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イーストランドへ
謎の脅迫文
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「コレはコレは失礼しました。」
さっきまでの厳格な仕事人とはまるで違った。
「すみません。アスピ様が来られる前、バロア王宛にイースト・サイドから謎の封書が届きまして。」
「私たちの寺院から? 」
「とにかく、バロア王に会って頂かないと。」
兵士が僕の方をチラッと見る。
「彼の方が勇者ですか…… 」
「馬鹿っぽいし、弱いし、オマケに回復魔術は使えない。勇者と呼ぶには程遠い存在ですよ。」
「でも、彼の背中の盾を見て。この城に代々伝わっていたドゥルガの盾は、確かに彼を選んだ。」
「彼が勇者なのです。だから貴方も色眼鏡で彼を見るのはやめて。」
「ですが……あの盾は本来アスピ様のモノ…… 」
彼女が、兵士の肩に手を置いた。
「アレは私のモノじゃない。兄さんのものよ。」
兵士は考えて唸った。
「アスピ様からも説得をお願いします。」
それから兵士は僕の方へと向き返った。
「ビギニア王からの封書と、ウェスト・サイドの教皇様からの借用書も、金貨のインスタップと共に頂いております。」
「ですが、バロア王は、少々疑い深い方でございまして。」
僕はため息をついた。
「それはここの立地を見れば分かるよ。こんな高いところにこんなデカい建物を作って、オマケに結界まで張っちゃってさぁ。」
「病気の人が出たらどうするの? さっきフォースに試しに使って貰ったけど、回復魔術もかき消されたんだけど。」
兵士が小声になる。
「……ここで魔術使ったんですか? 」
「先ほども言って通りです。バロア王をあまり刺激しないで下さい。私たちの私生活のプライバシーにも関わるんですから。」
「城の中で病気人や訓練での怪我人が出た時は、バロア王の許可の元、治療が行われます。そもそも魔族がやって来ないので、魔術を使用する必要がないだろうというのが閣下のお考えです。小さな傷なら薬草でなんとかなりますし。」
「でも魔族が来ないのなら安心だね。」
フォースに兵士から引き離される。
「気をつけろ。側付がお前たちの行動を見ている。」
「ごめん。フォース。あまり内緒話はするものじゃないね。」
「さぁ、バロア王に謁見するために、オメカシしますよ。」
「え? 僕たちも? 」
「当たり前です。私も化粧はあまりしたくありませんが、この国一番偉い人間に会うのなら、それ相応の身だしなみをしなくては。」
* * *
「面を上げよ皆のモノ。」
おめかしを終えた僕たちは、王宮に招集され、片膝をついて、バロア王へ首を垂れている。
みんなが、顔を上げるのを確認して、僕も慌てて顔を上げる。
「アスィールか。そなただな、世の盾の能力を施行できたというのは…… 」
「はい!! 」
「ほう、威勢が良いな。今ここでソレを使ってみろ。」
僕は冷や汗をかいた。
今の状態のドゥルガが、僕に力を貸してくれるとは思わない。
オマケに彼女は竜宮の剣と性格相性が良くないと来た。
「どうした? アスィール殿。顔色が悪いようだが。」
兵士が僕に向けて剣を向け始める。
「この盾の能力、閣下はご存知ですか? この盾は魔術を弾き返す能力を持っています。魔術が使えない宮廷では…… 」
「よろしい。許可しよう。」
奥から魔術師がゾロゾロと流れて来て、僕に向けて杖を構えた。
「バロア王!! いくらなんでも横暴すぎます。彼を焼き殺すおつもりですか? 」
「アスピ。下がっていなさい。彼が一般魔道士の呪文すら受けられないというのなら、魔王の業火を受け止めるなど夢のまた夢。ここで剣を渡したところで、魔族側に塩を贈るだけだ。」
「ドゥルガ? 」
彼女は僕に答えてくれない。
[[[[[[エル・フレア]]]]]
魔道士たちが一斉に地獄の業火を放った。
刹那、火の玉たちは、明後日の方向へと弾き飛ばされ、壁に激突すると、それぞれが火柱を上げる。
[はぁ!! だから僕は君のことがイマイチ好きになれないわけ。分かる? そういうところだよ。]
「なんだ貴様は!! 」
[分からないかい?まぁ君とは話したく無かったんだけどね。こうやって怯えられて、祈祷師呼ばれたり、お祓いされたりしたら、僕もたまったもんじゃないからさぁ。]
「質問に答えろ。わ、私を誰だと思っている。」
[バロア王? 僕がドゥルガ。よろしくね。ボウ……コイツと旅をすることになったからよろしく。あと、不本意なんだけどさぁ。王様が所持している変態をコイツに貸してくあげてくれないかな? ]
「そのことなんだが…… 」
バロア王は例の封書を突きつけた。
封書には頭語も結語もなく、ただ。
『アスィールに竜宮の剣を渡すな。』
と、真っ赤なインクで書かれていた。
「バロア王、それは。」
「コレは赤のインクではないぞクリート。ホンモノの血だ。」
「イースト・サイドに、このことをよく思ってないモノが居る。ソナタたちとの関係を悪化させることは、何としても避けたい。」
「だがしかし、アスィール殿が本当に勇者であるということは分かった。」
「バロア王!! 」
彼がよろめき、側付がそれを支える。
「一晩考えさせてくれ。ソナタたちも疲れたであろう。今日はゆっくり休むと良い。」
それから、兵士たちに指図した。
「あと、お前ら。すまぬが、壁の修復を頼む。」
さっきまでの厳格な仕事人とはまるで違った。
「すみません。アスピ様が来られる前、バロア王宛にイースト・サイドから謎の封書が届きまして。」
「私たちの寺院から? 」
「とにかく、バロア王に会って頂かないと。」
兵士が僕の方をチラッと見る。
「彼の方が勇者ですか…… 」
「馬鹿っぽいし、弱いし、オマケに回復魔術は使えない。勇者と呼ぶには程遠い存在ですよ。」
「でも、彼の背中の盾を見て。この城に代々伝わっていたドゥルガの盾は、確かに彼を選んだ。」
「彼が勇者なのです。だから貴方も色眼鏡で彼を見るのはやめて。」
「ですが……あの盾は本来アスピ様のモノ…… 」
彼女が、兵士の肩に手を置いた。
「アレは私のモノじゃない。兄さんのものよ。」
兵士は考えて唸った。
「アスピ様からも説得をお願いします。」
それから兵士は僕の方へと向き返った。
「ビギニア王からの封書と、ウェスト・サイドの教皇様からの借用書も、金貨のインスタップと共に頂いております。」
「ですが、バロア王は、少々疑い深い方でございまして。」
僕はため息をついた。
「それはここの立地を見れば分かるよ。こんな高いところにこんなデカい建物を作って、オマケに結界まで張っちゃってさぁ。」
「病気の人が出たらどうするの? さっきフォースに試しに使って貰ったけど、回復魔術もかき消されたんだけど。」
兵士が小声になる。
「……ここで魔術使ったんですか? 」
「先ほども言って通りです。バロア王をあまり刺激しないで下さい。私たちの私生活のプライバシーにも関わるんですから。」
「城の中で病気人や訓練での怪我人が出た時は、バロア王の許可の元、治療が行われます。そもそも魔族がやって来ないので、魔術を使用する必要がないだろうというのが閣下のお考えです。小さな傷なら薬草でなんとかなりますし。」
「でも魔族が来ないのなら安心だね。」
フォースに兵士から引き離される。
「気をつけろ。側付がお前たちの行動を見ている。」
「ごめん。フォース。あまり内緒話はするものじゃないね。」
「さぁ、バロア王に謁見するために、オメカシしますよ。」
「え? 僕たちも? 」
「当たり前です。私も化粧はあまりしたくありませんが、この国一番偉い人間に会うのなら、それ相応の身だしなみをしなくては。」
* * *
「面を上げよ皆のモノ。」
おめかしを終えた僕たちは、王宮に招集され、片膝をついて、バロア王へ首を垂れている。
みんなが、顔を上げるのを確認して、僕も慌てて顔を上げる。
「アスィールか。そなただな、世の盾の能力を施行できたというのは…… 」
「はい!! 」
「ほう、威勢が良いな。今ここでソレを使ってみろ。」
僕は冷や汗をかいた。
今の状態のドゥルガが、僕に力を貸してくれるとは思わない。
オマケに彼女は竜宮の剣と性格相性が良くないと来た。
「どうした? アスィール殿。顔色が悪いようだが。」
兵士が僕に向けて剣を向け始める。
「この盾の能力、閣下はご存知ですか? この盾は魔術を弾き返す能力を持っています。魔術が使えない宮廷では…… 」
「よろしい。許可しよう。」
奥から魔術師がゾロゾロと流れて来て、僕に向けて杖を構えた。
「バロア王!! いくらなんでも横暴すぎます。彼を焼き殺すおつもりですか? 」
「アスピ。下がっていなさい。彼が一般魔道士の呪文すら受けられないというのなら、魔王の業火を受け止めるなど夢のまた夢。ここで剣を渡したところで、魔族側に塩を贈るだけだ。」
「ドゥルガ? 」
彼女は僕に答えてくれない。
[[[[[[エル・フレア]]]]]
魔道士たちが一斉に地獄の業火を放った。
刹那、火の玉たちは、明後日の方向へと弾き飛ばされ、壁に激突すると、それぞれが火柱を上げる。
[はぁ!! だから僕は君のことがイマイチ好きになれないわけ。分かる? そういうところだよ。]
「なんだ貴様は!! 」
[分からないかい?まぁ君とは話したく無かったんだけどね。こうやって怯えられて、祈祷師呼ばれたり、お祓いされたりしたら、僕もたまったもんじゃないからさぁ。]
「質問に答えろ。わ、私を誰だと思っている。」
[バロア王? 僕がドゥルガ。よろしくね。ボウ……コイツと旅をすることになったからよろしく。あと、不本意なんだけどさぁ。王様が所持している変態をコイツに貸してくあげてくれないかな? ]
「そのことなんだが…… 」
バロア王は例の封書を突きつけた。
封書には頭語も結語もなく、ただ。
『アスィールに竜宮の剣を渡すな。』
と、真っ赤なインクで書かれていた。
「バロア王、それは。」
「コレは赤のインクではないぞクリート。ホンモノの血だ。」
「イースト・サイドに、このことをよく思ってないモノが居る。ソナタたちとの関係を悪化させることは、何としても避けたい。」
「だがしかし、アスィール殿が本当に勇者であるということは分かった。」
「バロア王!! 」
彼がよろめき、側付がそれを支える。
「一晩考えさせてくれ。ソナタたちも疲れたであろう。今日はゆっくり休むと良い。」
それから、兵士たちに指図した。
「あと、お前ら。すまぬが、壁の修復を頼む。」
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