神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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 ホントの始まり

炎のブレイズ

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 村が一キロ先からでも燃えていることが分かる。
 俺は二人を抱えたまま、さらに速度を上げた。
「ちょっと慎二郎! ストーップ。」
 剣城が左腕の中で暴れている。
「じっとしろ。落ちる。」
 つい声を荒げてしまった。自分に余裕が無くなっているのが分かる。
 剣城も、俺の剣幕に気が付いたらしく、それ以上は何も言わなかった。
「慎二郎、私を下ろせ。ここからは自分で進む。村の人間たちを避難させないと。」
 俺は無言で頷き、右腕から美鬼を離した。
 彼女は空中で一回転すると、側頭に銃鬼を当てる。
---時空壊クロック・アウト---
 彼女は地面に着地すると、あり得ないほどのスピードで村に向けて走り出した。
 燃ゆる橙が近づくにつれて、丹楓村の全容が明らかになる。
 木造の建物や、藁葺の民家が燃えている。
"まだ間に合う。"
 そこで炎の能力者らしき人物と戦うオヤッサンを見つけて急降下した。
「オヤジィ! 」
 剣城が彼の元へ迫る。
 弓館は髪を焼かれ、左眼を潰されていた。
 四肢は満足に残っている。
 炎使いは、右小指で耳を穿っている。
「なんだ? オメエは? 」
 俺は低い声で
「まずお前から名乗れよ。」
 と吐き捨て、炎使いを睨んだ。
「おっ、怖え怖え。」
 炎使いは小指を引き抜くと、耳垢を炎で燃やした。
「この俺こそが、グランディル軍側近、焔のブレイズだ。」
「そうか、俺は極東のー」
「おいちょっと待てぇ。」
 ブレイズが俺の名乗りを遮った。
「俺がシド様の右腕。幹部No.1だぞ。」
「だからどうした? 」
 彼が地団駄を踏む。
「もう良い、お前が払暁の勇者だな。」
 "払暁の勇者。シドも言っていた。おそらくグランディルの方で、俺はそう呼ばれているのであろう。"
「違う。」
 ブレイズがすっこける。
「俺は桐生慎二郎。ただの慎二郎だ。」
 そう言って腰の草薙を引き抜く。
「やめろ、危ないぞ。」
 後ろで、オヤッサンの声が聞こえる。
 俺は振り返る。
「オヤッサン。ここは俺に任せて下さい。」
 そしてブレイズの方に振り返ると再び草薙を構え直す。
「さっきに謝っておくぞ。」
 ブレイズは意味を理解できず、首を傾げた。
「ん? どした? 懺悔なら俺が聞いてやるよ。」
 
「この剣でお前を殺すことに…だ。」

 ブレイズは顔を炎のように真っ赤にすると、火の刃を飛ばしてきた。
「おい、火の取り扱いには気をつけろよ。俺、キレやすいってよく言われるからよ。」
 俺は数ある能力の中から有用な一つを導き出す。
 剣の刀身にソレを宿し、炎を切り払った。
---電離---
 燃えていた炎は音もなく消え去った。
 俺は地面を重きっきり蹴り上げると、次々と送られてくる火の刃を切り崩しながら、ブレイズを追跡する。
「ほう…やるじゃねえか。」
 その言葉には冷や汗が混じっていた。
「コレでどうだぁ。」
 彼が両手を合わせると、両側に炎の壁が出現し、俺を挟み込もうとする。
 俺は剣を鞘にしまい、両手を広げた。窒素を凍らせ、それで炎の壁を押し返す。
 追加で飛んで来た火の玉を右に避け、そのまま火の壁を走り出し、ブレイズに蹴りをお見舞いした。
 着地し、一回転するとともに剣を引き抜き、水平斬りで容赦なく襲いかかる。
 ブレイズも負けておらず、炎で剣を作り出すと、その炎で草薙剣を受け止めた。
 俺はソレを弾き飛ばすと、左肩で彼の懐に攻撃を加える。
「ぐぁ。」
 彼の唾と胃液が俺の首に掛かる。
「汚ねえな。」
 そのまま足で蹴飛ばした。
 森に飛んでいくブレイズを疾走し、追いかける。
 彼が牽制で飛ばしてきた炎が頭を掠り、髪が焼けた。
 俺は剣を振るい、飛んで来た炎の一つを弾き返し、彼にお見舞いすることに成功する。
 落ちてきたブレイズの喉元に、そのまま剣を突きつけた。
「もう終わりか? 」
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