神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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 ホントの始まり

大蛇滅殺斬

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「どこ見てんだよ。」
 俺は慌てて空を見上げた。
「なに? 」
 ブレイズは空を飛んでいた。
 "蜃気楼か"
 どうやら俺は狐につままれていたらしい。
 俺が慌てて後ろに飛ぶと、ヤツの口から吐き出された炎が、俺の足元を通過した。
「今度は俺の番だ。」
 右拳に炎を纏ったブレイズが炎の中から飛び出す。
 不意をつかれた俺は、不安定な空中での出来事ということもあって、対処が遅れ、まともに攻撃を受けてしまう。
「ふんぎぃ。」
 ブレイズは俺の腹部を抉ったまま、さらに加速し、木を四、五本薙ぎ倒した。
 俺も負けていられない。
 意識を取り返し、彼の右手を両手で掴み、捻ると、二本の足でしっかり地面を掴み、思いっきり投げ飛ばした。
 俺は投げ飛ばされたブレイズと並走し、草薙剣で衝撃波を飛ばして彼を牽制する。
 彼は、火の玉を飛ばして俺を牽制する。
 俺たちは、木々を挟んで攻防を繰り返した。
 やがて森が開け、その先は……
 どうやら崖になっていたみたいだ。
 俺は足元の空気を圧縮して発射することにより、空中でバランスを取る。
 ブレイズも、自身の能力で浮遊していた。
 俺とブレイズが激突し、その衝撃で滝が水飛沫を上げる。
 俺たちは崖に足をつけると、武器を交えて白兵戦を始める。
 俺の剣が彼の頬に傷をつけ、ブレイズの火が俺の脇腹を焼く。
「こなくそぉ。」
「ハハハ、なに熱くなってやがんだよ。あんなチンケな村が一つ滅んだぐらいで。誰が困るっているんだ。」
 俺は草薙を思いっきり振り切ると、ブレイズを怒りで弾き飛ばした。
「あの村は、村人たちは、剣城は、オヤッサンは、はみ出し者の俺たちを快く受け入れてくれた。お前がお前たちが、俺の俺たちの居場所を奪おうというなら容赦はしないぞ。」
「お前そこ! なぜ村を襲う? グランディル軍は撤退したはずだろう。」
 ブレイズは両手から、あらんばかりの炎を捻り出すと、ソレを一箇所に集めた。 
「楽しいからに決まってるだろ。この世界は強者のためにある。なら弱者はただ、俺のために存在する。なら、俺たち聖が世界を支配し、弄び、殺すソレは正しいことだ。」
---inferno snake インフェルノ・スネーク---
 八俣の大蛇が姿を表し、あらゆるものを食い破りながらこちらに迫って来た。
 あまりの高音で滝が枯れる。
 俺は剣を両手で強く握ると叫ぶ。
---大蛇滅殺斬 トツカハチレンゲキ---
 迫り来る大蛇たちを草薙剣で斬り分けながら、ブレイズに迫る。
「なら、強者である俺が、全部守る、丹楓村も、美鬼も極東も。お前も強者である俺に殺されるなら文句は言うまいな。」
 大蛇滅殺斬の最後の一撃が、ブレイズの体を真っ二つしにした。
「なんだ…」
 彼は口をポカンと開けたまま、崩れていき、そのまま灰になった。
 
 村に帰ると、真っ先に美鬼が抱きついてくる。
「慎二郎!! 」
 どうやら美鬼が村人たちを連れて女子供を全て逃げてくれたおかげで被害は最小限に押さえられたようだ。
 全焼している建物がいくつかあるが、火は無事消し止められたらしい。
「ありがとう慎二郎。私の居場所を守ってくれて。」
 俺は力なく笑う。
「お前のじゃない。だろ。」
「ああ、そうだな。」
 剣城がこちらに走ってくる。
「ありがとう慎二郎、村の人々を無事守ることが出来た。」
 俺はそれよりもオヤッサンのことが気になり、彼に居場所を問うた。
「それより、オヤッサンはどこに行った。」
「ああ、それなら、少し離れた場所の楠木に寝かしているよ。」
 俺は剣城に案内されて、オヤッサンの元まで来きた。
 安心して気を失っているようだ。
 俺は恐る恐る彼の左瞼を捲る。
「ンッ。」
「痛かったか。ごめんオヤッサン。」
 コレぐらいなら、今の俺でも治療出来そうだ。
 俺は左手をオヤッサンの左眼に翳した。
「アガガガガ。コラ! テメェなにをしやがる。」
 オヤッサンに弾き飛ばされる。この治癒には、被術者にかなりの負担がかかるはずなのだが……
 まぁそもそも、オヤッサンの体力を信用してかけた術なのだしなぁ。
「左眼が…見えるぞ。」
 剣城が、オヤッサンの治った左眼をまじまじと見る。
「おい、慎二郎、お前は一体。」

 こうしてブレイズの襲撃事件は幕を閉じた。
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