神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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英雄

撃退

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シドがエクスカリバーを地面に突き立てると、地から隆起した岩石が次々と飛び出し、英雄へと飛び散る。
 英雄は、反時計回りに走り出すと、最初の一撃を天叢雲剣で、下半身に飛んできた二撃目をジャンプで避け、三撃目を左手で弾き飛ばす。
 そして四撃目を右足で蹴り飛ばし、シドを牽制する。
 シドは風のカーテンで、跳ね返ってきた岩石を粉々にした。
 英雄は走りながら加速する自分をイメージした。
 イメージは形になり、天叢雲剣を触媒として未知なる力を発動させる。
---輪廻界雷 リンネカイライ---
 天叢雲剣の回路を通った電流が磁界を作り出し、英雄を加速させた。
 二者を阻む五メートルの間隔を、彼は一瞬にして詰める。
 シドは体液を操作し、身体能力を向上させる。さらに、足の摩擦定数を操作した上に、風で敏捷力にブーストをかけた。
「遅い!! 」
 英雄の渾身の一振りを、シドのエクスカリバーが弾き返した。
 シドは右足の摩擦定数を限界まで引き上げ思いっきり大地を踏み込むと、飛び上がり、英雄の懐に飛び込む。
 空気抵抗を0にし、重力を分解し、分力で加速し、渾身の一撃を放つ。
---無量光明 infinite・ray---
 エクスカリバーから溢れんばかりの光が襲い、英雄に襲いかかった。
 目が焼け、皮膚が焼け、全てが白に飲み込まれる。
 彼は慌てて体に珪素を貼り、光を軽減すると、メタモルフォーゼで溶けた部分を修復する。
 そしてバックステップで距離を取ると、叢雲を振る。
 叢雲から大量の水が溢れ出して、周囲を巻き込んだ。
「ほう?? 水攻めか?? 水遁なら私も負けんぞ。」
 負けずとシドもエクスカリバーから大量の水を放出させる。
 鎧を身につけていない聖たちは、身体をバタつかせることで、近くの樹木に捕まることが出来たが、警備の兵たちは、その重さのため、次々と沈んでいった。
 剣城は事前に貼っておいた斬撃を利用して、安全地帯を作っており、アイシャはと言うと、飛んでいた。
 自体を理解したシドは、慌てて地面に亀裂を作るが、流れに乗った聖たちは、次々と亀裂の奥深くへと流されていった。
 英雄はと言うと
 左手で剣城をつまみあげ、空を飛んでいる。
「ありがとよ。でもよお前、自分の技が周りの人間にも影響を及ぼしていることを頭の片隅に置いて欲しいもんだぜ。」
 英雄は頷いた。
「善処する。」
 彼は剣城を木の上に投げ捨てると、浮遊するシドへと再び距離を詰める。
 叢雲が徐々に熱を帯び始めた。
 シドはエクスカリバーを大きく振り翳すと、それを振り下ろして来る。
 飛んでくる次元の裂け目を避けながら彼は、さらに加速し、シドへと距離を詰めた。
 叢雲とエクスカリバーが衝突し、激しい火花が散る。
 燃え上がる叢雲をエクスカリバーの起こす風が掻き消そうとする。叢雲はそれに呼応し、さらに燃え上がる。
 飛び散る鎌鼬と火の粉が二者の体を徐々に削り始めていた。
 シドの目に火花が飛び散り、彼は一瞬怯んだ。英雄はそれを見逃さずに、上段斬りでシドをはたき落とす。
 すかさず叢雲を振るい、剣先から熱誘導型のエネルギー弾を飛ばした。
 シドはそれを確認すると、旋回し、エネルギー弾をやり過ごした。
 シドの後を英雄が追いかける。
 二者は空を旋回しながら武器を交えた。
 金色と、鈍色の二つの光が、ぶつかっては離れ、火花を散らしては、距離を取ってを繰り返す。
 二者は急降下しながらぶつかり合い、捻れながら地表へと激突した。
 衝撃によってできた大きなクレーターの中心で、彼らは攻防を続けていた。
 シドは好きを見ると、エクスカリバーを地面に突き立て、英雄の重力を極限にまで振り上げる。
 彼が動けなくなった一瞬の隙を利用し、シドはエクスカリバーを思いっきり引き絞った。
---absolute pulse---
 凝縮されたエネルギー弾が英雄に降りかかる。
「もうおしまいだぁ~」
 剣城が情けない声を上げた。
 英雄は叢雲を突き出すと、全てを貫く光の槍をイメージした。
---ロンギヌス---
 叢雲の回路に電流が流れ、アンペールの法則により、周囲に磁界が発生する。
「い…けっ。」
 二つののエネルギー体が衝突し、衝撃波があたりに四散した。
「失せろぉ!! 」
 シドはエネルギをフル展開し、さらに圧力をかける。
 英雄も負けずとロンギヌスの出力を上げた。
 シドが徐々に押され始める。
「俺は認めんぞ!! 世界に代行者は私一人、私こそが世界を支配するのに相応しい。」
 二者には決定的な差があった。魔力量である。
 そして
 ロンギヌスがシドを弾き飛ばした。
 英雄は仰向けに倒れるシドにゆっくり近寄ると、叢雲を突き立てようとする。
「シド様に指一本でも触れてみなさい!! コイツの首が飛ぶわよ。」
 アイシャが剣城の首にナイフを突き立ていた。
 アイシャの右手が落ちた。
「それは、俺の大事な友達、返せ。」
 彼女は自分の腕の断面を見ると悲鳴を上げた。
「あ"あ"あ"あ"あ"」
 彼女は左手でシドを担ぎ上げると、魔術でテレポートした。
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