神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

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一番最初の啓示

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 次の日、私は何事もなかったように持ち場へ戻った。
 あの女の手当が上手いのか、それとも私が丈夫なのか。
 だが身体が丈夫であるかそうでないかというのは、どうでも良いことなのだ。彼ら神族が蔓延るこの世界では……
 彼ら神族そうだ、まず君達には神族というものが何かを説明しなければならない。
 君達は神と聞いて、神聖なものや、荘厳なものを想像するであろう。
 私たちが、人の皮を被った獣だというのなら……そうだな、彼らは天使の皮を被った悪魔だ。
 彼らには人間には無い力がある、魔法がある。それゆえに、彼らが世界を牛耳るのは容易かった。
 彼らは周辺諸国へ侵略を繰り返すと、帝国歴1052年を神歴元年と改め、首都アグスを中心とし、グラン帝国を設立した。
 それからというものの、神族は我ら人類を家畜とし、各地の収容所で飼っている。
 私が今いるシベリアという場所も、その収容所の一つだ。
 もはやこの世に、家畜以外の人類は存在しない。
 あとは彼ら悪魔だけだ。
「逃げろ!!崩落するぞ。」
 奥で坑夫たちの悲鳴が聞こえる。どこぞのバカが、水脈を引き当てたのだろう。
 こういうことは割と良くあった。坑道内にガスが充満して、ダイナマイトを使った人間が、坑道ごと爆発四散したり、急に大雨が降り、坑道内の人間がそのまま閉じ込められたり。
 だが、今回は違った。
 と、私は何を悠長に考え事をしているのであろう。
 井戸水は、すでに足首を飲み込んでいて……
 なんだ??苦しいな。爆発、汚水による窒息死、餓死。いつか私は死ぬはずであろう。
 なら、この死に方は、とても幸せなものなのではなかろうか??
 私はここで死ぬ。死んでどうなるのであろうか??土に帰るのか??それとも転生するのであろうか------------------------ーーーーーーーーーーー_________________________________________________________________________
 苦しく無い。
 ここは……
 黄昏に聳え立つ大理石の宮殿が見える。
 私は、足を引きずり、足元の花たちを踏み抜きながら、宮殿の階段を登った。
"ここは天国か??私は多分死んだのであろう。だから今、私は大理石の階段を登っているのであろう。
 宮殿の玉座に座っていたのは……
「やぁ迷える子羊ちゃん。こんにちは😃」
 女とも男とも、老人とも子供とも言い難い容姿。
「アレ?? まだ夕方だよね。こんばんはにはまだ早い気がするんだが?? 」
 私と同じ立場に立たされた者は、みんな同じ問いをしたであろう。
「あなたが神ですか??」
 玉座に座っていた女?は首を横に振った。
「神か??カミならいるよ、私の隣にいる人間、彼こそがカミだよ。」
 彼女に言われてようやく気がついた。二十代後半と思われる黒服の男が、じっと私を見ていた。
 私は彼を見るやいなや、いきなり食いかかった。今思えば、あの時の私は、とても愚かだったと思われる。
「あなたが神ですか?? ならなぜ神族の横暴に対して見て見ぬふりを続けるのです?? なぜ人間を救わない??」
 すると玉座のソレが、先に答えた。
「救えないのさ、僕達じゃ。だから言っただろ蝠岡、世界は電脳化しようって。これじゃエラーをデリートできないじゃ無いか。」
 黒服は玉座のソレに、ため息混じりの言葉を返した。
「そうだ、デリート出来てしまうと困る。私も君も、いずれ奴ら大家族同盟に捕まる。その時、ボタン一つで私の創った世界がなかったことになってしまうのは我慢ならない。」
「それに、この計画は元々、奴らが主導したプロジェクトじゃないか。私は自分の責務を最後まで真っ当したまでのこと。梯子を外して来たのは奴らだ。まぁまざか、ソースまでそのまま書き換えられるとは思わなかったがな。私は一夜でテロリストに転身だ。」
 玉座のソレは鼻で笑った。
「その腹いせに世界を一から作り上げるなんて、キミもキミだと思うけど。」
 この方々は何を言っているのだろう。
「あの……神というのは、そんなにたくさんいらっしゃるのでしょうか?? 」
 その問いに黒服が答えてくれた。
「神……か。私は神を見たことが無いから、いるとも言えないし、いないとも言えない。」
「さっき、玉座の方は、あなたをカミだと……」
 玉座のソレは、肘掛けに顎をついた。
「で、キミ?やるのやらないの?? いや、別にキミじゃなくても良いんだよ。こんな役、キミじゃなくても務まるんだからさ。」
 私は混乱してた。
「やる?? 何を。ちっぽけな私に何が出来る?? 」
「だ・か・ら神族のデリートだよ。神族を一人残らずこの世から葬り去ること。あ、サンプルに二、三体置いといてね。蝠岡くんがよりをかけて創った最・高・傑・作・もったいないでしょ?? 」
"この女? は何を言っているのであろう。私は虐げられる側の存在であったから、あんな薄暗い場所で、家畜の真似事をしていたのだ。奴らをこの世から一匹残らず葬り去れるなら、最初からそうしている。"
「おっ、キミの決意、確かに受け取ったよ。別に返事はいらない。だって僕が決めたから。そうだな。キミに奴等神族勝つための力をやろう。」

「はっ」
 気がつくと、彼は坑道の外に立っていた。雪が降っている。寒い。
「私は確か、坑道で溺れて……ソレで。」
「なんだ生きているじゃないか。」
 不意に、私の三メートル先で雷が落ちた。
 凄まじい衝撃派とともに、死の匂いが周囲に広がっていく……
 その波に触れた生物は、神族、人間関係なく「変異」していった。
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