神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
上 下
11 / 109
英雄

愛宕山の鬼

しおりを挟む
 天は腕を組み、彼らの帰りを待っていた。
 遠方から、光何かが飛んでくるのを見つけ、目を細める。
 近衛たちが、その光に弓を構えた。
「おい!! テメェら。誰に向かって弓を引いている?? 」
 左手に担がれている剣城が彼らに怒鳴った。
「坂田様でございましたか?? 」
「よくぞご無事で!! 」
 剣城は心底気分が悪かった。部下達に謝る者がいなかったからだ。
"クソっ。俺の株はすっかり堕ちてしまったぜ。"
 天がスタスタと歩いて来る。
 英雄が放った最初の言葉はと言うと。
「名前、約束。俺に名前をくれ。」
 天が、英雄を宥める。
「どうどう。まぁそう慌てなくても良いだろ?? 大丈夫。君にはちゃんと姓かばねをあげるよ。」
 彼は続けた。
「最近、極東内でも、怪異に手を焼いていてね。討伐隊を派遣しているが……」
(天は首を横に振る。)
「怪異を狩る仕事。引き受けてくれるかな?? 」
 英雄はコックリ頷いた。
「怪異、殺す。俺の仕事。」

「ちょっと待ったぁ。」
 剣城が天と英雄の間に割り込む。
「鬼を狩るなら、どうして鬼狩りの一族である坂田家を指名してくれないのですか?? 」
 天は首を振った。
「やめてくれ。私はそれで君の兄を殺している。坂田家の人間も毎年数を減らしていし。君には死んで欲しくないからね。」
 剣城は拳を強く握った。
「兄は……兄は弱かったから死んだ。怪異のために生き、怪異のために死ぬ。それが坂田家です。俺も行かせて下さい。」
「だめだ。」
 天は頑なに首を動かさなかった。
「なら」
「なら、んなもん命令なんかなくても行ってやりますよ。『鬼を倒しに行くな。』という命令なんて俺は受けてませんからね。」
 天が剣城を引き止める。
「待て痴れ者!! 」
 英雄が剣城を担ぎ上げる。
「剣城は友達。俺が連れて行く。」
 天は眉をハの字に曲げた。
「オイオイ。」
 二者はそのまま飛んでいってしまった。
「随分とアレを信頼されているようで……まだ彼が我々の味方だと決まったわけではありません。」
 坂上頼次である。
 天は微笑んだ。
「ああ、君の言う通りだよ頼次。彼は謎が多い。信用するのはまだ早いかもしれないね。」


「あっ。」
 英雄は急につぶやいた。
「どうしたんだ?? 」
 剣城が彼に言葉を返す。
「鬼の場所聞いておくの忘れた。」
「極東ってどこ。」
 剣城が指さす。
「ホラ、あの島みてえなんが極東だ。鬼っていうのは、都の端の愛宕山ってところに住んでいる。」
 英雄が剣城に問いかけた。
「鬼っていうのは、どんな悪いことをしたの?? 」
 剣城は首を傾げる。
「さぁな。ただ分かることは、俺が鬼狩りの一族で、鬼を退治するというのが朝廷の意向だってことだけだ。」
「お前は?? 」
「お前は何のために怪異を狩っている?? 」
 英雄は答えた。
「人間を守るため。そのために全部殺す。」
 剣城は頷いた。
「そうかよ。」
「だったらもしよ。」
「俺が人を殺そうとしていたらどうする?? お前は俺を殺しに来るか?? 」
 英雄は首を横に振った。
「分からない。でも、殺さないと思う。」「だって剣城は友達だから。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

3024年宇宙のスズキ

神谷モロ
SF
 俺の名はイチロー・スズキ。  もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。  21世紀に生きていた普通の日本人。  ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。  今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。

ゆとりある生活を異世界で

コロ
ファンタジー
とある世界の皇国 公爵家の長男坊は 少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた… それなりに頑張って生きていた俺は48歳 なかなか楽しい人生だと満喫していたら 交通事故でアッサリ逝ってもた…orz そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が 『楽しませてくれた礼をあげるよ』 とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に… それもチートまでくれて♪ ありがたやありがたや チート?強力なのがあります→使うとは言ってない   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います 宜しくお付き合い下さい

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

蒼海のシグルーン

田柄満
SF
深海に眠っていた謎のカプセル。その中から現れたのは、機械の体を持つ銀髪の少女。彼女は、一万年前に滅びた文明の遺産『ルミノイド』だった――。古代海洋遺跡調査団とルミノイドのカーラが巡る、海と過去を繋ぐ壮大な冒険が、今始まる。 毎週金曜日に更新予定です。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

落ちこぼれの魔術師と魔神

モモ
ファンタジー
平凡以下の成績しかなかったはずの坂本・翔護の元に桜魔魔術学院から推薦入学の話が来た事により、彼の運命は大きく変わった。

アンドロイドちゃんねる

kurobusi
SF
 文明が滅ぶよりはるか前。  ある一人の人物によって生み出された 金属とプラスチックそして人の願望から構築された存在。  アンドロイドさんの使命はただ一つ。  【マスターに寄り添い最大の利益をもたらすこと】  そんなアンドロイドさん達が互いの通信機能を用いてマスター由来の惚気話を取り留めなく話したり  未だにマスターが見つからない機体同士で愚痴を言い合ったり  機体の不調を相談し合ったりする そんなお話です  

処理中です...