴族様がまた買ってくださるよ。」
僕と母さんの目が合う。
「慎二……」
母さんに腰を打ち付けている聖が、隣で下半身マッパの男に命令する。
「おいお前、そこのガキを抑えていろ。後で使わせてやるからよ。」
「ってもよ。早く終わらせろよ。その女、鬼だろ? 灰化が進んでる。俺が使う頃に穴が無くなってたら困るからよ。」
「安心しろよ相棒。そん時は俺がしごいてやる。」
コレが……コレが……神様を慕う者たちのやることなのだろうか……
---やぁ坊。気分はどうじゃ? ---
どこからもなく声が聞こえる。
"良いわけないだろ!! "
その何者か分からない声に対して反射的に答えた。
---残念じゃのお。美鬼はもう助からん---
"もう…良いんだ。僕では、どうにも出来ない。僕は父さんみたいに強くないし、母さんみたいに呪術は使えない。"
---本当にそうかのぉ? ---
"もう…放っておいてくれよ。もう何も感じたく無いし、何も聞きたく無い。『感情なんてなければ、こんなに苦しまずに済むんだ。』"
---そうじゃ。坊、お主は苦しまんで良い。全部ワシに任せれば良いんじゃ---
"なに? 苦しまなくて良いって? 任せれば良いって? "
---契約完了じゃ---
刹那、僕の胸から、頭から、大切な物が抜けていくような感覚に囚われた。
次に痛みと苦痛と、感情が消える。
そしてそれは俺の右手に集まっていき……
小さな鉄管へと姿を変えた。
超常現象的な出来事に、聖たちが一瞬戸惑った。
俺はその一瞬の隙も見逃さない。
彼らを払い除け、回し蹴りで首を吹き飛ばす。
すると、母さんを襲っていた聖たちが、向き直り、こちらに襲いかかってきたので、股の間に銃弾を撃ち込む。
またを押さえる彼の頭に飛び乗り、何度も何度も膝蹴りを加える。
鼻が潰れ、顔が潰れ、頭蓋骨が潰れ脳みそが溢れ出るまで。
もう一人は四肢を切り取り、彼の懐にあったナイフで串刺しにしてから、仲間の溢れ出した脳みそを彼の口にねじ込む。
「慎二……」
その言葉で我に返った。
串刺しにされた男の顎をもぎ取ると、数時間前まで母であったであろう肉塊へと顔を向けた。
「慎二…ご・え・ん・ね。」
そう言って肉塊は灰へと崩れ落ちた。
悲しみも、悔恨も、そこには無かった。
あるのは、憎しみと、憎悪だけだ。
---流石じゃぞ坊!! ワシでも吸いきれんほどの感情じゃあ。もっと!! もっとワシにくれ!! ---
脳に直接響いてくる。
ただただ不快だ。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
頭の中でこの二文字が永遠に響いている。
苦しくは…無い。
ただただ不快だ。
俺は無言で家を後にした。
村の麓を見ると、一人の青年が父の顔を踏みつけていた。
ハラワタが煮え繰り返る。
憎い。
そのまま滑空し、その青年へと襲いかかる。
が、身体が急に重くなり、慣性が死んだかと思うと、俺は地面に叩きつけられた。
「お前が、払暁の勇者の子供か? 」
「お前だな!! お前が父さんを!! 」
「質問をぉ!! 質問で返すなぁ!! 」
俺は地面に接吻した。
彼に後頭部を踏みつけられたのだ。
「ズキン。」
頭の中で何かが、切れたような音がした。
「ほう……やれば出来んじゃねえか。」
「父さんを殺したのは……お前か?」
俺は気がつくと、彼の首を掴んでいた。
「……そうだ。俺がコイツを殺した。」
(首を強く握る。)
「俺はなぁ。クズ親父を見ると、虫唾が走って殺したくなるんだよ。」
俺はものすごい勢いで弾き飛ばされた。
青年は宙に浮かび上がったかと思うと、上昇を始めた。
「俺とお前は似ている。グス親持ち同士、仲良くやろうぜ。あ、お前の親は俺が殺しちまったな。悪い悪い。」
俺は憎しみで一杯になった。ダメ元で鉛玉を何発も彼へ向けて飛ばす。
が、鉛玉は彼に当たる前に止まり、地に落ちてしまう。
「初めてだ!! こんなに人から感情を向けられたのは。桐生慎二……お前の名前覚えたぞ。」
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