49 / 104
呪いを解くため
コレから
しおりを挟む
「二人とも大丈夫? 」
ナインスさんとトゥエルブスさんがこちらにやってくる。
彼女たちは、事情を察すると僕らの邪魔にならないように、隠れていてくれた。
正直、彼女たちを庇いながら、魔眼を持ったセブンスと戦うことは出来なかったので助かった。
というか、非戦闘員の彼女たちにとっても、こういうことは日常茶飯事なのかもしれない。
というか彼女たちは、本当に……
「もー大丈夫だよ勇者くん。ホラ、コレ見て。教皇様の封書。ちゃんとセブンスを処刑するようにって。」
「でもなんでここが…… 」
散々人に裏切られたせいで、僕は他人を信じられなくなっていた。
アスピも肩をこわばらせて、杖を二人に向けている。
「ギュッ。」
温かく、柔らかいものに、僕たちは抱きしめられた。
「ごめんね。アスィールちゃんアスピちゃん。気づいてあげられなくて。」
僕たちが落ち着いたところで、ナインスさんは、僕たちを優しく離すと、目を見開いて僕たちと話した。
「バロア王から聞いたの。君たちが、フォースを助けるためにノースランドへ向かったって。」
「王都に行ったら、勇者君たちが、白竜を倒しに行ったって言うから、もしものことがあったらダメだと思ってね。」
良かった。二人は僕たちの敵ではない。
「ナインスさん。」
僕は彼女に思わず泣きついてしまった。
飛鷹の反動で、身体が衰弱してるからか、とにかく、コレまで押さえていたものが溢れ出して、どう表現したら良いかわからない。
「おお、どうしたのアスィールちゃん。」
「僕の両親が奴隷に。僕の両親はここに住んでいたんです。」
彼女は人差し指を顎に当て、腕を立てた。
「確か、マスター・リーの弟子はみんな孤児だったって。」
彼女は自体を理解したのか、それ以上僕に何も聞かなかった。
「分かったわアスィールちゃん。私たちでなんとかしてみる……けど。」
「教皇もファーストも近いうちに異端審問にかけられると思うの。」
アスピが立ち上がった。
「それってつまり。」
「ごめんね勇者くん。できるだけ頑張ってみる。だけど、コレから忙しくなって、ビギニアも物騒になるし。」
「両親の件も、継続して行なっていた、リワンさんの孤児院への援助も難しくなるかもしれない。」
「悪く思わないでねアスィールちゃん。教会から孤児院へと援助を続ければ、審問官たちの目は、彼女たちにも向けられるかもしれない。」
今まで、ウェストサイドのみんなには色々とお世話になっていた。
だが、それも自分でどうにかする時期がやって来たらしい。
「ナインスさん、トゥエルブスさん。ありがとう。」
「勇者くん…… 」
「何か困ったことがあったら、僕に言ってください。何がなんでも助けに行くので。」
「逞しくなったわね。」
ナインスさんにまた抱きしめられる。
スキンシップが激しい人だ。
だからこそ、彼女の胸の中にいると安心するのだが。
確か初対面の時もこんな感じだったっけ?
彼女たちは、スクロールを広げると、そのまま天高く飛んでいってしまった。
「さぁ、行くわよ。フォースの呪いを解かないと。」
「うん。」
僕たちは王都へ向けて歩き始める。
「ねえ、馭者は? 」
「即死だった。冒険者ならまだしも、流石に私でも死んだ人間は生き返らせないから。」
「そう…… 」
「それより。」
アスピが僕の脳みそへと回復魔術を充てる。
「僕のこと馬鹿にしてるの? 」
「してる……けど、そう言う意味じゃない。」
「隠しても無駄よ。無茶をしすぎたせいで、身体中ボロボロなんでしょ。」
「もう無茶したらダメだから。飛鷹とか言うやつ、禁止。」
「ごめんなさい。」
「怒ってないって。」
「それより。アレよ。アンタの孤児院への援助ってやつ。」
コレからはもう十二使徒のみんなからの援助は受けられない。
それどころか、彼らがコレからも存続できるかは怪しい。
「仕送りは僕が旅路で働いてするから。心配ないよ。元々、アスィールの仕事だったわけだし。」
「私も手伝うから。」
え? 今なんて?
「おーい大丈夫? そんな水臭いわね。そんな冒険者の真似事なんて、私たちなら楽勝よ。」
私たち……そうだ。早くフォースを。
「ホラ、戻って来たわよ。あの辛気臭い城に。」
僕たちはいつのまにか王都へと戻って来ていた。
「どうするの? 例の件。白竜の角は貰えたわけだし。」
「もちろん彼女に伝えるさ。全部。」
「どーなっても知らないわよ。」
「どうせ、この国が態度を改めないのなら、白竜はまた人間を襲うようになる。そうなっても、ここに住んでいる人たちは、いつか餓死する。」
「貴方、一生この地の人間から嫌われるかも知れないわよ。」
「人から好かれることが勇者の使命じゃないよ。」
「僕の行動で、この先この国がどうなるかは僕にも分からない。」
「だけど、コレが僕の答えなんだ。偽善的で独善的で、無責任な答えだけど。」
そう言うと、彼女は白けた目で、先に進んでいってしまった。
「良いんじゃない? アンタらしい答えで。」
日が落ち、月が上り始める。
ノースランドの昼は短い。
こんなんじゃ作物を取るのは無理だろうな。
「今日の謁見はやめておいた方が良いわね。宿でもとりましょう。」
「分かった。」
僕たちは街の正門へと急いだ。
ナインスさんとトゥエルブスさんがこちらにやってくる。
彼女たちは、事情を察すると僕らの邪魔にならないように、隠れていてくれた。
正直、彼女たちを庇いながら、魔眼を持ったセブンスと戦うことは出来なかったので助かった。
というか、非戦闘員の彼女たちにとっても、こういうことは日常茶飯事なのかもしれない。
というか彼女たちは、本当に……
「もー大丈夫だよ勇者くん。ホラ、コレ見て。教皇様の封書。ちゃんとセブンスを処刑するようにって。」
「でもなんでここが…… 」
散々人に裏切られたせいで、僕は他人を信じられなくなっていた。
アスピも肩をこわばらせて、杖を二人に向けている。
「ギュッ。」
温かく、柔らかいものに、僕たちは抱きしめられた。
「ごめんね。アスィールちゃんアスピちゃん。気づいてあげられなくて。」
僕たちが落ち着いたところで、ナインスさんは、僕たちを優しく離すと、目を見開いて僕たちと話した。
「バロア王から聞いたの。君たちが、フォースを助けるためにノースランドへ向かったって。」
「王都に行ったら、勇者君たちが、白竜を倒しに行ったって言うから、もしものことがあったらダメだと思ってね。」
良かった。二人は僕たちの敵ではない。
「ナインスさん。」
僕は彼女に思わず泣きついてしまった。
飛鷹の反動で、身体が衰弱してるからか、とにかく、コレまで押さえていたものが溢れ出して、どう表現したら良いかわからない。
「おお、どうしたのアスィールちゃん。」
「僕の両親が奴隷に。僕の両親はここに住んでいたんです。」
彼女は人差し指を顎に当て、腕を立てた。
「確か、マスター・リーの弟子はみんな孤児だったって。」
彼女は自体を理解したのか、それ以上僕に何も聞かなかった。
「分かったわアスィールちゃん。私たちでなんとかしてみる……けど。」
「教皇もファーストも近いうちに異端審問にかけられると思うの。」
アスピが立ち上がった。
「それってつまり。」
「ごめんね勇者くん。できるだけ頑張ってみる。だけど、コレから忙しくなって、ビギニアも物騒になるし。」
「両親の件も、継続して行なっていた、リワンさんの孤児院への援助も難しくなるかもしれない。」
「悪く思わないでねアスィールちゃん。教会から孤児院へと援助を続ければ、審問官たちの目は、彼女たちにも向けられるかもしれない。」
今まで、ウェストサイドのみんなには色々とお世話になっていた。
だが、それも自分でどうにかする時期がやって来たらしい。
「ナインスさん、トゥエルブスさん。ありがとう。」
「勇者くん…… 」
「何か困ったことがあったら、僕に言ってください。何がなんでも助けに行くので。」
「逞しくなったわね。」
ナインスさんにまた抱きしめられる。
スキンシップが激しい人だ。
だからこそ、彼女の胸の中にいると安心するのだが。
確か初対面の時もこんな感じだったっけ?
彼女たちは、スクロールを広げると、そのまま天高く飛んでいってしまった。
「さぁ、行くわよ。フォースの呪いを解かないと。」
「うん。」
僕たちは王都へ向けて歩き始める。
「ねえ、馭者は? 」
「即死だった。冒険者ならまだしも、流石に私でも死んだ人間は生き返らせないから。」
「そう…… 」
「それより。」
アスピが僕の脳みそへと回復魔術を充てる。
「僕のこと馬鹿にしてるの? 」
「してる……けど、そう言う意味じゃない。」
「隠しても無駄よ。無茶をしすぎたせいで、身体中ボロボロなんでしょ。」
「もう無茶したらダメだから。飛鷹とか言うやつ、禁止。」
「ごめんなさい。」
「怒ってないって。」
「それより。アレよ。アンタの孤児院への援助ってやつ。」
コレからはもう十二使徒のみんなからの援助は受けられない。
それどころか、彼らがコレからも存続できるかは怪しい。
「仕送りは僕が旅路で働いてするから。心配ないよ。元々、アスィールの仕事だったわけだし。」
「私も手伝うから。」
え? 今なんて?
「おーい大丈夫? そんな水臭いわね。そんな冒険者の真似事なんて、私たちなら楽勝よ。」
私たち……そうだ。早くフォースを。
「ホラ、戻って来たわよ。あの辛気臭い城に。」
僕たちはいつのまにか王都へと戻って来ていた。
「どうするの? 例の件。白竜の角は貰えたわけだし。」
「もちろん彼女に伝えるさ。全部。」
「どーなっても知らないわよ。」
「どうせ、この国が態度を改めないのなら、白竜はまた人間を襲うようになる。そうなっても、ここに住んでいる人たちは、いつか餓死する。」
「貴方、一生この地の人間から嫌われるかも知れないわよ。」
「人から好かれることが勇者の使命じゃないよ。」
「僕の行動で、この先この国がどうなるかは僕にも分からない。」
「だけど、コレが僕の答えなんだ。偽善的で独善的で、無責任な答えだけど。」
そう言うと、彼女は白けた目で、先に進んでいってしまった。
「良いんじゃない? アンタらしい答えで。」
日が落ち、月が上り始める。
ノースランドの昼は短い。
こんなんじゃ作物を取るのは無理だろうな。
「今日の謁見はやめておいた方が良いわね。宿でもとりましょう。」
「分かった。」
僕たちは街の正門へと急いだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる