闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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勇者になるために

姑獲鳥の鎧

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[閣下……閣下…… ]
 人?
 ここにはダミアンさん以外いないはずだ。
 また僕はおかしな空間に飛ばされてしまったのか。
 僕はため息をつきながら、目を擦り、何回目か分からない意識の覚醒をした。
「…… 」
 当然人なんていない。あるのは滝行を行っている自分と、打ち付ける水の音だけ。
 本当に僕はおかしくなってしまったのだろうか?
 それも無理は無い。
 むしろ人間の反応として正しい。
 身体が順応して来ているのだ。

 おかしなこの世界へと。

[閣下!! しっかりなされ!! ]

 ようやくソレが、伝説の武具、 姑獲鳥こかくちょうの鎧から放たれていることに気付いた。
 そういや、ポート王からそんなモノを貰ったなと、記憶を呼び戻す。
[もう五時間もこうして滝に打たれておられる。一度身体を温めなくては、身体を壊してしまいまする。]
 僕はゾロゾロと土手を目指して歩き出す。
 そして、地に足を付けると、姑獲鳥の鎧はすぐさま、鎧の力で僕を温めた。
「ありがとう…… 」
 僕は、そのまま力無く、地面に尻をついた。
[例には及ませぬ。某に出来ることは、コレぐらいですから。]
 僕は頭で手を組むと、そのまま寝転がった。
[気分が優れないようで。]
「なぁ姑獲鳥? 」
[姑獲とお呼び下さいませ。]
「分かった。」
[なんですか、閣下? ]
「みんな自分勝手なんだよ。神も人間も。」
「周りに振り回されてばっかりなんだ。」
「旅の仲間は、味方に裏切られるし、僕は奴隷の身だった見たいで、奴隷商に目をつけられるし、呪いを解いて、帰ってきたと思ったら反逆者扱い。ソレからサウスランドで、一悶着あったと思ったら、今度は帰国しろと来た。」
「神は神だ。僕をディアストのことを討伐するためのコマとして扱おうとして来た。」
「みんな、僕が勇者だからだって、そういう都合のいい理由で納得させようとするけど、それは違う。僕が振り回されているのは、僕に力がないから。」
「魔王みたいに強くなれば、僕もこの理不尽に打ち勝てるかな? 」
[じゃあ、閣下は魔王になれば良かったのでは? ]
[オイ、姑獲ッ!! ]
 ドゥルガがカタカタと揺れた。
[閣下が勇者になりたかった理由。それはもう貴方自身が一番良く気づいているでしょう。]
 そうだ。
 リワン姉さん。
 僕は最初からみんなのことなんて見ていなかった。
 武具を集めることに躍起になっていたのも、それでいて魔王軍の幹部たちの狼藉を許していたのも、全部僕のエゴ。
 僕はつくづく勇者には向いていないと思う。
 ダミアンさんに言われた通り、だから僕には災難ばかりが降りかかった。
 自業自得だ。
[閣下はとても殿に似ておられる。]
「殿下? 」
 少し考えてから、誰のことを言っているのかが分かった。
 彼が使えた人間は後にも先にも彼一人。
「伝説の勇者に? 僕が? 」
[左様でございまする。]
 姑獲は続けた。
[殿下は、スカサア陛下をとても慕っておられました。]
 それは彼女のあの境遇からも見てとれた。
 兜と一緒に数千年も閉じ込めていたのだから。
 争いを避けされる苦肉の策として、彼女を人柱とした。
 最初はそう思っていた。
 でも白竜との会話を聞いて僕は理解した。
 彼が、女王を時空に閉じ込めたのは、彼なりの不器用な愛だということに。
[『人を恨むな。』殿下からの伝言です。次の勇者と出会ったら伝えるようにと。]
「人を恨むな……か随分残酷なことを言うんだね君の相棒は。」
[使命とエゴは同一の存在では無い。]
[ですが、相反する存在でも……また無い。]
[『もしも人を恨んでしまうのなら、自分のエゴを思い出せ。』と。]
[殿下、御武運を。]
 忘れたわけじゃ無い。
 僕は使命という側面ばかりを重く見過ぎていたかも知れない。
 僕は伝説の勇者では無い。
 その伝説の勇者が、そう言っているなら尚更だ。
 僕には仲間がいる。
 今も前線で僕の帰りを待つ仲間たちが。
「少しぐらい彼らを信用しても良いんじゃ無いかな? 」
 僕が今すべきことは、時空間魔術を身につけること。
 そして

 リワン姉さん……

 魔王を倒して彼女と結婚する。
 婚約した彼女と。
 記憶喪失で何も知らない僕に、手取り足取り教えてくれた彼女と。

--- 次元の腕パラレル・スクランブル---

 深く暗い虚空spaceへと落とされる。
 やがて無数の星たちが輝き、瞬き、僕の右腕へと集まってくる。
 やがてそれは、僕の掌の中で、鍵型を形成した。
 誰に言われたわけでも無い。
 誰に教えられたわけでも無い。
 僕はその宇宙spaceの鍵穴に、を捩じ込んだ。
 は上手く回らない。
 錆びついているのか……
 それも少し違った。
 だが、鍵穴が間違っているわけでは無い。
 手応えがあった。
 重い、シリンダー錠は動かない。
 だけど、僕はコレ回さなくてはならない。
 コレは使命では無い
 義務でも無いし
 世界のためでも無い

みんなフォースたちのために!! 」

 錠が解けた。
 崩れるように空白spaceは崩れ去り、中から金色の光が溢れ出る。
 瞬い光に手覆い、やがて焦点を合わせた僕は、その時空space timeを見た。
「こんにちは、初めましてかな。ようこそ僕の空間へ。ずっと君がここに辿り着くのを待っていたよ。」
 そこには一人の青年が佇んでいた。
 
 

 
 
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