神の壜ー零

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
上 下
2 / 109
代行者

一番最初の啓示

しおりを挟む
 次の日、私は何事もなかったように持ち場へ戻った。
 あの女の手当が上手いのか、それとも私が丈夫なのか。
 だが身体が丈夫であるかそうでないかというのは、どうでも良いことなのだ。彼ら神族が蔓延るこの世界では……
 彼ら神族そうだ、まず君達には神族というものが何かを説明しなければならない。
 君達は神と聞いて、神聖なものや、荘厳なものを想像するであろう。
 私たちが、人の皮を被った獣だというのなら……そうだな、彼らは天使の皮を被った悪魔だ。
 彼らには人間には無い力がある、魔法がある。それゆえに、彼らが世界を牛耳るのは容易かった。
 彼らは周辺諸国へ侵略を繰り返すと、帝国歴1052年を神歴元年と改め、首都アグスを中心とし、グラン帝国を設立した。
 それからというものの、神族は我ら人類を家畜とし、各地の収容所で飼っている。
 私が今いるシベリアという場所も、その収容所の一つだ。
 もはやこの世に、家畜以外の人類は存在しない。
 あとは彼ら悪魔だけだ。
「逃げろ!!崩落するぞ。」
 奥で坑夫たちの悲鳴が聞こえる。どこぞのバカが、水脈を引き当てたのだろう。
 こういうことは割と良くあった。坑道内にガスが充満して、ダイナマイトを使った人間が、坑道ごと爆発四散したり、急に大雨が降り、坑道内の人間がそのまま閉じ込められたり。
 だが、今回は違った。
 と、私は何を悠長に考え事をしているのであろう。
 井戸水は、すでに足首を飲み込んでいて……
 なんだ??苦しいな。爆発、汚水による窒息死、餓死。いつか私は死ぬはずであろう。
 なら、この死に方は、とても幸せなものなのではなかろうか??
 私はここで死ぬ。死んでどうなるのであろうか??土に帰るのか??それとも転生するのであろうか------------------------ーーーーーーーーーーー_________________________________________________________________________
 苦しく無い。
 ここは……
 黄昏に聳え立つ大理石の宮殿が見える。
 私は、足を引きずり、足元の花たちを踏み抜きながら、宮殿の階段を登った。
"ここは天国か??私は多分死んだのであろう。だから今、私は大理石の階段を登っているのであろう。
 宮殿の玉座に座っていたのは……
「やぁ迷える子羊ちゃん。こんにちは😃」
 女とも男とも、老人とも子供とも言い難い容姿。
「アレ?? まだ夕方だよね。こんばんはにはまだ早い気がするんだが?? 」
 私と同じ立場に立たされた者は、みんな同じ問いをしたであろう。
「あなたが神ですか??」
 玉座に座っていた女?は首を横に振った。
「神か??カミならいるよ、私の隣にいる人間、彼こそがカミだよ。」
 彼女に言われてようやく気がついた。二十代後半と思われる黒服の男が、じっと私を見ていた。
 私は彼を見るやいなや、いきなり食いかかった。今思えば、あの時の私は、とても愚かだったと思われる。
「あなたが神ですか?? ならなぜ神族の横暴に対して見て見ぬふりを続けるのです?? なぜ人間を救わない??」
 すると玉座のソレが、先に答えた。
「救えないのさ、僕達じゃ。だから言っただろ蝠岡、世界は電脳化しようって。これじゃエラーをデリートできないじゃ無いか。」
 黒服は玉座のソレに、ため息混じりの言葉を返した。
「そうだ、デリート出来てしまうと困る。私も君も、いずれ奴ら大家族同盟に捕まる。その時、ボタン一つで私の創った世界がなかったことになってしまうのは我慢ならない。」
「それに、この計画は元々、奴らが主導したプロジェクトじゃないか。私は自分の責務を最後まで真っ当したまでのこと。梯子を外して来たのは奴らだ。まぁまざか、ソースまでそのまま書き換えられるとは思わなかったがな。私は一夜でテロリストに転身だ。」
 玉座のソレは鼻で笑った。
「その腹いせに世界を一から作り上げるなんて、キミもキミだと思うけど。」
 この方々は何を言っているのだろう。
「あの……神というのは、そんなにたくさんいらっしゃるのでしょうか?? 」
 その問いに黒服が答えてくれた。
「神……か。私は神を見たことが無いから、いるとも言えないし、いないとも言えない。」
「さっき、玉座の方は、あなたをカミだと……」
 玉座のソレは、肘掛けに顎をついた。
「で、キミ?やるのやらないの?? いや、別にキミじゃなくても良いんだよ。こんな役、キミじゃなくても務まるんだからさ。」
 私は混乱してた。
「やる?? 何を。ちっぽけな私に何が出来る?? 」
「だ・か・ら神族のデリートだよ。神族を一人残らずこの世から葬り去ること。あ、サンプルに二、三体置いといてね。蝠岡くんがよりをかけて創った最・高・傑・作・もったいないでしょ?? 」
"この女? は何を言っているのであろう。私は虐げられる側の存在であったから、あんな薄暗い場所で、家畜の真似事をしていたのだ。奴らをこの世から一匹残らず葬り去れるなら、最初からそうしている。"
「おっ、キミの決意、確かに受け取ったよ。別に返事はいらない。だって僕が決めたから。そうだな。キミに奴等神族勝つための力をやろう。」

「はっ」
 気がつくと、彼は坑道の外に立っていた。雪が降っている。寒い。
「私は確か、坑道で溺れて……ソレで。」
「なんだ生きているじゃないか。」
 不意に、私の三メートル先で雷が落ちた。
 凄まじい衝撃派とともに、死の匂いが周囲に広がっていく……
 その波に触れた生物は、神族、人間関係なく「変異」していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蒼海のシグルーン

田柄満
SF
深海に眠っていた謎のカプセル。その中から現れたのは、機械の体を持つ銀髪の少女。彼女は、一万年前に滅びた文明の遺産『ルミノイド』だった――。古代海洋遺跡調査団とルミノイドのカーラが巡る、海と過去を繋ぐ壮大な冒険が、今始まる。 毎週金曜日に更新予定です。

ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~

俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。 が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。 現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。 しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。 相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。 チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。 強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。 この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。 大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。 初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。 基本コメディです。 あまり難しく考えずお読みください。 Twitterです。 更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。 https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

3024年宇宙のスズキ

神谷モロ
SF
 俺の名はイチロー・スズキ。  もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。  21世紀に生きていた普通の日本人。  ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。  今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。

裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G
SF
銀河系の地球と反対側。田舎の惑星に暮らす美少女(自称)は徘徊、グルメ、学校、仕事に忙しく生活しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

落ちこぼれの魔術師と魔神

モモ
ファンタジー
平凡以下の成績しかなかったはずの坂本・翔護の元に桜魔魔術学院から推薦入学の話が来た事により、彼の運命は大きく変わった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...