神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
上 下
70 / 109
嫉妬と擾乱

ウィーク・ポイント

しおりを挟む
 夜、星座が瞬き、私の魔力が一番強くなる時間帯。
---lepus スター・ラビット---
 私の両足に兎の力が宿り、身体が急に軽くなる。
 目にも止まらぬ速さでベリックに接近する。
---Μιχαήλ ミカエル---
 彼の持つ槍が、一瞬光ったかと思うと、彼はその場から姿を消した。
---canis・major センス・オブ・スメル---
 この下品な術式は私には似合わない。だが、神族に生半可な術式は通用しない。私は嗅覚で彼の居場所を追った。
"八時の方向、木の裏"
 私は身体のバネを最大限にまで活かすと、槍を投げようとしているベリックの元へと跳躍した。
---hydra オーシャン・ウェーブ---
 私の身体が海蛇のように畝った。
 身体が円を描き、飛んできたベリックの槍を回避する。
 がしかし、槍は途中で動きを止めると、使用者の元へと帰ってしまう。
---aquila イーグル・ラッシュ---
 迷いなど要らない。槍が帰ってくるまでに、彼を仕留める事が出来れば私の勝ちだ!!
---Ραφαήλ ラファエル---
 彼の着ていた鎧が白く光り、渾身の突き攻撃を弾き返した。
 直後私のエモノが音もなく砕けさる。
「あらあら、最初から頭を狙っておくべきだったかしら。」
「さぁどうだかな。」
 彼は槍を再び手にすると、私へ向けて急降下して来た。
「エモノが折れたからといって容赦はしない。どうせ奥の手を隠し持っているんだろ? 」
 ---the blade of world end---
 私の叫びと共に、地面から無数の剣が出現した。
 私は日の刃と闇の刃を引き抜くと、彼の槍を両方の刃で受け止める。
 回転するように蹴り上げると、遠心力で彼の顔を蹴飛ばした。
"ビンゴ"
 彼は反動で二、三十メートル後ろに吹き飛ぶ。
 転がる彼へ向けて追撃を放つ。
---Γαβριήλ ガブリエル---
 ベリックのマントが、白く形状を変えて、翼のようになる。
 彼はその力を使い、自ら回転すると、私に蹴りを入れて来た。
 私はそれを回避すると、次なる攻撃へと転じる。
---scorpioショック・スコーピオン---
 サソリの毒針が、奴の喉笛へと迫る。
---Γαῖαガイア---
 地面から、鋭く尖った無数の針が出現する。
 私は彼の鎧に、剣を突き立て、ラファエルの反動でバックステップした。
 突き立てた闇の刃が、音もなく崩れ去る。
 私は新たな剣を地面から引き抜ぬく。
 ガイアの能力は、地を這う蛇のように、こちらに向かってくる。
 私は木の幹を走ると、宙返りし、そのままベリックに飛びついた。
 彼は、槍を水平に構えると、私の剣をガードする。
 弾き返されると、今度は地を蹴ってこちらに迫ってくる。
---Ἄνεμοιアモネイ---
 それは、疾風の如く。
---aquilaイーグル・アイ---
 世界が引き延ばされる。私は今、鷹と体感時間を共有している。
 スローモーションの世界で、ゆっくり迫ってくる、彼の渾身の突き攻撃を火の刃で弾き返した。
 ベリックは槍から左手を離すと、そのまま腹部めがけて、ストレートを繰り出してきた。
 私は日の刃でそれを弾き返す。
 加速された次元の中で、私たちは武器を交えた。
 反動で徐々に砂埃が激しくなり、次に葉が飛び始める。
 枝が揺れ始め、パキパキと音を鳴らし始める。
 しまいには、そこら一帯の木々が更地になった。
「コレで終わりだ!! 」
---Μιχαήλミカエル---
「しまっ。」
 左拳のフェイントによって意識を逸らされた私は、彼の大技を発動させる隙を作ってしまう。
 そうだ……私は武人では無い。どれだけ身体能力を向上させようとも、どれだけ武器を用意しようとも、読み合いでは武人の足元にも及ばない。
 いや、悔しいのはそこでは無い。自分の傲慢さ故に、自分の弱点を悟られ、見事に嵌められた惨めな自分を責めた。
「ん? 何しているのお父さん? 」
 彼の攻撃が止まる。
"しめた。"
「レナ、トイレかな? 見当たらないの。」
 セイ・ボイドだ。
 私に弱点があるように、彼にも弱みがある。私は考えるより先に、手が動いた。
 地面に刺さった刃の一振りを魔術で操ると、彼女へ向けて放つ。
「セイ!! 」
 哀れな父親は、我を忘れ娘の元へと飛び込んだ。
「ヒャはぁ。」
 飛ばした刃が彼の背中を貫く。
「えっ…なに? お父さん…お父さん!! 」
「セイ…に…げ…ろ…」
 私は動揺する娘にゆっくり近寄ると、催眠をかけた。
「ヒフフフフ…ハハハハハハハぁ。」
「ようやく手に入れたわよ!! グランディルを救う魔力タンクを!! コレでみんな助かる。カーミラと私は永遠に結ばれるの!! 」
 再び眠りについた彼女を担ぎ上げると、私は用意した魔法陣へと急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第三部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。 一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。 その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。 この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。 そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。 『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。 誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。 SFお仕事ギャグロマン小説。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

あさきゆめみし

八神真哉
歴史・時代
山賊に襲われた、わけありの美貌の姫君。 それを助ける正体不明の若き男。 その法力に敵う者なしと謳われる、鬼の法師、酒呑童子。 三者が交わるとき、封印された過去と十種神宝が蘇る。 毎週金曜日更新

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...