神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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 ホントの始まり

酒呑童子

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 過激派の鬼は、美鬼のことを確認するとゆっくりこちらに歩いてきた。
「俺の名前は酒呑童子。お前の名前は?? なぜ人間側につく?? 」
 彼女は銃鬼のトリガーガードに指をかけ、銃鬼を回す。
「私の名前は美鬼だ。ただの美鬼。人間を弟と呼ぶお前に言われたくないよ。」
 酒呑童子は彼女の名前を聞くと、抑えきれず吹き出した。
「美鬼?? クックック。人間の名前みたいじゃないか??真名 まなはどうした?? 」
「そんなもの、遠の昔に捨てたさ。ヤツ 慎二郎が私に名前をつけてくれた。それだけで十分だ。そういうお前はどうなんだよ。」
 彼は、ついに耐えきれなくなり大声で笑った。
「今まで色々な鬼を見てきたが……お前のようにオママゴトをしているような鬼はお前が初めてだ。」
「そうだな、お前には人間の真似事など勿体なさすぎる。鬼道に落ちたお前などには、逆立ちして裸踊りしても出来まい。」
 酒呑童子は急に高笑いを止めると、今度は血相を変えて美鬼を、睨みつけた。
「勘違いするなよ小娘。人間に堕落したお前と、鬼道を極めた俺。どちらが上かその身体に叩き込んでやる。」
---喰殺 ダークネス・テンプテーション---
 彼の右手から放たれた謎の物質に左腕を持っていかれる。
 左腕を再生させると、同時に銃鬼のトリガーを引く。
---時空壊 クロック・アウト---
 時間を引き延ばし、自分の左腕を吹き飛ばした物質の正体を見た美鬼は、さらなる謎に襲われる。
"黒い物質?? 影?? それとも虚数電子か?? "
「フッどうだ?? 驚いたか?? コレが俺の能力。」
「本物の闇とは如何なる光も受け付けないものだ。」
「お前はどうだ?? 脆弱な光すら、まんまと通してしまうお前の闇は?? 」
 美鬼は、酒呑童子の元まで強化した身体能力で距離を詰め。彼を殴り飛ばした。
 が、しかし。それは深い闇に消えてしまう。
「無駄だ。お前には光しか見えていない。光しか見ていないものに闇は見えない。」
 背中に八つの刺激が走る。
「本当の闇は光を喰らい、物質を喰らう。それが俺の術式。暗黒物質ダーク・マタだ。」
 彼女の身体に酒呑童子が迫る。
「お前は人間と共存するために彼らを傷つけず、彼らに尽くそうとした。」
「だが、奴らはどうした?? お前に何を返した?? どうして奴らはお前を受け入れてくれない?? 」
「答えは簡単だ。お前があの下等生物どもに、本当の力を示していないからだ。」
「やめろ!! 離せ!! 」
「さぁ、私と共に来い。私はお前を拒まないし、私には私を慕う沢山の部下がいる。みんなお前を歓迎するぞ。」
「おい!! いい加減にしろ!! 」
 美鬼は全身から虚数電子を放った。
 迸る紫電が酒呑童子の本体を襲った。
「禍々しい『光』だ。どうやら心まで奴らにゾッコンのようだな。」
「……ったく。黙っていれば勝手なことを次から次へと……」
 彼女は妄劔ー紅 モウトウ・クレナイを引き出すと、その刀に虚数電子を宿させ、それを酒呑童子に向けた。
「勘違いするな。慎二郎は私に名前をくれた。剣城は私に居場所をくれた。」
「奪うことでしか何も手に入れることのできないお前の手下などに誰がなるか!! 私の場所はここにある!! 」
 酒呑童子は両手に暗黒物質を宿すと、美鬼むけて疾走した。
「調子に乗るなよ三下ぁ!! どちらが上か分からせてやる!! 」
 美鬼は意識を目に集中させる。
---丹眼---
 彼女の目が赤く光り、酒呑童子の暗黒物質を捉える。
「見えたぞ。貴様の本質!! 」
 彼女は彼の左手の攻撃を右に避けると、続く右の攻撃を刀で受け止める。
「なぜだ!! なぜ俺の暗黒物質に触れられる?? 」
 美鬼はそのまま力任せに酒呑童子を押し返す。
---紫電斬 シデン ハチレンゲキ---
 乾いた八つの稲妻が酒呑童子の身体を斬り裂く。
 力を無くした彼は、灰まみれの口で最後にこう答えた。
「…カ…エ…デ…」
 美鬼は刀を左右に振るい、銃鬼にそれをしまった。
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