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英雄
俺の使命は
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英雄は、どうするべきか右往左往していた。
<人間を殺すつもりなぞ無かったが……コレも因果かもしれないな。>
英雄の脳裏に、ある思念が飛び込んでくる。
「ぐぐっ。」
偏頭痛で彼は頭を押さえた。
彼が狼狽えていると、一撃を終え、バックステップで戻ってきた剣城が英雄をどやしつける。
「おい、何してやがる?? 」
英雄は右脳を抑えながら、剣城を見上げて、ゆっくり口を開いた。
「僕は……僕は……」
「お前は名前を得るために、ここへ来たのでは無いのか?? 」
「名前……欲しい!! 」
「なら___」
「でも……この人は、人を襲おうとなんて思っていない。殺す必要なんてない。」
「情が移ったか?? それにソイツは人じゃない、鬼だ。お前の仕事は怪異を殺し尽くすことじゃないのか?? 」
そうだ。彼の使命は、代行者を殺し、神族を殺し、聖を殺し、鬼を屠り、吸血鬼を灰に還すこと。
だがしかし、鬼を殺すことを命令した天という存在からも、微かな神族の匂いがした。彼もまた怪異なのだ。
"剣城は間違っている。だけど……"
「もういい、俺が全部やる。お前はそこで突っ立ってろ。」
剣城は地面を勢い良く蹴り上げると、飛び上がり、布津御魂剣を大きく振り上げる。
紅葉御前は右手を前に掲げた。
「やむ終えん。先に謝っておくぞ。許せ人間。」
彼女の手のひらに、形容し難い武器が出現する。
---銃鬼!!---
すると、彼女の武器は、当然かのように話し出した。
---なんじゃご主人?? また人間に絡まれておるのかのぉ?? ---
「トリガーを引くぞ。」
---神喰---
銃鬼から六発の銃弾が弾き出される。勘のいい剣城は、攻撃をキャンセルする。そして回避に専念し、避けきれない銃弾を、布津御魂剣で弾き返した。
彼は着地すると、自分の左頬が切れていることに気づき、それを左手で拭う。
「弓か?? 醜い鬼らしい卑怯な武器だぜ。」
(刀を低く構える。)
「だがなぁ。」
「人間様舐めんなよ。」
紅葉御前は紙一重で、彼の水平斬りを交わすと、バックステップし、銃鬼を自分の側頭へ押し当てた。
---水月鏡花---
彼女の身体能力が、著しく向上する。英雄でも、目で彼女の動きを追うのがやっとだった。
そして、剣城はというと、互角かそれ以上の速さで彼女と攻防を繰り返している。
彼女は、剣の水平斬りを上半身を崩して避け。彼は彼女の足払いを避ける。
剣城の布津御魂剣が彼女の髪に触れる。
触れた箇所から下が灰になって消えた。
「お前のその刀。相当同胞を斬ったな。」
紅葉御前は斬られた髪の切り口を手に取り、剣城に問いかける。
「ああ、曾祖父さんによれば、元々は普通の刀だったみたいだが……」
「神族を殺しまわっているうちに、そいつらの呪いやら怨みやらが、この刀にしみついちまったみたいでな。気をつけろよ。斬撃はしばらくの間その場に残る。」
紅葉御前は瞳孔を見開き、周囲を見渡した。
「ああ、なるほどな。最初からこっちが狙いか??」
チッ「見えて」やがるのかよ。コイツは手こずりそうだ。
英雄には二人がなんのことを言っているのかさっぱり分からなかった。
だって……
最初から斬撃は残っているし、彼自身。刀の斬撃はその場にとどまるものだと、勝手に勘違いしていた。
紅葉御前はすでに彼の手のひらの上だ。
動けば動くほど身動きが取れなくなる。斬像に指一本でも触れればチェックメイトだ。
このままでは彼女が消えてしまう。
"いや、俺は彼女を殺しに来たのではないのか?? "
"いつまで迷っている?? 俺は怪異を殺すために生まれてきた。目の前に、今、その倒すべき怪異が存在する。"
"怪異を殺す?? 何のために?? "
「俺は……俺は……」
---疾風迅雷---
彼は、おそらく、世界の法則に迫る速さで二者の間に割り込んだ。
世界を七周半するほどのスピードで突っ込んできた英雄に、二者は唖然とし、正気に戻った剣城は、英雄を睨んだ。
英雄が飛び込んできた衝撃波で、斬像が全て吹き飛ばされる。
「おい、お前、何の真似だ。」
彼は叢雲で布津御魂剣を弾き飛ばす。
「俺の、俺の使命は、世界の人間を守ること。悪戯に怪異を殺すことじゃない。」
剣城は怒鳴り返した。
「そいつは人間じゃない。鬼だ!! 怪異は、坂田家が滅ぼす。邪魔をするならお前も斬る。」
英雄も負けずと言い返した。
「この人からは……微かな人間の匂いがする。血の匂いじゃない。」
(剣城が英雄に乗り掛かる。)
「おい!! 」
(英雄が押し返す。)
「それに、この人は剣城と戦うことを望んでいない。人を殺したいとも思っていない。彼女がそう言った。俺は確かに聞いた。彼女の心の声を。」
紅葉御前が、結界を突き破り逃げ出す。
英雄はそれを追いかけた。
剣城が手を伸ばす。
「おい、待てよ。」
鬼と英雄は、密林の中へ消えていった。
<人間を殺すつもりなぞ無かったが……コレも因果かもしれないな。>
英雄の脳裏に、ある思念が飛び込んでくる。
「ぐぐっ。」
偏頭痛で彼は頭を押さえた。
彼が狼狽えていると、一撃を終え、バックステップで戻ってきた剣城が英雄をどやしつける。
「おい、何してやがる?? 」
英雄は右脳を抑えながら、剣城を見上げて、ゆっくり口を開いた。
「僕は……僕は……」
「お前は名前を得るために、ここへ来たのでは無いのか?? 」
「名前……欲しい!! 」
「なら___」
「でも……この人は、人を襲おうとなんて思っていない。殺す必要なんてない。」
「情が移ったか?? それにソイツは人じゃない、鬼だ。お前の仕事は怪異を殺し尽くすことじゃないのか?? 」
そうだ。彼の使命は、代行者を殺し、神族を殺し、聖を殺し、鬼を屠り、吸血鬼を灰に還すこと。
だがしかし、鬼を殺すことを命令した天という存在からも、微かな神族の匂いがした。彼もまた怪異なのだ。
"剣城は間違っている。だけど……"
「もういい、俺が全部やる。お前はそこで突っ立ってろ。」
剣城は地面を勢い良く蹴り上げると、飛び上がり、布津御魂剣を大きく振り上げる。
紅葉御前は右手を前に掲げた。
「やむ終えん。先に謝っておくぞ。許せ人間。」
彼女の手のひらに、形容し難い武器が出現する。
---銃鬼!!---
すると、彼女の武器は、当然かのように話し出した。
---なんじゃご主人?? また人間に絡まれておるのかのぉ?? ---
「トリガーを引くぞ。」
---神喰---
銃鬼から六発の銃弾が弾き出される。勘のいい剣城は、攻撃をキャンセルする。そして回避に専念し、避けきれない銃弾を、布津御魂剣で弾き返した。
彼は着地すると、自分の左頬が切れていることに気づき、それを左手で拭う。
「弓か?? 醜い鬼らしい卑怯な武器だぜ。」
(刀を低く構える。)
「だがなぁ。」
「人間様舐めんなよ。」
紅葉御前は紙一重で、彼の水平斬りを交わすと、バックステップし、銃鬼を自分の側頭へ押し当てた。
---水月鏡花---
彼女の身体能力が、著しく向上する。英雄でも、目で彼女の動きを追うのがやっとだった。
そして、剣城はというと、互角かそれ以上の速さで彼女と攻防を繰り返している。
彼女は、剣の水平斬りを上半身を崩して避け。彼は彼女の足払いを避ける。
剣城の布津御魂剣が彼女の髪に触れる。
触れた箇所から下が灰になって消えた。
「お前のその刀。相当同胞を斬ったな。」
紅葉御前は斬られた髪の切り口を手に取り、剣城に問いかける。
「ああ、曾祖父さんによれば、元々は普通の刀だったみたいだが……」
「神族を殺しまわっているうちに、そいつらの呪いやら怨みやらが、この刀にしみついちまったみたいでな。気をつけろよ。斬撃はしばらくの間その場に残る。」
紅葉御前は瞳孔を見開き、周囲を見渡した。
「ああ、なるほどな。最初からこっちが狙いか??」
チッ「見えて」やがるのかよ。コイツは手こずりそうだ。
英雄には二人がなんのことを言っているのかさっぱり分からなかった。
だって……
最初から斬撃は残っているし、彼自身。刀の斬撃はその場にとどまるものだと、勝手に勘違いしていた。
紅葉御前はすでに彼の手のひらの上だ。
動けば動くほど身動きが取れなくなる。斬像に指一本でも触れればチェックメイトだ。
このままでは彼女が消えてしまう。
"いや、俺は彼女を殺しに来たのではないのか?? "
"いつまで迷っている?? 俺は怪異を殺すために生まれてきた。目の前に、今、その倒すべき怪異が存在する。"
"怪異を殺す?? 何のために?? "
「俺は……俺は……」
---疾風迅雷---
彼は、おそらく、世界の法則に迫る速さで二者の間に割り込んだ。
世界を七周半するほどのスピードで突っ込んできた英雄に、二者は唖然とし、正気に戻った剣城は、英雄を睨んだ。
英雄が飛び込んできた衝撃波で、斬像が全て吹き飛ばされる。
「おい、お前、何の真似だ。」
彼は叢雲で布津御魂剣を弾き飛ばす。
「俺の、俺の使命は、世界の人間を守ること。悪戯に怪異を殺すことじゃない。」
剣城は怒鳴り返した。
「そいつは人間じゃない。鬼だ!! 怪異は、坂田家が滅ぼす。邪魔をするならお前も斬る。」
英雄も負けずと言い返した。
「この人からは……微かな人間の匂いがする。血の匂いじゃない。」
(剣城が英雄に乗り掛かる。)
「おい!! 」
(英雄が押し返す。)
「それに、この人は剣城と戦うことを望んでいない。人を殺したいとも思っていない。彼女がそう言った。俺は確かに聞いた。彼女の心の声を。」
紅葉御前が、結界を突き破り逃げ出す。
英雄はそれを追いかけた。
剣城が手を伸ばす。
「おい、待てよ。」
鬼と英雄は、密林の中へ消えていった。
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