神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
上 下
7 / 109
英雄

英雄召喚

しおりを挟む
シド・ブレイクが、カタルゴ大陸を平定したことにより、周辺諸国がざわめき始めた。
 グランディル帝国と条約を結んでいないウボクの国や、極東は、シドが攻め来ることを危惧し、争いに備えていた。
 特に、神族と人間の混血児が国のトップを務める極東では、貴族達が、毎日「天」に謁見をしている。
 帝国歴1145年、シド・ブレイクはウボクの国へ進軍する。
 彼は、神聖魔術を使える「聖」と呼ばれる魔導士団や、呪術の使える魔獣を引き連れ、自由都市の生都にてウボク、極東連合軍と衝突した。
 シドは先陣を切り、迫り来る騎兵達の槍を、エクスカリバーの風で吹き飛ばす。
 後ろでは氷のランスを構えた魔術部隊が一列になり、神聖魔術で、低くなった足裏の摩擦抵抗を存分に生かしていた。
 ウボクの後方から大量の弓が飛んでくる。
 降りかかる矢の雨がグランディル軍に降り注ぐ直前、後方のメイジ隊が発動させたシールドによって、その攻撃は全て防がれた。
 騎兵の槍を受ける者が何人かで始めるが、止まるどころか、怯むものすらいない。シドの力を得ていた聖達は、身体も頑丈になっていた。
「進め!! 人類の未来を取り戻すぞ!! 」
 シドは一人目の馬の右前足を水平斬りで斬り落とすと、続く馬の脳天を貫き、横に払う。
 続く三人目は、ジャンプし、大上段から斬り下ろすと、続く四人目は足払いで、馬の足を折る。
 落馬したウボクの兵士達は、後方の氷の槍へと消えていった。
 騎馬隊を超えたその先に、弓兵を守る兵師団が見え始めた。
 シドはエクスカリバーに力を込めると、開放した力の衝撃波で、全てを薙ぎ倒そうとした。
 が、彼らの間に雷が堕ち、一人のある男が姿を表す。
"藍色の木綿着物に、黒色のマント??"
 敵か味方か分からない、その男は腰の刀に手をかけると、抜き身でシドへいきなり攻撃してきた。
---大蛇滅殺斬 トツカハチレンゲキ---
 シドはその一撃一撃を目で追い、一つ一つエクスカリバーで弾き返した。
「失敗したか……」
 英雄の脳内に、 蝠岡の言葉がよぎる。
<君の役目は、この世界の怪異を全て殺し尽くし、人間を守ること。そして、任務を達成したお前は……>

    <自害しろ>

 英雄は天叢雲剣の柄を、再び強く握りなおすと、シドに距離を詰める。
「「シド様を守れ!!」」
 聖達が英雄の前へと立ちはだかった。
「おい!!やめろ!!下がれ!!」
 シドの警告虚しく、部下達は倒されていった。
---雷撃斬 ライゲキザン---
 稲妻によって加速された頭身が、部下達をなぞった。
 英雄はシドの懐に潜り込むと、耳元でこう囁く。
「安心しろ峰打ちだ。」

---虚斬影 タキオン・ブレード---

 シドは斬られたのかすら分からなかった。
"なぜ私は、倒れかかっている?? なぜこの男は、私に勝てた?? なぜ同志では無いのに術が使える?? なぜこの男も「剣」を持っている?? なぜ部下を殺さなかった?? なぜ……なぜ……なぜ……"

 シドは薄れゆく意識の中で必死に考えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

メイド型アンドロイド『鷹華』

きりたぽん
SF
メイド型アンドロイド『鷹華』が仕えるご主人様は猫なのだ。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。

新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)
SF
 空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。  それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。  彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。  チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。  だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。  異世界から来た連中のために戦えないくれは。  一方、戦う飛遊午。  ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。  *この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...