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呪いを解くため
仇
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---疾風---
僕は怒りに任せてセブンスへと突っ込んだ。
「甘えよクソガキ。」
セブンスは、少なくともフォースを下している。
なら、彼のスピードについていけたと考えるのが妥当だ。
イースト・ランドの寺院の書物によれば、勇者とは雷を自在に操る存在だと。
雷を落とし、敵を焼き尽くしたり、剣に稲妻を宿して、迸る刃で敵を斬り裂いたり。
なら
その身に雷を宿した勇者は僕が初めてだな!!
雷神砲を自分の身に宿す
[サンダー・エンチャント]
---飛鷹---
全神経系を己の稲妻で掌握し、身体能力を限界まで引き出す。
僕の顔へと迫るセブンスの周り蹴りを、紙一重でかわす。
疾風と違うところ……
それは世界がゆっくりと流れることだ。
自身の脳の能力を限界まで引き出すことによって、意識が加速し、相対的に世界が停滞する。
五感全ての感覚が、ゆっくり流れてくることにより、嘔吐中枢が刺激され、吐き気を催す。
だが、それがなんだというのか。
師匠を失い、両親が奴隷にされ、信じていた仲間に裏切られ……
いや、それも違う。
師匠は救える。両親のことだって。
目の前の敵を倒せば、全て成し遂げられる。
[お い 、 ア ス ィ ー ル !! ]
自身の盾から何かが聞こえるような気がする。
僕の脳には、雑音しか流れてこない。
シャットアウトする。
全ての感覚を。
目の前の敵を斬るためだけに。
驚く裏切り者の顔、その百二十秒にも近い長い長い隙を、僕が見逃す筈が無かった。
股を開き、腰を限界まで捻り、セブンスを支えている左脚に竜宮の剣を……
「ピピッ。」
怪しげな音と共にセブンスの赤くなった右目が、毒々しく瞬く。
身体が石のように硬くなる。
邪魔っっだ!!
僕は僕自身にまとわりつくその何かを力づくで振り払った。
身体がミシミシと嫌な音を立てたような気がする。
僕の竜宮の剣が、セブンスの法衣の切れ端を切り取る。
彼は数回バックステップをすると、勢いを殺すようにバランスをとり、不適な笑みを浮かべた。
「なるほどね。数千年前の勇者が、魔王に勝った理由がなんと無く分かりましたよ。その伝説の武具とやらは本当に厄介ですね。」
すぐに立ち上がり、左手の樹木に飛びつき、すぐさま蹴り飛ばす。
単純なスピード勝負では勝てない。
僕はスピードの緩急を思い出した。
木々を乗り継ぎながら、セブンスの後ろへと回り込む。
彼はその毒々しい魔眼で、僕の動きを眼で追っていた。
[ギガ・スパーク]
アスピだ。
セブンスはその攻撃をモロに喰らい、身体を黒く焦がしていた。
さっきの無反応だった彼とは違う。
アスピの魔術が無効化されたのは、魔眼の力であることは間違いない。
発動のトリガーは意識か、それとも視認か?
僕は選択肢を2つに絞る。
そして上から彼へ向けて急降下する。
---竜巻招来---
回転しながら、彼の首を狙う。
「まただ。」
僕は事前に拾っておいた雪の塊をセブンスへとぶつけて、目眩しをした。
予想通り、あの僕を取り巻く何かが身体を拘束することはなかった。
「うおおぉぉぉぉ。」
溢れ出す殺意で、セブンスを斬り裂こうと試みるも、
「うぐっ。」
彼は無我夢中で、脚を振り上げると、僕の刃を脚で受け止め、そのまま弾き飛ばした。
キンッという乾いた音、靴底に何かを仕込んでいる。
樹木を蹴飛ばし、再び彼へと距離を詰める。
「かくなる上は!! 」
セブンスは顔を擦り、雪を振り払うと、右眼を見開いた。
彼が見ているのは僕ではなく、アスピ。
竜宮の剣の刃で、親指に切り口を入れると、溢れ出した真紅の液体を刀身へと流し込んだ。
刀身から、雪をも凍りつくような、凍てつく衝撃波が放り出される。
「ゴォォォォォォォ。」
セブンスの魔眼が効力を失い、アスピが息を吹き返す。
---紫電一閃---
神速を超えた雷が、彼の身体を貫いた。
が、流石と言ったところ。
確かに僕は、彼の腹部を斬り裂いた。
セブンスは腹部を押さえてはいるが、まだ倒れてはいない。
直後、全身に痛みが走る。
それと同時に、停滞した世界へと引き戻された。
「ぐっ。」
時間が流れ始めると共に、それまでに停滞していた全ての感覚が僕の脳を焼いた。
「流石ですよアスィールくん。君のような人間が竜宮の剣の能力を使いこなすなんてね。」
「何の代償も……無しに何かを手に入れることなんて出来ませんよ。」
「ほう……ならがここに来た意味はちゃんとあったみたいだね。」
アスピが僕の手を取る。
僕は立ち上がり、彼女と頷くと、彼女のギガ・スパークへ向けて雷を送る。
セブンスの魔眼がもう一度光った……が、それは僕らに呪いをかけるものでは無かった……のだと思う。
「そうか!! 見えたぞ。」
「そうか君が!! 次の…… 」
「魔族の未来に呪いあれ!! 」
---[ミナ・スパーク]---
アスピのギガ・スパークと僕の雷神砲が混じり合い、青く煌めく、聖なる雷が、セブンスを焼き尽くした。
彼は悲鳴を上げることはなく、痛みに悶えることもなく、ただただ笑っていた。
彼の身体が消し炭になるその一瞬まで。
僕は怒りに任せてセブンスへと突っ込んだ。
「甘えよクソガキ。」
セブンスは、少なくともフォースを下している。
なら、彼のスピードについていけたと考えるのが妥当だ。
イースト・ランドの寺院の書物によれば、勇者とは雷を自在に操る存在だと。
雷を落とし、敵を焼き尽くしたり、剣に稲妻を宿して、迸る刃で敵を斬り裂いたり。
なら
その身に雷を宿した勇者は僕が初めてだな!!
雷神砲を自分の身に宿す
[サンダー・エンチャント]
---飛鷹---
全神経系を己の稲妻で掌握し、身体能力を限界まで引き出す。
僕の顔へと迫るセブンスの周り蹴りを、紙一重でかわす。
疾風と違うところ……
それは世界がゆっくりと流れることだ。
自身の脳の能力を限界まで引き出すことによって、意識が加速し、相対的に世界が停滞する。
五感全ての感覚が、ゆっくり流れてくることにより、嘔吐中枢が刺激され、吐き気を催す。
だが、それがなんだというのか。
師匠を失い、両親が奴隷にされ、信じていた仲間に裏切られ……
いや、それも違う。
師匠は救える。両親のことだって。
目の前の敵を倒せば、全て成し遂げられる。
[お い 、 ア ス ィ ー ル !! ]
自身の盾から何かが聞こえるような気がする。
僕の脳には、雑音しか流れてこない。
シャットアウトする。
全ての感覚を。
目の前の敵を斬るためだけに。
驚く裏切り者の顔、その百二十秒にも近い長い長い隙を、僕が見逃す筈が無かった。
股を開き、腰を限界まで捻り、セブンスを支えている左脚に竜宮の剣を……
「ピピッ。」
怪しげな音と共にセブンスの赤くなった右目が、毒々しく瞬く。
身体が石のように硬くなる。
邪魔っっだ!!
僕は僕自身にまとわりつくその何かを力づくで振り払った。
身体がミシミシと嫌な音を立てたような気がする。
僕の竜宮の剣が、セブンスの法衣の切れ端を切り取る。
彼は数回バックステップをすると、勢いを殺すようにバランスをとり、不適な笑みを浮かべた。
「なるほどね。数千年前の勇者が、魔王に勝った理由がなんと無く分かりましたよ。その伝説の武具とやらは本当に厄介ですね。」
すぐに立ち上がり、左手の樹木に飛びつき、すぐさま蹴り飛ばす。
単純なスピード勝負では勝てない。
僕はスピードの緩急を思い出した。
木々を乗り継ぎながら、セブンスの後ろへと回り込む。
彼はその毒々しい魔眼で、僕の動きを眼で追っていた。
[ギガ・スパーク]
アスピだ。
セブンスはその攻撃をモロに喰らい、身体を黒く焦がしていた。
さっきの無反応だった彼とは違う。
アスピの魔術が無効化されたのは、魔眼の力であることは間違いない。
発動のトリガーは意識か、それとも視認か?
僕は選択肢を2つに絞る。
そして上から彼へ向けて急降下する。
---竜巻招来---
回転しながら、彼の首を狙う。
「まただ。」
僕は事前に拾っておいた雪の塊をセブンスへとぶつけて、目眩しをした。
予想通り、あの僕を取り巻く何かが身体を拘束することはなかった。
「うおおぉぉぉぉ。」
溢れ出す殺意で、セブンスを斬り裂こうと試みるも、
「うぐっ。」
彼は無我夢中で、脚を振り上げると、僕の刃を脚で受け止め、そのまま弾き飛ばした。
キンッという乾いた音、靴底に何かを仕込んでいる。
樹木を蹴飛ばし、再び彼へと距離を詰める。
「かくなる上は!! 」
セブンスは顔を擦り、雪を振り払うと、右眼を見開いた。
彼が見ているのは僕ではなく、アスピ。
竜宮の剣の刃で、親指に切り口を入れると、溢れ出した真紅の液体を刀身へと流し込んだ。
刀身から、雪をも凍りつくような、凍てつく衝撃波が放り出される。
「ゴォォォォォォォ。」
セブンスの魔眼が効力を失い、アスピが息を吹き返す。
---紫電一閃---
神速を超えた雷が、彼の身体を貫いた。
が、流石と言ったところ。
確かに僕は、彼の腹部を斬り裂いた。
セブンスは腹部を押さえてはいるが、まだ倒れてはいない。
直後、全身に痛みが走る。
それと同時に、停滞した世界へと引き戻された。
「ぐっ。」
時間が流れ始めると共に、それまでに停滞していた全ての感覚が僕の脳を焼いた。
「流石ですよアスィールくん。君のような人間が竜宮の剣の能力を使いこなすなんてね。」
「何の代償も……無しに何かを手に入れることなんて出来ませんよ。」
「ほう……ならがここに来た意味はちゃんとあったみたいだね。」
アスピが僕の手を取る。
僕は立ち上がり、彼女と頷くと、彼女のギガ・スパークへ向けて雷を送る。
セブンスの魔眼がもう一度光った……が、それは僕らに呪いをかけるものでは無かった……のだと思う。
「そうか!! 見えたぞ。」
「そうか君が!! 次の…… 」
「魔族の未来に呪いあれ!! 」
---[ミナ・スパーク]---
アスピのギガ・スパークと僕の雷神砲が混じり合い、青く煌めく、聖なる雷が、セブンスを焼き尽くした。
彼は悲鳴を上げることはなく、痛みに悶えることもなく、ただただ笑っていた。
彼の身体が消し炭になるその一瞬まで。
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