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英雄≠父親
漂流者
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セル帝国に一組の親子が流れ着いた。
極東人。
どうやら罪人らしい。
私は現皇帝として、この国を守らねばならない。
不用意に首を突っ込み、帝国を危険に晒すことは、愚行だ。
だが
極東人の子供は、珍しい短剣を持っているという事を耳に入れ、港に足を運んだ。
「王様!! どうか、この子を助けて。私はどうなっても良い。どうか双薔だけは……」
その双薔という子供は、歯が抜け落ち、あちこちにアザをつくり、目に光はなく、鼻から血が耐えず流れており、もはや啜る気力すら残っていない。
生きているのかも分からない。
「殺してやれ。それがその子のためになる。子供を苦しめながら殺すか、楽に殺すか。その子に残された選択は、その二択しかない。」
私は振り返り、職務に戻ろうとした。
---アスィール、この子を助けて!! ---
神の声…ではない。これは神器の声だ。そこに転がっているな・り・そ・こ・な・い・だ。
「人の魂を吸い尽くす禍々しい化け物が、どの口を聞いて、情けなどこうている。私には分かるぞ。全て、お前のせいだろう。」
---……---
神器は何も答えない。
代わりに、そこの生きる屍が、私に手を伸ばした。
「…けて。」
「だす…けて。」
ありったけの力を振り絞り、私に助けを求めている。
私は、その手を握らざるおえなかった。
だってそれが私の使命であり、私にかけられた呪いなのだから。
「ついて来い。」
母親は、ありったけの力を振り絞り子供を抱き抱えると、必死に私の後を追っていた。
私は、二人を教会へと案内した。
「王様。ここは? 」
母親は、懐疑的な目でこちらを見ている。
「その子は、壊血病末期だ。治療を施したところで、セルの技術ではどうにもならない。」
「そんな!! いやです。そんなの!! お願いします。この子が助かるなら私は、悪魔にでも魂を売ります。」
「悪魔にでも」……そうだ、ここは悪魔の国。
「……実は彼女には第三の道が残されている。」
「王様!! 第三の道とは? 」
「今お前は『悪魔にでも魂を売る』と言ったな。その言葉を一生呪えば良い。」
不意に次元が歪み、聖女の持つ十字架から、どす黒いエネルギーが溢れ出す。
---アスィール何様のつもりじゃ、一人で勝手に話を進めよって。下僕のお前が、ワシに指図するなど万死に値する大罪じゃ---
噂をすれば……
そうだ、彼女こそ東方の悪魔。ハムサだ。
「なーに、お前にとっても悪い話じゃ無いよ。」
---なんじゃ? その良い話というのは? 回答次第では、お前をズタズタに引き裂いて殺すぞ---
「お前に管理人と戦う権利をやろう。全ての力は、幸い下界にある。台座にはめるだけなら、先だけでも事足りるだろう。」
---なるほど、今そので死にかけている童が……---
「そうだ、代理英雄の子供。そこのカケラを刺せば、この子も代理英雄になれる。」
---中々面白い提案じゃのぉ---
「ちょっと待ってください。私は悪魔に魂を売ると言いましたが、この子を悪魔の生贄に捧げるとなど言っていません。」
私は、ため息をついた。この後に及んで、この母親はまだ……
「言っただろ。この子は壊血病で死ぬ。すぐに死ぬ。お前に残されたのは、子供を見殺しにするか、子供を殺して楽にさせてやるか、悪魔に魂を捧げ、子供に新たな人生を送らせるかの三択だ。それ以外に選択肢などない。」
「そんな…双薔っ」
「選べ、お前が。そして愚かな自分を呪え。」
---心配するな。そのような瑞々しい魂ぃ、剣なぞに食わせたりせぬわ。全部終わったらワシが喰ろうてやる!! ---
母親は、歯を噛み締めている。栄養失調で、脆くなった前歯が砕けた。
「…します。」
「お願いします。双薔を救って下さい。神様ッ。」
---神…か懐かしいひびきじゃのぉ---
私は母親から、息をするだけの肉塊を受け取ると、目の前の「神」に捧げる。
「軽いな。とても軽い。お前に務まるか? この重圧が。」
---なぁアスィールよ。代償としてお前は何を求む? ---
「私じゃこの国は守れない。」
極東人。
どうやら罪人らしい。
私は現皇帝として、この国を守らねばならない。
不用意に首を突っ込み、帝国を危険に晒すことは、愚行だ。
だが
極東人の子供は、珍しい短剣を持っているという事を耳に入れ、港に足を運んだ。
「王様!! どうか、この子を助けて。私はどうなっても良い。どうか双薔だけは……」
その双薔という子供は、歯が抜け落ち、あちこちにアザをつくり、目に光はなく、鼻から血が耐えず流れており、もはや啜る気力すら残っていない。
生きているのかも分からない。
「殺してやれ。それがその子のためになる。子供を苦しめながら殺すか、楽に殺すか。その子に残された選択は、その二択しかない。」
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神の声…ではない。これは神器の声だ。そこに転がっているな・り・そ・こ・な・い・だ。
「人の魂を吸い尽くす禍々しい化け物が、どの口を聞いて、情けなどこうている。私には分かるぞ。全て、お前のせいだろう。」
---……---
神器は何も答えない。
代わりに、そこの生きる屍が、私に手を伸ばした。
「…けて。」
「だす…けて。」
ありったけの力を振り絞り、私に助けを求めている。
私は、その手を握らざるおえなかった。
だってそれが私の使命であり、私にかけられた呪いなのだから。
「ついて来い。」
母親は、ありったけの力を振り絞り子供を抱き抱えると、必死に私の後を追っていた。
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母親は、懐疑的な目でこちらを見ている。
「その子は、壊血病末期だ。治療を施したところで、セルの技術ではどうにもならない。」
「そんな!! いやです。そんなの!! お願いします。この子が助かるなら私は、悪魔にでも魂を売ります。」
「悪魔にでも」……そうだ、ここは悪魔の国。
「……実は彼女には第三の道が残されている。」
「王様!! 第三の道とは? 」
「今お前は『悪魔にでも魂を売る』と言ったな。その言葉を一生呪えば良い。」
不意に次元が歪み、聖女の持つ十字架から、どす黒いエネルギーが溢れ出す。
---アスィール何様のつもりじゃ、一人で勝手に話を進めよって。下僕のお前が、ワシに指図するなど万死に値する大罪じゃ---
噂をすれば……
そうだ、彼女こそ東方の悪魔。ハムサだ。
「なーに、お前にとっても悪い話じゃ無いよ。」
---なんじゃ? その良い話というのは? 回答次第では、お前をズタズタに引き裂いて殺すぞ---
「お前に管理人と戦う権利をやろう。全ての力は、幸い下界にある。台座にはめるだけなら、先だけでも事足りるだろう。」
---なるほど、今そので死にかけている童が……---
「そうだ、代理英雄の子供。そこのカケラを刺せば、この子も代理英雄になれる。」
---中々面白い提案じゃのぉ---
「ちょっと待ってください。私は悪魔に魂を売ると言いましたが、この子を悪魔の生贄に捧げるとなど言っていません。」
私は、ため息をついた。この後に及んで、この母親はまだ……
「言っただろ。この子は壊血病で死ぬ。すぐに死ぬ。お前に残されたのは、子供を見殺しにするか、子供を殺して楽にさせてやるか、悪魔に魂を捧げ、子供に新たな人生を送らせるかの三択だ。それ以外に選択肢などない。」
「そんな…双薔っ」
「選べ、お前が。そして愚かな自分を呪え。」
---心配するな。そのような瑞々しい魂ぃ、剣なぞに食わせたりせぬわ。全部終わったらワシが喰ろうてやる!! ---
母親は、歯を噛み締めている。栄養失調で、脆くなった前歯が砕けた。
「…します。」
「お願いします。双薔を救って下さい。神様ッ。」
---神…か懐かしいひびきじゃのぉ---
私は母親から、息をするだけの肉塊を受け取ると、目の前の「神」に捧げる。
「軽いな。とても軽い。お前に務まるか? この重圧が。」
---なぁアスィールよ。代償としてお前は何を求む? ---
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