闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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ディアストリーナ

王都へ

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 歩くこと半日、森の中で魔物との遭遇を何度か隠密でやり過ごしてから、開けた丘に出た。
 丘陵地から見下ろすと、堀と城壁で囲まれた王都が姿を現す。
 ビギニア。
 史料によれば、人類の始まりの名を持つ都市らしい。
 文明はここから始まった。
 崖を飛び降りる。
 着地する瞬間に、疾風ハヤテを発動させて、衝撃を地面に受け流す。
 地が軋み、辺りに亀裂が入った。
 驚いた衛兵たちが、声を上げながらこちらにやって来る。
「ヤッベェ。」
 あまり人間を刺激してはいけない。
 俺は先の一件でそれを学ぶべきだった。
 だが、度重なる隠密行動のストレスで、王都への足を早めていた。
 ここの山道を降りるか、崖から飛び降りるかで、30分は変わるだろう。
「貴様!! 何者だ!! 」
 衛兵たちに、槍の鋭い鋒を向けられて、敵意がないことを示すために、両手を上げた。
 俺は、リワン姉ちゃんに言われてとった行商人の証を衛兵たちに見せた。
「俺は運び屋やっているんだが…… 」
 衛兵は眉を顰めた。
 どうやら警戒心を強めてしまったらしい。
「運送のクエストは本来、冒険者がやるモノだ。なぜ運び屋が危険を冒してまで? 」
「成り行きだよ成り行き、王都に用があったからさ。そんなことは良いんだよ。アンタら衛兵なら、証に右手翳しただけで素性が分かっちまうんだろ? 」
 隊長らしき男が、部下に槍を向けさせたまま、俺の証に手をかざした。
「うむ、間違いない。」
 彼は部下に槍を下げさせると、今度は右手で手招きした。
 荷積みを渡せと言うことだろう。
「ったよ。ちゃんとギルドに届けてくれよ。」
 ブツが盗まれる心配はない。
 それもギルド側がしっかり追跡の魔法をかけているから。
 それよりも、せっかくの臨時収入がパーになっちまった。
 こんなんじゃキュリオスさんに怒られてしまう。
「ふっ、運び屋風情が!! 」
 隊長は、地面に唾を吐き捨てると、俺のブツを受け取った。
 チッ、下に出てやれば良い気になりやがって。
 衛兵の一人が俺の肩を押し退けた。
「へっ、他所もんのくせに、ぶち込まれないだけ感謝しな。」
 そう言って彼は、地面に銀貨を投げ捨てた。
「発泡酒でも飲んでリラックスするんだな。」
 関所を顔パスで、通過すると、王都の中へと入った。
 ここへは、特別な用事がない限り、滅多に来ない訳だが、観光する気にはなれなかった。
 俺は溜飲を下げるために、早歩きでギルドへと向かう。
 両開きの扉を開けると、もちろん、衛兵がブツを換金していた。
 したっぱは俺の方を見ると、悪びれる様子もなく、そのままギルドを出ていく。
 浅ましい奴らだ。
 ギルド嬢は俺の顔から状況を察したのか、申し訳無さそうな顔をした。
「なんか俺が悪いことしたみたいじゃない? 君が、そんな顔をする必要もないでしょ? あ、悪い、この人相、元々だから。」
 ギルド嬢は今度は哀愁の漂って顔で同情してきた。
「最近、近辺で、『魔族』が出たそうで。それで皆さんピリピリしているんです。その影響で、この街に来る冒険者さんたちも、愛想が無くなってしまって。」
 どうやら見境なしに、このような横暴をしているわけではないらしい。
「いいや、彼らを刺激した俺にも問題があるよ。」
 俺は話を変えるべく、本題に入ることにした。
「それより、棺桶担ぎに空きのあるパーティーってある? 」
 彼女は無言で、何枚かのパーティー名簿を取り出した。
「人手不足なの? 王都でも? 」
 衛兵の件もあるだろうけど、まぁこんなもんかねぇ。
 彼女は俯いた。
「すみません。」
 とんでもない。仕事が溢れていると言うことは、金欠の人間にとっては願ったり叶ったりじゃないか。
「謝ることないよ。」
 俺は1番上の名簿を受け取った。
 コイツら冒険者たちの自業自得だ、自分で自分の首を絞めているのだ。
 が、冒険者の溜まり場であるここで、それを言うのは、また俺の立場を悪くする。
 また運び屋全体のイメージダウンにも繋がる。
「このパーティーに入れ貰えるかな? 」
「そのパーティーは…… 少々問題がありまして。」
 彼女は無言で名簿の備考欄を指差した。
『同行した運び屋が死亡』と書いてある。こう言うタトゥーまでつけて、自分たちの評判を下げている奴らって、ホント何がしたいのかが分からないが。
 まぁ俺も人のこと言えないし、コレはあくまでも契約だ。
 俺に仕事を選ぶ権利なんてない。
「大丈夫。読んだよ。」
 彼女はホッと息をついてから、自分の浅はかさに再び顔を青くした。
「君の仕事は、冒険者や運び屋の顔色を伺うことじゃないでしょ? 自分のことだけ考えたら? 」
 彼女が心配そうな顔で俺を見る。
「大丈夫、俺、絶対に死なないから。」
 さて、昨日は野宿だな金もねえしな。
「あのぉ、今夜の宿はお決まりでしょうか? 」
「まだだよ。」
「ここの2階に空き部屋が一つあるんですけど。」
「いいや、もうこれ以上、君に世話になるわけには行かないからさ。」
 二階からギシギシと音を立てて、小太りの中年男性が降りてきた。
「家事洗濯、部屋の掃除。それが、オマエに部屋を貸す条件だ。」
「ギルド長ですか? 初にお目にかかります。運び屋のアスィールです。」
 彼は運び屋という言葉を聞いても、眉ひとつ動かさなかった。
「よろしく。」
 そればかりか、彼は俺に右手を差し出した。
「コレから、ここで働くことになるのかね? 」
 俺は腕を組んで考え込んだ。
「ここで活動することになると思います。ですが、自分の街で子供たちが待っているので、滞在は一週間ほどになるかと。」
 彼はコックリ頷いた。
「レセプション、彼を部屋に案内しなさい。」
 断るつもりだったが、ここまで話が進んでしまっては、もう断る方が無作法というモノではないか?
 俺は顔を赤らめた。
「すまない。世話になる。」

 
 

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