神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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役者は揃った

想像力が足りないなぁ

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要塞内には、敵味方の兵が入り乱れている。
 あまり範囲の大きい未知術は使えない。
 だが
 それは向こうも同じこと。いくらアイシャでも、味方を巻き込むようなことはしないであろう。
---blade rain 千本刀---
 奴の世界から引っ張り出された無数の刃が、要塞内の人間に敵味方関係なく襲いかかる。
"ッつクソッタレ。"
 俺は凛月を盾のように構えると、術式を発動させる。
---プラズマ・ディフェンス 雷守---
 周囲に発生した磁力が、金属製の刃を絡め取った。
「ぐあっ。」
 彼女の出した刃の中で、この世のものでは無いものが、未知術を透過し、俺の身体に突き刺さる。
 一手先まで読まれている。彼女は俺がなんらかの防御術を展開させ、周りの兵士を守るところまで。
「あらら、別に私たちの兵は神経繋げば、また使えるし、別に気使わなくて良かったのよ。」
「そういう問題じゃないだろ。」
 俺は彼女を睨みつけながら、身体に刺さった刃を引き抜く。
「うおおお。」
 俺は右手から刀を離し、凛月を振り回して薙ぎ払った。
「奇襲っつうのは気配を消してするもんだ。」
 炎帝を薙ぎ払う。
 そして、襲いかかってきた水帝を右拳で殴り飛ばし、闇帝の剣を紙一重でかわすと、蹴りをお見舞いして吹っ飛ばす。
---慎二郎!! 後ろ!! ---
 凛月の声で後ろを振り返るも、風帝の上段斬りを避けきれず、凛月の鎖で受け止める。
 はたき落とされた俺は、地帝の神聖魔術で下から突き上げられた。
「グフッ。」
 動けなくなったところに、風帝の補助を得た時帝が剣技を放ってきた。
---sword of hundred 百連突---
 ほぼ同時間に圧縮された無数の突き攻撃が俺を襲う。
---be shine 輝け---
 耀帝の光の剣が、ためた太陽光を圧縮してこちらに放ってきた。
 現在時刻は正午前後、太陽の恩恵を一番多く受けられる時間帯だ。
"くそ!! してやられた。"
 俺はありったけの力で磁場を形成させ、彼の光を曲げる。
 光が俺の右耳を持っていく。
"まずいな。"
 オヤッサンの助言で、多くのことを聴覚に頼っていた俺にはあまりよろしいことではなかった。
"意識を皮膚に集中させろ。"
 光のせいで焦点が合わない。
 前方から何かが迫って来る気配を感じた俺は、刀と凛月をクロスさせ、見えない攻撃を受け止めた。
 刃を携えたアイシャだ。
 俺はそのまま押し飛ばされ、要塞のうち壁に激突した。
「残念ね。払暁の勇者!! ここで終わりよ。」
---音撃波 ソニック・ブラスト---
 要塞の外壁に大穴が開く。
 俺の左耳の鼓膜がおかしくなる。
 目を覆っていた兵士たちは、今度耳を塞ぎ始めた。
 ……耳が聞こえない。
---右に避けろ。ポンコツ---
 すぐ横を、ナイフを持った子供が横切り、目が合う。
 ソレに左目を刺されたアイシャは、そのまま吹っ飛んでいった。
 なんだコイツらは? 
---安心しろ。アンタの味方だよ。一応な。---
 白髪の六歳ぐらいの子供が(もしかしたら、もっと上の子かもしれないが)目を大きく見開くと、耳を塞いでいた七英雄たちの意識が無くなる。
「パチパチパチ。」
 城門の中に、何かがゆっくり入って来る。
「しねぇェェ坂上。」
 聖の一人が、そのシルエットめがけて矢を放ったようだ。
 近くにいたフードを来た子供が手をかざすと、矢は燃え尽きて灰になる。
 視界が元に戻った俺は、彼に掴みかかった。
「坂上ぇ!! 」
「おー怖い怖い。」
「なぜあの様な子供たちが戦場に出ている。」
「ヒャハハハハ。」
 坂上はコレまでに見たことがないほどに冷笑した。
「君が私たちに力を提供したからじゃないか。叢雲の三十五の力を。想像力が足りないなぁ。私があの時……培養液に入った七宝刃の姿を見せた時、何も感じなかったのかね? 」
 俺は力なく崩れ落ちる。
 そして芋虫のように這いずり、真っ白な幼女の足元で土下座した。
「すまなかった……俺のせいで……本当にすまなかった。本当に本当に。」
 答えたのは幼女ではなく、音波を飛ばした少年だ。
「コレ、すっげえ面白えな。お前のおかげで色んな声が聞こえるぞ。」
 少年が壁に開いた穴から入って来る。
「フム。コレが払暁の勇者か……尾鰭が付くと言うのは本当のようだ。」
 さっき俺に言葉を送ってきた少年であろう。
「大丈夫。貴方のせいじゃ無いわ。」
 彼女は俺に優しく手を差し出してくれた。
 それからアイシャを吹き飛ばした子供が帰ってくる。
「……」
 彼は何かをこちらに投げてきた。
 木の実??
「それ。美味いぞ。」
「お、おう。」
 俺は木の実を頬張る。
 それから個性的な子供たちに困惑する俺は、七英雄を担ぎ上げて極東に戻った。
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