78 / 109
地獄の始まり
疫病神
しおりを挟む「まだ、地下水は戻ってこないのか?」
不意に、リーンが訪ねてきて驚く。
「…ええ。何処かにヒビが入って、流れ出ているとしか、思えないわ」
数年前から、魔女の森の地下水か減ってきている。
雨が降っても一定以上に水位が上がらない。
その為、生活用水が激減し、地下に貯水槽を作り、森の外で『水球』を作り出し、持ってきては水を補充している。
とはいえ、限界があるのだ。
リーンの『天水球』は水を圧縮させているので、大量の水が入っている為、これが有れば当分、魔女達の生活を守ることが出来る。
「…嫌な感じだな」
「そうなの」
原因がハッキリとしないから、手の施しようがない。
「だったら、『天水球』をもう少し、置いていく『物質保管庫』」
リーンが手をかざし、ドーナツ状の魔法陣が現れ、中心の引き出しから、『天水球』を二つ取りだし、手渡され、リーンは背を向けて王子の元に向かった。
じっとこっちを見ていた王子は、リーンに気が有るのか、親しげに話す私を睨んで、不機嫌そうに、顔を歪めている。
そんなつもりが無くても、これは面白い…。
リーンは気付いているのか?
もし、心を奪われそうになっている王子が、魔女に捕まったらリーンはどうする?
ソフィアは楽しくなってきて、笑みを浮かべた。
「どうした?用事は済んだから、帰ろう」
「ああ」
リーンは王子を促して、ソフィアに背を向け、城の扉に向かった。
「リーン。気付けて帰りなさい。宴が始まるわよ」
そして、魔女に捕まるのよ…。
「ありがとう。ソフィア」
何も知らない二人は城の扉を出て行った。
ソフィアは隣に佇む巨大な鏡に触れ、魔女の森を監視する『目』を動かし、映像を写し出した。
『目』は森だけでなく、魔女の暮らす街全体を見ることが出来き、侵入者を見つけるためにも使われるモノだ。
リーンと魔女との攻防が映し出され、二人は空中を移動して出入口に向かっている。
彼女達三人なら、リーンを捕らえられるかもしれない。
でも、この魔力は『海の魔法石』…?
王子は封じられたものが解除されていないので、魔法が使えないはず…なのに、使えると言うことは…フールシアに会ったのか?
だったら、彼女達だけでは、逃げられてしまうかも知れない…。
ソフィアは立ち上がった。
王子の足に下から蔦が伸びてきて、捕まって、体制が崩れ、落ちそうな王子をリーンが捕まえて、蔦を引き離そうとしている。
「もう少しなのに!」
リーンが『空の刃』、かまいたちで、蔦を切り落とした。
その瞬間、ソフィアは『瞬足移動』を使い、リーンの背後に移動し、ポンとリーンの背中を押した。
それに気付いたリーンは振り返り、目を見張る。
このままだと、逃げられてしまうの。
逃げられてしまうと、私の楽しみが一つ減ってしまうのよ。
ソフィアは微笑んだ。
リーンと同じように、長い時間を生きるソフィアにとって、リーンの喜怒哀楽が、楽しみの一つになっている。
まだ、誰も見たことの無い、リーンが見てみたい。
これが、ソフィアが見た、リーンが変化するキッカケのスイッチだった。
そのまま、バランスを崩した二人は、地上で待ち構える魔女の元に落ちていった。
不意に、リーンが訪ねてきて驚く。
「…ええ。何処かにヒビが入って、流れ出ているとしか、思えないわ」
数年前から、魔女の森の地下水か減ってきている。
雨が降っても一定以上に水位が上がらない。
その為、生活用水が激減し、地下に貯水槽を作り、森の外で『水球』を作り出し、持ってきては水を補充している。
とはいえ、限界があるのだ。
リーンの『天水球』は水を圧縮させているので、大量の水が入っている為、これが有れば当分、魔女達の生活を守ることが出来る。
「…嫌な感じだな」
「そうなの」
原因がハッキリとしないから、手の施しようがない。
「だったら、『天水球』をもう少し、置いていく『物質保管庫』」
リーンが手をかざし、ドーナツ状の魔法陣が現れ、中心の引き出しから、『天水球』を二つ取りだし、手渡され、リーンは背を向けて王子の元に向かった。
じっとこっちを見ていた王子は、リーンに気が有るのか、親しげに話す私を睨んで、不機嫌そうに、顔を歪めている。
そんなつもりが無くても、これは面白い…。
リーンは気付いているのか?
もし、心を奪われそうになっている王子が、魔女に捕まったらリーンはどうする?
ソフィアは楽しくなってきて、笑みを浮かべた。
「どうした?用事は済んだから、帰ろう」
「ああ」
リーンは王子を促して、ソフィアに背を向け、城の扉に向かった。
「リーン。気付けて帰りなさい。宴が始まるわよ」
そして、魔女に捕まるのよ…。
「ありがとう。ソフィア」
何も知らない二人は城の扉を出て行った。
ソフィアは隣に佇む巨大な鏡に触れ、魔女の森を監視する『目』を動かし、映像を写し出した。
『目』は森だけでなく、魔女の暮らす街全体を見ることが出来き、侵入者を見つけるためにも使われるモノだ。
リーンと魔女との攻防が映し出され、二人は空中を移動して出入口に向かっている。
彼女達三人なら、リーンを捕らえられるかもしれない。
でも、この魔力は『海の魔法石』…?
王子は封じられたものが解除されていないので、魔法が使えないはず…なのに、使えると言うことは…フールシアに会ったのか?
だったら、彼女達だけでは、逃げられてしまうかも知れない…。
ソフィアは立ち上がった。
王子の足に下から蔦が伸びてきて、捕まって、体制が崩れ、落ちそうな王子をリーンが捕まえて、蔦を引き離そうとしている。
「もう少しなのに!」
リーンが『空の刃』、かまいたちで、蔦を切り落とした。
その瞬間、ソフィアは『瞬足移動』を使い、リーンの背後に移動し、ポンとリーンの背中を押した。
それに気付いたリーンは振り返り、目を見張る。
このままだと、逃げられてしまうの。
逃げられてしまうと、私の楽しみが一つ減ってしまうのよ。
ソフィアは微笑んだ。
リーンと同じように、長い時間を生きるソフィアにとって、リーンの喜怒哀楽が、楽しみの一つになっている。
まだ、誰も見たことの無い、リーンが見てみたい。
これが、ソフィアが見た、リーンが変化するキッカケのスイッチだった。
そのまま、バランスを崩した二人は、地上で待ち構える魔女の元に落ちていった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~
於田縫紀
SF
大学を卒業した3月末に両親が事故で死亡。保険金目当ての伯母一家のせいで生活が無茶苦茶に。弁護士を入れてシャットアウトした後、私は生命維持装置付の最高級VR機器を購入し、腐った現実から逃げ出した。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

メルシュ博士のマッドな情熱
京衛武百十
SF
偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSと名付けられた未知の病により死の星と化した惑星リヴィアターネに、一人の科学者が現れた。一切の防護措置も施さず生身で現れたその科学者はたちまちCLSに感染、死亡した。しかしそれは、その科学者自身による実験の一環だったのである。
こうして、自らを機械の体に移し替えた狂気の科学者、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士のマッドな情熱に溢れた異様な研究の日々が始まったのであった。
筆者より。
「死の惑星に安らぎを」に登場するマッドサイエンティスト、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士サイドの物語です。倫理観などどこ吹く風という実験が行われます。ご注意ください。

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】

パラレルワールドの友人
ショー・ケン
SF
主人公の友人は、ある事情で超能力・パラレルワールドへ移動する力をもってしまった。主人公は彼の能力をうらやむのだったが、友人いわくそう簡単なものではないという。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる