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第8章【苦い祈り】
62罪 産み落とされた憎しみは②
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「お邪魔します」
そう呟き、テントの中に体を滑り込ませた。
狭いテントの中に男女が共にいる。何度も身体を重ねたことのある二人が、共に。何も起きないなんて事はない。それはテントの中に入った静も、招き入れたヴェルも理解していた。つまり、覚悟したのだ。
「そろそろ、私との関係にも慣れて欲しいものだわ」
「それは無理なお願い……だと思わない?」
肩を竦めながら、少しだけ不服そうに呟く静にヴェルは大きくため息を吐いた。
何をどう考えたらこの関係に慣れろと言えるのか、ヴェルには理解が出来なかった。弱みを握って、無理矢理関係を迫り、大切だと言っていた雪の心を傷つけようとしているようにしか見えない静の言動に、慣れなんて訪れるはずもない。
「私との関係を楽しめば慣れるんじゃないかしら……?」
そう言いながら静はヴェルの前に跪き、膝立ちでススス……と歩み寄った。
「静ちゃんとの関係を……楽しむ?」
「ええ、そうよ。心では雪ちゃんを大切に思いながら私と雪ちゃんの関係をこじらせないように必死に私に取り繕うだけじゃなくて……私とのセックスを全身で楽しめばいいじゃない? 気持ちの良いことは……嫌いではないでしょう?」
女の言うセリフか、と言いたくなるような事をペラペラと喋る静にヴェルは目を丸くさせた。
「……それに、そうやって楽しめば私との関係にも慣れて、悪い事ばかりじゃないって……思えるんじゃないかしら?」
くすくすと笑いながら、ポツリと『まあ、大好きな雪ちゃんとはセックス出来ないでしょうけど』と静が呟いたことにヴェルは気付いていなかった。
なぜならば、自分の足元に近寄りつつある静を警戒していたからだ。覚悟はしたが、好きにすればいいと腹を括れたわけではない。やはり、何度肌を重ねていようが好きでもない人と交わるのはいい気持ちではないというのがヴェルの考えるところだった。
「だからほら……」
熱のこもった息を吐き、静はねっとりと笑みを浮かべるとヴェルの下半身の膨らみをズボンの上から触った。手のひらで包み込むように触れてから、ゆったりとした手付きで弧を描くように回す。そのもどかしい触り方にヴェルの背筋がゾクリと粟立った。ぶるっと体を震わせてしまいそうな感覚に、頭を振った。
「んふふ……少しずぅーつ、硬く……なってきてる、わ」
触れた瞬間はふにゃりと柔らかかった彼のペニスが、ゆっくりと静の手によって主張し始めていた。その事実が嬉しくて、静はその唇に笑みを浮かべた。ヴェルのペニスをズボン越しに刺激しながら笑みを浮かべるその姿は、ヴェルには妖艶に映った。しかし、それは魅力的には見えず、ただただ性に奔放で淫乱なように思えて仕方がなかった。そう思ってしまうのに、そんな静に反応してしまう自分自身が嫌で嫌でしょうがない。心では雪を好いているのに、体はどうしても素直に反応してしまう。そんな“男”な部分を見せてしまう自分に嫌悪感を示した。
そう呟き、テントの中に体を滑り込ませた。
狭いテントの中に男女が共にいる。何度も身体を重ねたことのある二人が、共に。何も起きないなんて事はない。それはテントの中に入った静も、招き入れたヴェルも理解していた。つまり、覚悟したのだ。
「そろそろ、私との関係にも慣れて欲しいものだわ」
「それは無理なお願い……だと思わない?」
肩を竦めながら、少しだけ不服そうに呟く静にヴェルは大きくため息を吐いた。
何をどう考えたらこの関係に慣れろと言えるのか、ヴェルには理解が出来なかった。弱みを握って、無理矢理関係を迫り、大切だと言っていた雪の心を傷つけようとしているようにしか見えない静の言動に、慣れなんて訪れるはずもない。
「私との関係を楽しめば慣れるんじゃないかしら……?」
そう言いながら静はヴェルの前に跪き、膝立ちでススス……と歩み寄った。
「静ちゃんとの関係を……楽しむ?」
「ええ、そうよ。心では雪ちゃんを大切に思いながら私と雪ちゃんの関係をこじらせないように必死に私に取り繕うだけじゃなくて……私とのセックスを全身で楽しめばいいじゃない? 気持ちの良いことは……嫌いではないでしょう?」
女の言うセリフか、と言いたくなるような事をペラペラと喋る静にヴェルは目を丸くさせた。
「……それに、そうやって楽しめば私との関係にも慣れて、悪い事ばかりじゃないって……思えるんじゃないかしら?」
くすくすと笑いながら、ポツリと『まあ、大好きな雪ちゃんとはセックス出来ないでしょうけど』と静が呟いたことにヴェルは気付いていなかった。
なぜならば、自分の足元に近寄りつつある静を警戒していたからだ。覚悟はしたが、好きにすればいいと腹を括れたわけではない。やはり、何度肌を重ねていようが好きでもない人と交わるのはいい気持ちではないというのがヴェルの考えるところだった。
「だからほら……」
熱のこもった息を吐き、静はねっとりと笑みを浮かべるとヴェルの下半身の膨らみをズボンの上から触った。手のひらで包み込むように触れてから、ゆったりとした手付きで弧を描くように回す。そのもどかしい触り方にヴェルの背筋がゾクリと粟立った。ぶるっと体を震わせてしまいそうな感覚に、頭を振った。
「んふふ……少しずぅーつ、硬く……なってきてる、わ」
触れた瞬間はふにゃりと柔らかかった彼のペニスが、ゆっくりと静の手によって主張し始めていた。その事実が嬉しくて、静はその唇に笑みを浮かべた。ヴェルのペニスをズボン越しに刺激しながら笑みを浮かべるその姿は、ヴェルには妖艶に映った。しかし、それは魅力的には見えず、ただただ性に奔放で淫乱なように思えて仕方がなかった。そう思ってしまうのに、そんな静に反応してしまう自分自身が嫌で嫌でしょうがない。心では雪を好いているのに、体はどうしても素直に反応してしまう。そんな“男”な部分を見せてしまう自分に嫌悪感を示した。
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