24 / 109
ホントの始まり
士ノイローゼ
しおりを挟む
「ったく。追い出したのはそっちだろうが……」
剣城が都の石段を登りながら苦言を挺している。
続く美鬼も口を漏らす。
「だからって、なんで私まで。」
俺は警戒した。ここ十日ほどで人間という生き物がどのようなものかを理解した俺は、天が「美鬼を連れてこい。」と命令した理由を詮索し、まず初めに浮かんだのは、美鬼を処刑するということだった。
と、言いつつも恩のある坂田家に無駄な迷惑をかけないという理由で彼女を引きつけれて来てしまう。
彼女は、村での暮らしが気に入ったらしく、なかなか首を縦に振ってくれなかった。
しかし、俺は必死に頼み込み、最後に土下座までして彼女を説得することに成功する。
朱雀門をくぐり、客間に入ると、険悪なムードが室内を漂っていた。
だが側近たちは俺たちの事などまるで気にかけておらず、他のことに気を取られているようである。
俺たちが、お辞儀し正座すると、天が手を叩く。
それを合図に側近たちが静まり返り、俺たちの存在に気づき、敵意に似た懐疑心を向ける。
「坂上。頼む。」
天に呼ばれた坂上頼次は巻物を広げると、淡々と話し始めた。
どうやら吉田家という僧侶の一族が、穏健派の吉田家と過激派の𠮷田家に別れ、内乱が起きたらしい。
ので、都は直ちに穏健派を支持し、援軍を送った。が、しかし、それに刺激された過激派が暴走し、穏健派を押し戻すと、今度は極東に軍を進めて来ているらしい。
「あれだけ除け者にしていたくせに、自分たちで対処出来なくなったらすぐコレか。アンタらが無い袖を振って威張り散らした結果だろうに……」
伴が横槍を入れる。
「口を慎め。叛逆者めが。」
坂上が伴を制した。
「ああ、その通りだ。君たちが必要になったから呼び戻した。」
「だが、コレはチャンスでもある。君たちが過激派の反乱を鎮圧し、無事、極東の平穏を守ったというのなら、君たちを我々の臣下として正式に認めよう。」
なるほど、美鬼を連れてこいと言った理由はコレか。
「過激派の首領は忌々し鬼だ。奴らは鬼道の道に堕ちた。我々がそれを粛清しなければならない。」
剣城が鼻で笑った。
「坂田どの。何か言いたげな顔だな。」
「鬼に鬼を殺せと。人に人を殺せと命令するのと何が違うのか理解に苦しみますな。ようはアレですよね。十字架にかけられた人間の絵を踏ませ、忠誠心を再確認させるって言う。」
坂上が口角を上げる。
「お互いの関係を確認するのに、踏み絵は最も手っ取り早い方法だとは思わないか?? 坂田どの。私は君とも鬼とも、そこの見窄らしい男とも仲良くしたいと思っているんだよ。せっかくの人の善意を無碍にするんじゃ無い。」
剣城が立ち上がった。
「がったよ。やってやらぁ。」
俺にももう答えは出ていた。
「異論は無い。やらせてくれ。」
隣の紅葉御前様は
「おい、私抜きで勝手に決めるな。」
と言いながらも、頭の角をビンビンにさせていた。
三者は天に一礼し客間を後にする。
剣城が都の石段を登りながら苦言を挺している。
続く美鬼も口を漏らす。
「だからって、なんで私まで。」
俺は警戒した。ここ十日ほどで人間という生き物がどのようなものかを理解した俺は、天が「美鬼を連れてこい。」と命令した理由を詮索し、まず初めに浮かんだのは、美鬼を処刑するということだった。
と、言いつつも恩のある坂田家に無駄な迷惑をかけないという理由で彼女を引きつけれて来てしまう。
彼女は、村での暮らしが気に入ったらしく、なかなか首を縦に振ってくれなかった。
しかし、俺は必死に頼み込み、最後に土下座までして彼女を説得することに成功する。
朱雀門をくぐり、客間に入ると、険悪なムードが室内を漂っていた。
だが側近たちは俺たちの事などまるで気にかけておらず、他のことに気を取られているようである。
俺たちが、お辞儀し正座すると、天が手を叩く。
それを合図に側近たちが静まり返り、俺たちの存在に気づき、敵意に似た懐疑心を向ける。
「坂上。頼む。」
天に呼ばれた坂上頼次は巻物を広げると、淡々と話し始めた。
どうやら吉田家という僧侶の一族が、穏健派の吉田家と過激派の𠮷田家に別れ、内乱が起きたらしい。
ので、都は直ちに穏健派を支持し、援軍を送った。が、しかし、それに刺激された過激派が暴走し、穏健派を押し戻すと、今度は極東に軍を進めて来ているらしい。
「あれだけ除け者にしていたくせに、自分たちで対処出来なくなったらすぐコレか。アンタらが無い袖を振って威張り散らした結果だろうに……」
伴が横槍を入れる。
「口を慎め。叛逆者めが。」
坂上が伴を制した。
「ああ、その通りだ。君たちが必要になったから呼び戻した。」
「だが、コレはチャンスでもある。君たちが過激派の反乱を鎮圧し、無事、極東の平穏を守ったというのなら、君たちを我々の臣下として正式に認めよう。」
なるほど、美鬼を連れてこいと言った理由はコレか。
「過激派の首領は忌々し鬼だ。奴らは鬼道の道に堕ちた。我々がそれを粛清しなければならない。」
剣城が鼻で笑った。
「坂田どの。何か言いたげな顔だな。」
「鬼に鬼を殺せと。人に人を殺せと命令するのと何が違うのか理解に苦しみますな。ようはアレですよね。十字架にかけられた人間の絵を踏ませ、忠誠心を再確認させるって言う。」
坂上が口角を上げる。
「お互いの関係を確認するのに、踏み絵は最も手っ取り早い方法だとは思わないか?? 坂田どの。私は君とも鬼とも、そこの見窄らしい男とも仲良くしたいと思っているんだよ。せっかくの人の善意を無碍にするんじゃ無い。」
剣城が立ち上がった。
「がったよ。やってやらぁ。」
俺にももう答えは出ていた。
「異論は無い。やらせてくれ。」
隣の紅葉御前様は
「おい、私抜きで勝手に決めるな。」
と言いながらも、頭の角をビンビンにさせていた。
三者は天に一礼し客間を後にする。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~
星天
ファンタジー
幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!
創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。
『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく
はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜
天海二色
SF
西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。
珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。
その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。
彼らは一人につき一つの毒素を持つ。
医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。
彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。
これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。
……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。
※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒物劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
特別展「毒」 公式図録
くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ
ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科
その他広辞苑、Wikipediaなど
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。

陰の行者が参る!
書仙凡人
キャラ文芸
三上幸太郎、24歳。この物語の主人公である。
筋金入りのアホの子じゃった子供時代、こ奴はしてはならぬ事をして疫病神に憑りつかれた。
それ以降、こ奴の周りになぜか陰の気が集まり、不幸が襲い掛かる人生となったのじゃ。
見かねた疫病神は、陰の気を祓う為、幸太郎に呪術を授けた。
そして、幸太郎の不幸改善する呪術行脚が始まったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる