神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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役者は揃った

葛藤

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 シェリダンは死んだ。私の子供を産み落として。
 子供にも、ほかの四人たちと同様、私の力を有していた。
「父さん!! なぜ私を後継者にしてくださらないのですか?? 」
 今年で七歳となる長男のドミニク・ブレイクだ。そうだ、リエラと私の間に生まれた、この子こそ、次の代行者となるのに相応しい。
「知っていますよ。カーミラは僕たちとは腹違いの子供だって。父さんは母さんのことが嫌いなんだ。」
 耳が痛い。だが、過程がどのようなものであれ私は彼女を愛している。だが……
 同志たちが増えていくにつれて、私の代償は大きくなっていく。
 今、この子が代行者になれば、果たして二十歳まで生きることはできるだろうか?? 
 いや、私はそのような御託を並べて……そうだこの力が他人に渡ることを恐れているのだ。息子は利用価値の無くなった私をどうするであろうか?? ほかの三人の子供はどうするであろうか?? いや、カーミラは言うまでもない。一番力を持っているこの子は、真っ先に殺されるであろう。
 子供を疑ってはいけない。そう考えると笑えてきた。この世界の支配者となった私を「神族」と揶揄するものもいるが、心は臆病な人間のままらしい。
「僕よりも、愛人との間に生まれた子供の方が大事なんですね。」
 そう言ってあの子は、城を出て行ってしまった。
 リエラがこちらにやって来る。
「本当にカーミラに代行者を譲るのですか?? 」
「アレも、大人になれば代行者の意味を理解するだろう。」
「そうではなくて……」
「カーミラだって私たちの家族です。それをモノのように扱うなんて……」
 そうだ、私は父親失格だ。自分の子供をモノのように扱っている。
「だからって、ドミニクたちにこの運命を背負わせるつもりか? 」
 急がねばならない。王宮では、私に隠れて後継者の議論が交わされ、派閥が分かれつつあるそうだ。
 兄弟での血みどろの戦い。それだけは避けさせたい。
 四男たちには、束になり、折れない大黒柱となり国を支配して欲しい。
 それにカーミラも。そうだ。リエラがこう言ってくれているんだ。
 カーミラも私たちの子供だと。
 五男で仲良く。
「申し上げます。」
 七英雄の監視を行わせていた観戦武官が帰ってきた。
「七英雄は、鬼狩りの坂田剣城に敗北。アイシャ様が増援に当たりましたが……」
「払暁の勇者様だな。」
「はい、どうやらおかしな武器を持っているようで。」
「詳しく。」
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