神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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 ホントの始まり

不死の星詠み

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一振りの紅蓮を布津御魂剣で弾き返し、押し寄せる濁流を、跳躍で回避する。
 凄まじい旋風に突き飛ばされ、その先には虚無の顎があんぐり口を開けている。
---御鬼未亞牙 オキミアゲ---
 刀に染み付いた怪異たちの怨念が具現化し、顎の主である闇帝を襲う。
「ゴーン ゴーン。」
 柱時計のような音があたり一体に鳴り響く。
「またか! 」
 闇帝自身の顎を斬り落とす、すんでのところで技の発動が止まる。
 剣城に火の粉の雨が降り注ぎ、彼は左手でそれを払うと、後ろに大きく飛び上がる。
---一糸不苟 イッシフコウ---
 この瞬間、時帝の位置が、炎帝と水帝、風帝と地帝、耀帝と闇帝の対角線上に重なった。
 時帝は布津御魂剣が彼ら六人につけた「呪い。」によって喉を貫かれる。
「キサマッ。」
 カッとなった炎帝が剣城に飛びかかる。
「おい待て!! 」
 炎帝が急に動いたことにより、水帝がそれに引っ張られる。
「ヒッ助けて。」
 炎帝たちに繋がれていた糸が、風帝の左腕を斬り落とした。
 逃げようとした風帝を闇帝が咎める。
「むやみに動くな!! 」
 そして彼は、自分の身体に違和感を感じ、耀帝の方を見た。
 コレらに目をくれず逃げている。
「だからうごーー」
 炎帝たちの糸が、闇帝の首を削ぎ落とした。
 剣城が二十日間にわたってじっくりと刷り込んだ布津御魂剣の糸は、七英雄たちの間で、捻れ、絡まり、彼らの首を削ぎ落とした。
「なるほどねぇ。あなたのその刀は、空間に呪いを残すだけで無く、人間自体にも作用させられるわけ? 」
 剣城は、布津御魂剣を杖にして、声なき声を放った。
「誰…だ。」
 シャルル・アイシャだった。セル帝国の不死の魔女にして、グランディル帝国シド・ブレイクの側近。
 彼女が手を翳すと、彼らの首や腕が繋がり、傷が治っていく。
「すまねえ、姐さん。」
「あー、だから姐さんは辞めろってんだろ。私が歳食ってるみたいじゃない? そうよね。」
 "神経を無理矢理繋いで治癒させたのか? "
「バケモノめ。」
「あら、鬼狩りの坂田様、こんにちは。切れ味が良いお陰で助かったわ。こんなもの、って言ってるようなもんでしょ。」
 炎帝が一歩前に出る。
「アイシャ様、あとはお任せ下さい。」
 アイシャが風呪術で炎帝を吹き飛ばす。
「学ばねえな、低脳ども。」
「良いか?? 屑ども。そこから一歩も動くな。今度アイツの術が発動したら、お前らごと斬るからな。七英雄の代わりなんぞいくらでもいる。」
 アイシャが前に出る。
「ホラ、下がれよ。」
「はい。」
 代わりに炎帝が後ろに下がった。
「作戦会議は終わったか? 婆さんよ。」
「お姉さんがぁ。レディーに対する口の聞き方ってモノを教えてあげるわよ。」
 彼女が、右手を翳すと、魔法陣が出現する。
 無数の火の鳥が、剣城に襲いかかる。
 剣城は布津御魂剣を鞘に収める。
「チン」
---去刀サルタチ---
 刀の斬影が実体化し、火の鳥たちを絡め取る。
「へぇ、コレがあなたの術式ねぇ。」
「まぁ術と呼ぶにはあまりにも貧相なのだけど。」
 アイシャが指を鳴らすと、剣城のつけた無数の斬影が浮かび上がる。
 そして消滅した。
「良いわ、私がぁ本気を出しちゃったら、あなたミンチじゃ済まないし。」
 彼女は左手から二振りの剣を抜き取り、それを右手で回転させる。
 それでして、その二振りを上段で構えた。
「正直ありがてえよ。こちらとも、だいぶ消耗してでからなぁ。」
 剣城が再び刀を構え直す。
 アイシャが地面を蹴る。
「舐めるなよクソガキ。」
 剣城は刀を横向きに構えると、アイシャの攻撃を、なんとか受け止める。
 太刀筋が無茶苦茶な分、攻撃を読むのが難しい。
 そして何よりも。
「オイオイ、術は使わないんじゃなかったのか?? 」
 彼女は身体強化の神聖魔術で、スピードもパワーも人間離れしたものとなっている。
 力任せのアベコベな攻撃。
「『本気は出さない。』と、そう言っただけよ。当然でしょ。私、魔術師なんだから。」
 "手数が違いすぎる。"
 剣城が振るうエモノは布津御魂剣一本に対して、向こうは、太陽のように輝く剣と、紫色に輝く剣の二振り。
"かくなる上は。"
 剣城は布津御魂剣を右手に持ち替えると、左腕を身体に引き絞る。
 彼女の攻撃を布津御魂剣で弾き飛ばすと、左拳で、思いっきり彼女の腹部をついた。
「オラっ。」
「かはっ。」
 予測不能の攻撃に、アイシャが怯んだ。
「女を殴る男はモテないわよ。」
「悪いな、俺は既婚者だ。」
「あら、世も末ね。」
 剣城は地を蹴り、アイシャに回し蹴りを放つ。
 彼女は、二振りの剣をクロスさせ、防御に転ずる。
 が彼は彼女の頭を左手で掴むと、そのまま宙返りし、後ろから斬りかかった。
「はい、時間切れ。」
 剣城は自分の右胸から刃が突き出ていることに気づく。
 背後からとてつもない気配を感じる。
 世界を突き破り、こちらを垣間見る一つの「宇宙」を。
「がはっ。」
 剣城の意識は、ついに途切れた。
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