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第7章【愛の言葉】
60罪 切なさをはらむ笑顔①
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ペキ……
パキキ……
各々会話に夢中になっていたが、そんな異音に全員の視線が石碑に集中した。そういえば、戻ってきてから燿と耀さんと話をしていないという事に、この時遅いながらも気が付いた。
「燿? 耀さん……?」
そう声を上げると、石碑の両側からうっすらと姿が揺らぎ始めている二人が現れた。
その表情は嬉しそうなようにも見えて、悲しそうにも見える……複雑そうな表情を浮かべていた。
『また一つ……記憶を取り戻したみたいだね』
「燿っ」
「ええ……あなた達が石碑を護ってきてくれたおかげよ」
燿の消えそうな姿に悲痛の声を上げる私と違い、静は冷静にそう言葉を口にした。ありがとうとは言ってはいなかったが、そう言っているように聞こえる言葉だ。私だって、燿と耀さんにお礼が言いたい。言いたいけれど……消えてしまいそうな二人が心配だった。
『君達の役に立てたみたいで良かったよ』
「燿……」
『雪さん、そんなに悲しそうな顔をしないでください』
「悲しそうな顔くらいするよ……だって、だってっ‼」
燿の隣でふわりと微笑む耀さんの姿が、余計に胸を軋ませる。
彼らはこれから消えてしまう。役目を終えて、その魂は天に消えていく。消えてしまえばもう会えない。再び燿と耀さんに会えるとしても、それは私達と再会したことを覚えていない『別の彼ら』なんだ。悲しくないわけがない。
『また、会えるよ』
「……知ってる」
『だから、悲しそうな顔をしないでください』
「それとこれとは……話しが別だよ」
燿と耀さんは、私の返す言葉に困ったように笑顔を浮かべて肩を竦めた。
『雪ちゃん』
「……なに?」
『ごめんね』
「え?」
『つらい思いをさせて。悲しい想いを何度もさせて。だけど、僕達はこうしてでも彼女達と一緒に居たかったし……生まれ変わった君に会いたかったんだよ』
燿のその言葉は、ゑレ妃達の為だけにこうしたわけじゃないというものだった。
燿と耀さんから二人の最期の話を聞いた時、私は未来の私達に会いたいという話はついでの話だと思っていた。二人を深く愛していて、死してもずっと一緒に居たいのだと思い込んでいた。だけど違った。燿と耀さんは『私の事』も求めてくれていたのだ。その事実に驚くと同時に、嬉しさと切なさと複雑さが混じった……よくわからない気持ちになった。
パキキ……
各々会話に夢中になっていたが、そんな異音に全員の視線が石碑に集中した。そういえば、戻ってきてから燿と耀さんと話をしていないという事に、この時遅いながらも気が付いた。
「燿? 耀さん……?」
そう声を上げると、石碑の両側からうっすらと姿が揺らぎ始めている二人が現れた。
その表情は嬉しそうなようにも見えて、悲しそうにも見える……複雑そうな表情を浮かべていた。
『また一つ……記憶を取り戻したみたいだね』
「燿っ」
「ええ……あなた達が石碑を護ってきてくれたおかげよ」
燿の消えそうな姿に悲痛の声を上げる私と違い、静は冷静にそう言葉を口にした。ありがとうとは言ってはいなかったが、そう言っているように聞こえる言葉だ。私だって、燿と耀さんにお礼が言いたい。言いたいけれど……消えてしまいそうな二人が心配だった。
『君達の役に立てたみたいで良かったよ』
「燿……」
『雪さん、そんなに悲しそうな顔をしないでください』
「悲しそうな顔くらいするよ……だって、だってっ‼」
燿の隣でふわりと微笑む耀さんの姿が、余計に胸を軋ませる。
彼らはこれから消えてしまう。役目を終えて、その魂は天に消えていく。消えてしまえばもう会えない。再び燿と耀さんに会えるとしても、それは私達と再会したことを覚えていない『別の彼ら』なんだ。悲しくないわけがない。
『また、会えるよ』
「……知ってる」
『だから、悲しそうな顔をしないでください』
「それとこれとは……話しが別だよ」
燿と耀さんは、私の返す言葉に困ったように笑顔を浮かべて肩を竦めた。
『雪ちゃん』
「……なに?」
『ごめんね』
「え?」
『つらい思いをさせて。悲しい想いを何度もさせて。だけど、僕達はこうしてでも彼女達と一緒に居たかったし……生まれ変わった君に会いたかったんだよ』
燿のその言葉は、ゑレ妃達の為だけにこうしたわけじゃないというものだった。
燿と耀さんから二人の最期の話を聞いた時、私は未来の私達に会いたいという話はついでの話だと思っていた。二人を深く愛していて、死してもずっと一緒に居たいのだと思い込んでいた。だけど違った。燿と耀さんは『私の事』も求めてくれていたのだ。その事実に驚くと同時に、嬉しさと切なさと複雑さが混じった……よくわからない気持ちになった。
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