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ホントの始まり
5人目の子供
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極東の襲撃に失敗した私たちは、なんとかアグスに戻ってきた。
世界から神族を消し去るまで後一歩なのだ。極東の皇帝、アレがこの世最後の神族であろう。
だが、
私の命はもう長く無いかも知れない。
払暁の勇者にあって私に無いもの……それは生命力だった。そうだ。この御伽噺のような武器、(神器とでも呼ぼうか)いや兵器は人間の手には余るものだ。
リエラと子供たちが、心配そうに私を見つめている。
リエラが倒れかけの私の身体を取ってくれた。
「あなた、もう良いわ。子供に代行者の力を譲渡して。」
「いや、私はまだやれる。」
それが子供を思って放った言葉なのか、自身の力にすがりつくドス黒い感情からかは分からなかった。
そして、従者からの報告を聞き安堵する。
「捕らえましたよ。吸血鬼。気をつけて下さい。我々が触ってもすぐに灰化するので。」
リエラが目を見開いた。
「まざかアナタ!! 」
そのまざか だ。私は吸血鬼との間に子を成し、その子に代行者の地位を譲ることにした。そうすれば、子供たちの未来を守ることが出来る。
せめてこの子達が元服するまでは、私が、私たちが、この子を守らねばならない。
「失望したか?? リエラ?? 先に謝っておくよ。非力な私を許してくれ。」
リエラは、数滴の雫を残し、寝室へと走って行ってしまう。
「コレで良いのだ。」
私は捕らえられた吸血鬼が見覚えのある人物であることに戦慄する。
「カーミラ・シェリダンなのか?? 」
彼女は首を横に振った。
「悪いな、私、シベリア以前の記憶が無いんだ。オマエとは知人同士だったみたいだな。以前はどういう関係だったんだ?? 友人?? 兄弟?? それとも体の関係だったり?? 」
「恋人同士だった。」
私は嘘をついた。自分でも思った。私はとんでもないクズ野郎だと。
だが、後悔はしていない。
彼女を姦通したことも、彼女を自身の力で灰に変えてしまったことも。我妻を裏切ったことも。
生まれてきた子供には母親と同じカーミラという名前をつけた。
世界から神族を消し去るまで後一歩なのだ。極東の皇帝、アレがこの世最後の神族であろう。
だが、
私の命はもう長く無いかも知れない。
払暁の勇者にあって私に無いもの……それは生命力だった。そうだ。この御伽噺のような武器、(神器とでも呼ぼうか)いや兵器は人間の手には余るものだ。
リエラと子供たちが、心配そうに私を見つめている。
リエラが倒れかけの私の身体を取ってくれた。
「あなた、もう良いわ。子供に代行者の力を譲渡して。」
「いや、私はまだやれる。」
それが子供を思って放った言葉なのか、自身の力にすがりつくドス黒い感情からかは分からなかった。
そして、従者からの報告を聞き安堵する。
「捕らえましたよ。吸血鬼。気をつけて下さい。我々が触ってもすぐに灰化するので。」
リエラが目を見開いた。
「まざかアナタ!! 」
そのまざか だ。私は吸血鬼との間に子を成し、その子に代行者の地位を譲ることにした。そうすれば、子供たちの未来を守ることが出来る。
せめてこの子達が元服するまでは、私が、私たちが、この子を守らねばならない。
「失望したか?? リエラ?? 先に謝っておくよ。非力な私を許してくれ。」
リエラは、数滴の雫を残し、寝室へと走って行ってしまう。
「コレで良いのだ。」
私は捕らえられた吸血鬼が見覚えのある人物であることに戦慄する。
「カーミラ・シェリダンなのか?? 」
彼女は首を横に振った。
「悪いな、私、シベリア以前の記憶が無いんだ。オマエとは知人同士だったみたいだな。以前はどういう関係だったんだ?? 友人?? 兄弟?? それとも体の関係だったり?? 」
「恋人同士だった。」
私は嘘をついた。自分でも思った。私はとんでもないクズ野郎だと。
だが、後悔はしていない。
彼女を姦通したことも、彼女を自身の力で灰に変えてしまったことも。我妻を裏切ったことも。
生まれてきた子供には母親と同じカーミラという名前をつけた。
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