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第一章

9 俺が武器ってマジですか!?

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「ふぅん…武器人間とはねぇ。ただの伝承だと思ってたけど、まさか実在するとはねぇ。」
エルゼの表情がどこか真剣になる。
俺はというと…未だに状況が飲み込めていない。
「さ、桜!?俺が杖ってどういうことだ!?なんか身体が自由に動かないと言うか…身体が無い感じなんだが!?」
「今は詳しい話は省きます。とりあえずで、よろしくお願いします。」
「さらっと怖いこと言わないで!?その命令が許されるのゲームだけだからね!?」
俺の発言をさらりと流すかのように、エルゼが大量の火の玉をこちらに飛ばしてきた。
「防御陣、展開。」
そう言うと、桜はそれを杖の先から出した光の盾のようなもので防ぐ。
俺の方は、暖房程度の熱量を感じつつも、目の前で弾け散る火花に恐れをなしていた。
「ひいいいいい!?俺無事!?俺無事なの!?」
桜は多少の余裕が生まれたのか、俺の焦り様にため息をついていた。
「春雄さん、大丈夫ですから。この精霊王、桜に身を任せてください。」
が今ないのだけれど、とツッコむ余裕は俺にはなかった。
エルゼからは火の玉が延々と放たれ続けている。
「相変わらず炎に関しては無尽蔵ですね。でもこちらだっていつまでも耐え続けられますよ。」
「…相変わらず口は達者だねぇ。でも、どうやら本当らしいねぇ。」
エルゼは火の玉を放つのを止め、桜も杖になった俺を掲げるのを止めた。
「お、終わったのか…?」
「一時休戦、と言ったところですかね。春雄さん、あなたのおかげですよ。」
なんだかよくわからないが、俺が杖になったことは相当重要だったらしい。
なんにせよこの戦いが無事に終わるのなら、それに越したことはない。
「お嬢。お嬢様ぁ。」
エルゼが遠くで激昂し続けているイビラに声をかける。
「なんじゃ!?妾は今怒りを鎮めるので忙しいのじゃ!!邪魔するでない!!」
イビラは足で床をドンドンと踏み鳴らしている。
「このままじゃあ兵が持ってかれるだけでさぁ。このままだと次期魔王候補の名に傷が付きかねない。ここらで手打ちにしましょ。」
「…くっ。」
しばしの間熟考したイビラは、目を伏せながら言い放った。
「…分かった。作戦は失敗じゃ。」
イビラが指をパチンと鳴らすと、死霊たちが床下へサッと沈み、消えていった。
春美も一息ついて、剣を鞘へ収める。
「一つ聞くわ、イビラ。なぜあなたがお兄ちゃんをさらったの?停戦協定だって間もなく結ばれる予定だったじゃない。」
春美がいぶかしげにイビラに尋ねる。
「ふん…妾は魔王にならなくてはならない。そのためには手段を選ばない、選ぶ余裕などないのじゃ。」
杖の姿のままその光景を見ていた春雄には、イビラの表情がどこか悲しげに見えた。
「…用があるなら私が受ける。お兄ちゃんには手を出さないで。」
そう言い残すと、春美は城門を押し開け、外へ出ていった。
「春雄さん、私達も行きましょう。元の姿には戻れそうですか?」
「えーと…どうやって?」
事態は解決したようだったが、俺にとってはもう一難残っていたのであった。
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