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ホントの始まり
士ノイローゼ
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「ったく。追い出したのはそっちだろうが……」
剣城が都の石段を登りながら苦言を挺している。
続く美鬼も口を漏らす。
「だからって、なんで私まで。」
俺は警戒した。ここ十日ほどで人間という生き物がどのようなものかを理解した俺は、天が「美鬼を連れてこい。」と命令した理由を詮索し、まず初めに浮かんだのは、美鬼を処刑するということだった。
と、言いつつも恩のある坂田家に無駄な迷惑をかけないという理由で彼女を引きつけれて来てしまう。
彼女は、村での暮らしが気に入ったらしく、なかなか首を縦に振ってくれなかった。
しかし、俺は必死に頼み込み、最後に土下座までして彼女を説得することに成功する。
朱雀門をくぐり、客間に入ると、険悪なムードが室内を漂っていた。
だが側近たちは俺たちの事などまるで気にかけておらず、他のことに気を取られているようである。
俺たちが、お辞儀し正座すると、天が手を叩く。
それを合図に側近たちが静まり返り、俺たちの存在に気づき、敵意に似た懐疑心を向ける。
「坂上。頼む。」
天に呼ばれた坂上頼次は巻物を広げると、淡々と話し始めた。
どうやら吉田家という僧侶の一族が、穏健派の吉田家と過激派の𠮷田家に別れ、内乱が起きたらしい。
ので、都は直ちに穏健派を支持し、援軍を送った。が、しかし、それに刺激された過激派が暴走し、穏健派を押し戻すと、今度は極東に軍を進めて来ているらしい。
「あれだけ除け者にしていたくせに、自分たちで対処出来なくなったらすぐコレか。アンタらが無い袖を振って威張り散らした結果だろうに……」
伴が横槍を入れる。
「口を慎め。叛逆者めが。」
坂上が伴を制した。
「ああ、その通りだ。君たちが必要になったから呼び戻した。」
「だが、コレはチャンスでもある。君たちが過激派の反乱を鎮圧し、無事、極東の平穏を守ったというのなら、君たちを我々の臣下として正式に認めよう。」
なるほど、美鬼を連れてこいと言った理由はコレか。
「過激派の首領は忌々し鬼だ。奴らは鬼道の道に堕ちた。我々がそれを粛清しなければならない。」
剣城が鼻で笑った。
「坂田どの。何か言いたげな顔だな。」
「鬼に鬼を殺せと。人に人を殺せと命令するのと何が違うのか理解に苦しみますな。ようはアレですよね。十字架にかけられた人間の絵を踏ませ、忠誠心を再確認させるって言う。」
坂上が口角を上げる。
「お互いの関係を確認するのに、踏み絵は最も手っ取り早い方法だとは思わないか?? 坂田どの。私は君とも鬼とも、そこの見窄らしい男とも仲良くしたいと思っているんだよ。せっかくの人の善意を無碍にするんじゃ無い。」
剣城が立ち上がった。
「がったよ。やってやらぁ。」
俺にももう答えは出ていた。
「異論は無い。やらせてくれ。」
隣の紅葉御前様は
「おい、私抜きで勝手に決めるな。」
と言いながらも、頭の角をビンビンにさせていた。
三者は天に一礼し客間を後にする。
剣城が都の石段を登りながら苦言を挺している。
続く美鬼も口を漏らす。
「だからって、なんで私まで。」
俺は警戒した。ここ十日ほどで人間という生き物がどのようなものかを理解した俺は、天が「美鬼を連れてこい。」と命令した理由を詮索し、まず初めに浮かんだのは、美鬼を処刑するということだった。
と、言いつつも恩のある坂田家に無駄な迷惑をかけないという理由で彼女を引きつけれて来てしまう。
彼女は、村での暮らしが気に入ったらしく、なかなか首を縦に振ってくれなかった。
しかし、俺は必死に頼み込み、最後に土下座までして彼女を説得することに成功する。
朱雀門をくぐり、客間に入ると、険悪なムードが室内を漂っていた。
だが側近たちは俺たちの事などまるで気にかけておらず、他のことに気を取られているようである。
俺たちが、お辞儀し正座すると、天が手を叩く。
それを合図に側近たちが静まり返り、俺たちの存在に気づき、敵意に似た懐疑心を向ける。
「坂上。頼む。」
天に呼ばれた坂上頼次は巻物を広げると、淡々と話し始めた。
どうやら吉田家という僧侶の一族が、穏健派の吉田家と過激派の𠮷田家に別れ、内乱が起きたらしい。
ので、都は直ちに穏健派を支持し、援軍を送った。が、しかし、それに刺激された過激派が暴走し、穏健派を押し戻すと、今度は極東に軍を進めて来ているらしい。
「あれだけ除け者にしていたくせに、自分たちで対処出来なくなったらすぐコレか。アンタらが無い袖を振って威張り散らした結果だろうに……」
伴が横槍を入れる。
「口を慎め。叛逆者めが。」
坂上が伴を制した。
「ああ、その通りだ。君たちが必要になったから呼び戻した。」
「だが、コレはチャンスでもある。君たちが過激派の反乱を鎮圧し、無事、極東の平穏を守ったというのなら、君たちを我々の臣下として正式に認めよう。」
なるほど、美鬼を連れてこいと言った理由はコレか。
「過激派の首領は忌々し鬼だ。奴らは鬼道の道に堕ちた。我々がそれを粛清しなければならない。」
剣城が鼻で笑った。
「坂田どの。何か言いたげな顔だな。」
「鬼に鬼を殺せと。人に人を殺せと命令するのと何が違うのか理解に苦しみますな。ようはアレですよね。十字架にかけられた人間の絵を踏ませ、忠誠心を再確認させるって言う。」
坂上が口角を上げる。
「お互いの関係を確認するのに、踏み絵は最も手っ取り早い方法だとは思わないか?? 坂田どの。私は君とも鬼とも、そこの見窄らしい男とも仲良くしたいと思っているんだよ。せっかくの人の善意を無碍にするんじゃ無い。」
剣城が立ち上がった。
「がったよ。やってやらぁ。」
俺にももう答えは出ていた。
「異論は無い。やらせてくれ。」
隣の紅葉御前様は
「おい、私抜きで勝手に決めるな。」
と言いながらも、頭の角をビンビンにさせていた。
三者は天に一礼し客間を後にする。
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