闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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呪いを解くため

コレから

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「二人とも大丈夫? 」
 ナインスさんとトゥエルブスさんがこちらにやってくる。
 彼女たちは、事情を察すると僕らの邪魔にならないように、隠れていてくれた。
 正直、彼女たちを庇いながら、魔眼を持ったセブンスと戦うことは出来なかったので助かった。
 というか、非戦闘員の彼女たちにとっても、こういうことは日常茶飯事なのかもしれない。
 というか彼女たちは、本当に……
「もー大丈夫だよ勇者くん。ホラ、コレ見て。教皇様の封書。ちゃんとセブンスを処刑するようにって。」
「でもなんでここが…… 」
 散々人に裏切られたせいで、僕は他人を信じられなくなっていた。
 アスピも肩をこわばらせて、杖を二人に向けている。
「ギュッ。」
 温かく、柔らかいものに、僕たちは抱きしめられた。
「ごめんね。アスィールちゃんアスピちゃん。気づいてあげられなくて。」
 僕たちが落ち着いたところで、ナインスさんは、僕たちを優しく離すと、目を見開いて僕たちと話した。
「バロア王から聞いたの。君たちが、フォースを助けるためにノースランドへ向かったって。」
「王都に行ったら、勇者君たちが、白竜を倒しに行ったって言うから、もしものことがあったらダメだと思ってね。」
 良かった。二人は僕たちの敵ではない。
「ナインスさん。」
 僕は彼女に思わず泣きついてしまった。
 飛鷹の反動で、身体が衰弱してるからか、とにかく、コレまで押さえていたものが溢れ出して、どう表現したら良いかわからない。
「おお、どうしたのアスィールちゃん。」
「僕の両親が奴隷に。僕の両親はここに住んでいたんです。」
 彼女は人差し指を顎に当て、腕を立てた。
「確か、マスター・リーの弟子はみんな孤児だったって。」 
 彼女は自体を理解したのか、それ以上僕に何も聞かなかった。
「分かったわアスィールちゃん。私たちでなんとかしてみる……けど。」
「教皇もファーストも近いうちに異端審問にかけられると思うの。」
 アスピが立ち上がった。
「それってつまり。」
「ごめんね勇者くん。できるだけ頑張ってみる。だけど、コレから忙しくなって、ビギニアも物騒になるし。」
「両親の件も、継続して行なっていた、リワンさんの孤児院への援助も難しくなるかもしれない。」
「悪く思わないでねアスィールちゃん。教会から孤児院へと援助を続ければ、審問官たちの目は、彼女たちにも向けられるかもしれない。」
 今まで、ウェストサイドのみんなには色々とお世話になっていた。
 だが、それも自分でどうにかする時期がやって来たらしい。
「ナインスさん、トゥエルブスさん。ありがとう。」
「勇者くん…… 」
「何か困ったことがあったら、僕に言ってください。何がなんでも助けに行くので。」
「逞しくなったわね。」
 ナインスさんにまた抱きしめられる。
 スキンシップが激しい人だ。
 だからこそ、彼女の胸の中にいると安心するのだが。
 確か初対面の時もこんな感じだったっけ?
 彼女たちは、スクロールを広げると、そのまま天高く飛んでいってしまった。
「さぁ、行くわよ。フォースの呪いを解かないと。」
「うん。」
 僕たちは王都へ向けて歩き始める。
「ねえ、馭者は? 」
「即死だった。冒険者ならまだしも、流石に私でも死んだ人間は生き返らせないから。」
「そう…… 」
「それより。」
 アスピが僕の脳みそへと回復魔術を充てる。
「僕のこと馬鹿にしてるの? 」
「してる……けど、そう言う意味じゃない。」
「隠しても無駄よ。無茶をしすぎたせいで、身体中ボロボロなんでしょ。」
「もう無茶したらダメだから。飛鷹とか言うやつ、禁止。」
「ごめんなさい。」
「怒ってないって。」
「それより。アレよ。アンタの孤児院への援助ってやつ。」
 コレからはもう十二使徒のみんなからの援助は受けられない。
 それどころか、彼らがコレからも存続できるかは怪しい。
「仕送りは僕が旅路で働いてするから。心配ないよ。元々、の仕事だったわけだし。」
「私も手伝うから。」
 え? 今なんて?
「おーい大丈夫? そんな水臭いわね。そんな冒険者の真似事なんて、なら楽勝よ。」
 私たち……そうだ。早くフォースを。
「ホラ、戻って来たわよ。あの辛気臭い城に。」
 僕たちはいつのまにか王都へと戻って来ていた。
「どうするの? 例の件。白竜の角は貰えたわけだし。」
「もちろん彼女に伝えるさ。全部。」
「どーなっても知らないわよ。」
「どうせ、この国が態度を改めないのなら、白竜はまた人間を襲うようになる。そうなっても、ここに住んでいる人たちは、いつか餓死する。」
「貴方、一生この地の人間から嫌われるかも知れないわよ。」
「人から好かれることが勇者の使命じゃないよ。」
「僕の行動で、この先この国がどうなるかは僕にも分からない。」
「だけど、コレが僕の答えなんだ。偽善的で独善的で、無責任な答えだけど。」
 そう言うと、彼女は白けた目で、先に進んでいってしまった。
「良いんじゃない? アンタらしい答えで。」
 日が落ち、月が上り始める。
 ノースランドの昼は短い。
 こんなんじゃ作物を取るのは無理だろうな。
「今日の謁見はやめておいた方が良いわね。宿でもとりましょう。」
「分かった。」
 僕たちは街の正門へと急いだ。
 
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