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第7章【愛の言葉】

57罪 在りし日の過去を垣間見よ・3 (7)①

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「ハドリー……貴様……」
「この子は、私の…………大切な、子、です。自分の身よりも何よりも……私はこの子が……大切なのです」

 そう呟くと、ハルナを強く胸に抱きしめた状態で深月みつきの方に視線を向けた。

「ハドリー!」

 上がった声は、ハルナもハドリーも聞き覚えのある声。とても良くしてくれた、大切な人。大切な仲間。大切な……家族ともいえる存在。

「リ、フィル」
「ハドリー、ハルナ様……!」

 リフィルはせっかくまとめた髪がほどけてしまうのもいとわないくらい、慌てて駆け寄ってきた。
 肩で大きく息を吸いながら、ハルナを抱きしめるハドリーと深月みつきの間に立つ。

「リフィル……やめて」
「いいえ、ハドリー。私にとっても、あなたもハルナ様も家族のように大切な存在よ。だから、やめないわ」

 深月みつきに反旗を翻すということは何を意味をしているのか、分からないわけがない。それでも、リフィルは国の王である深月みつきよりも大切な家族のような存在であるハルナとハドリーを選んだ。
 それはつまり『死』をも厭わないという事だ。

「ハドリー、行って。早く……逃げて。ハルナ様と一緒に……」
「リフィル……だけ、ど……」
「いいから! お願い……早く!」

 そう声高らかに叫んだ瞬間、リフィルは太ももに隠し持っていたナイフを右手の人差し指、中指、薬指、小指の間に三本挟んで構えた。
 何かを言いたかったけれど、ハドリーはリフィルの気持ちを無碍にするわけにはいかないと心を鬼にして足を一歩踏み出した。
 ぬるりとした感触が足元に広がる。けれども、しっかりと踏みしめてハルナを抱きしめたまま歩き出した。

「行って!!」

 リフィルのそう声を上げてナイフを投げた瞬間、ハドリーは背中の痛みも気にせずにハルナを抱き上げて駈け出した。一目散に。必死に。生きる為に、生かす為に。
 無我夢中に城内を走り、外へとたどり着いたハドリー。一瞬だけ城の方に視線を向けた瞬間、嫌な銃声が聞こえた。

――行って――

 リフィルのその言葉を思い出し、ハドリーは立ち止まりたい衝動を振り払って再度走りだした。
 どのように走り、どのように移動したのか、ハドリーには覚えていなかった。ただ朦朧とする意識の中、ハルナだけは救いたいと強く願い、力強く抱きしめていた事だけは覚えていた。

* * *

「……おや?」

 幼子を抱きしめ、体中を真っ赤に染め上げた一人の女が卯ノ国の真っ白い雪道の中で倒れていたのを、一人の男が見つけた。
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