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英雄
愛宕山の鬼
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天は腕を組み、彼らの帰りを待っていた。
遠方から、光何かが飛んでくるのを見つけ、目を細める。
近衛たちが、その光に弓を構えた。
「おい!! テメェら。誰に向かって弓を引いている?? 」
左手に担がれている剣城が彼らに怒鳴った。
「坂田様でございましたか?? 」
「よくぞご無事で!! 」
剣城は心底気分が悪かった。部下達に謝る者がいなかったからだ。
"クソっ。俺の株はすっかり堕ちてしまったぜ。"
天がスタスタと歩いて来る。
英雄が放った最初の言葉はと言うと。
「名前、約束。俺に名前をくれ。」
天が、英雄を宥める。
「どうどう。まぁそう慌てなくても良いだろ?? 大丈夫。君にはちゃんと姓かばねをあげるよ。」
彼は続けた。
「最近、極東内でも、怪異に手を焼いていてね。討伐隊を派遣しているが……」
(天は首を横に振る。)
「怪異を狩る仕事。引き受けてくれるかな?? 」
英雄はコックリ頷いた。
「怪異、殺す。俺の仕事。」
「ちょっと待ったぁ。」
剣城が天と英雄の間に割り込む。
「鬼を狩るなら、どうして鬼狩りの一族である坂田家を指名してくれないのですか?? 」
天は首を振った。
「やめてくれ。私はそれで君の兄を殺している。坂田家の人間も毎年数を減らしていし。君には死んで欲しくないからね。」
剣城は拳を強く握った。
「兄は……兄は弱かったから死んだ。怪異のために生き、怪異のために死ぬ。それが坂田家です。俺も行かせて下さい。」
「だめだ。」
天は頑なに首を動かさなかった。
「なら」
「なら、んなもん命令なんかなくても行ってやりますよ。『鬼を倒しに行くな。』という命令なんて俺は受けてませんからね。」
天が剣城を引き止める。
「待て痴れ者!! 」
英雄が剣城を担ぎ上げる。
「剣城は友達。俺が連れて行く。」
天は眉をハの字に曲げた。
「オイオイ。」
二者はそのまま飛んでいってしまった。
「随分とアレを信頼されているようで……まだ彼が我々の味方だと決まったわけではありません。」
坂上頼次である。
天は微笑んだ。
「ああ、君の言う通りだよ頼次。彼は謎が多い。信用するのはまだ早いかもしれないね。」
「あっ。」
英雄は急につぶやいた。
「どうしたんだ?? 」
剣城が彼に言葉を返す。
「鬼の場所聞いておくの忘れた。」
「極東ってどこ。」
剣城が指さす。
「ホラ、あの島みてえなんが極東だ。鬼っていうのは、都の端の愛宕山ってところに住んでいる。」
英雄が剣城に問いかけた。
「鬼っていうのは、どんな悪いことをしたの?? 」
剣城は首を傾げる。
「さぁな。ただ分かることは、俺が鬼狩りの一族で、鬼を退治するというのが朝廷の意向だってことだけだ。」
「お前は?? 」
「お前は何のために怪異を狩っている?? 」
英雄は答えた。
「人間を守るため。そのために全部殺す。」
剣城は頷いた。
「そうかよ。」
「だったらもしよ。」
「俺が人を殺そうとしていたらどうする?? お前は俺を殺しに来るか?? 」
英雄は首を横に振った。
「分からない。でも、殺さないと思う。」「だって剣城は友達だから。」
遠方から、光何かが飛んでくるのを見つけ、目を細める。
近衛たちが、その光に弓を構えた。
「おい!! テメェら。誰に向かって弓を引いている?? 」
左手に担がれている剣城が彼らに怒鳴った。
「坂田様でございましたか?? 」
「よくぞご無事で!! 」
剣城は心底気分が悪かった。部下達に謝る者がいなかったからだ。
"クソっ。俺の株はすっかり堕ちてしまったぜ。"
天がスタスタと歩いて来る。
英雄が放った最初の言葉はと言うと。
「名前、約束。俺に名前をくれ。」
天が、英雄を宥める。
「どうどう。まぁそう慌てなくても良いだろ?? 大丈夫。君にはちゃんと姓かばねをあげるよ。」
彼は続けた。
「最近、極東内でも、怪異に手を焼いていてね。討伐隊を派遣しているが……」
(天は首を横に振る。)
「怪異を狩る仕事。引き受けてくれるかな?? 」
英雄はコックリ頷いた。
「怪異、殺す。俺の仕事。」
「ちょっと待ったぁ。」
剣城が天と英雄の間に割り込む。
「鬼を狩るなら、どうして鬼狩りの一族である坂田家を指名してくれないのですか?? 」
天は首を振った。
「やめてくれ。私はそれで君の兄を殺している。坂田家の人間も毎年数を減らしていし。君には死んで欲しくないからね。」
剣城は拳を強く握った。
「兄は……兄は弱かったから死んだ。怪異のために生き、怪異のために死ぬ。それが坂田家です。俺も行かせて下さい。」
「だめだ。」
天は頑なに首を動かさなかった。
「なら」
「なら、んなもん命令なんかなくても行ってやりますよ。『鬼を倒しに行くな。』という命令なんて俺は受けてませんからね。」
天が剣城を引き止める。
「待て痴れ者!! 」
英雄が剣城を担ぎ上げる。
「剣城は友達。俺が連れて行く。」
天は眉をハの字に曲げた。
「オイオイ。」
二者はそのまま飛んでいってしまった。
「随分とアレを信頼されているようで……まだ彼が我々の味方だと決まったわけではありません。」
坂上頼次である。
天は微笑んだ。
「ああ、君の言う通りだよ頼次。彼は謎が多い。信用するのはまだ早いかもしれないね。」
「あっ。」
英雄は急につぶやいた。
「どうしたんだ?? 」
剣城が彼に言葉を返す。
「鬼の場所聞いておくの忘れた。」
「極東ってどこ。」
剣城が指さす。
「ホラ、あの島みてえなんが極東だ。鬼っていうのは、都の端の愛宕山ってところに住んでいる。」
英雄が剣城に問いかけた。
「鬼っていうのは、どんな悪いことをしたの?? 」
剣城は首を傾げる。
「さぁな。ただ分かることは、俺が鬼狩りの一族で、鬼を退治するというのが朝廷の意向だってことだけだ。」
「お前は?? 」
「お前は何のために怪異を狩っている?? 」
英雄は答えた。
「人間を守るため。そのために全部殺す。」
剣城は頷いた。
「そうかよ。」
「だったらもしよ。」
「俺が人を殺そうとしていたらどうする?? お前は俺を殺しに来るか?? 」
英雄は首を横に振った。
「分からない。でも、殺さないと思う。」「だって剣城は友達だから。」
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