異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

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ハッピーバースデーver静⑨

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「だって、静にその気がないなら可能性はあるんじゃないかなって。それに……脈なしなんだとしたら亮さんから二人で会おうなんて誘ってきてくれるはずないもん」

 雪ちゃんの癖に、凄く冷静な解析ね。そう思ったら、思わず舌打ちをしたくなってしまった。だけど、そんな事するわけにもいかなくて、私は雪ちゃんを心配するように笑顔を浮かべてから彼女の肩に手を乗せた。
 ゆっくりと、やんわりと、首を左右に振りながら、視線でやめた方がいいと訴えてみる。

「……なんで。なん、で……静はそんなに否定的なの? 会った時に言い人って……言ってたのに」
「ええ、あの時はそう思ったわ。凄く優しくて、気も利いて、話も面白くて、とてもいい人だって。この人だったら、雪ちゃんを任せられるって……そう、思ったわ」

(……いつもの雪ちゃんなら、ここまで言えば『わかった』って言ってくれるのに……)

 ため息を吐きたくなった。だけど、それを堪えて私は大きく深呼吸を繰り返した。
 そして、私は最後の手段を使うしかないと思った。
 もちろん、これが失敗に終わったら……きっと雪ちゃんは私のことを信じてくれなくなってしまうだろう。だけど、成功すれば、雪ちゃんの私への信頼はより一層強まる。
 だから。

「し、静……?」

 うるうると涙をためて、今にも泣きそうな表情を浮かべれば雪ちゃんの驚いた声が上がる。
 それも、予想通り。

「本当は、これは言いたくなかったのだけれど……」
「……なに? 関係ある事なら、隠さないで教えて?」
「いい、の?」
「うん。聞きたいの」

 雪ちゃんは、隠し事を嫌う。陰でこそこそされるなら、白黒はっきりつけて欲しいと望むタイプなのは小さなころから変わらない彼女の性質だ。

「雪ちゃんのことを気に入っていたんじゃないの? って聞いたのよ。そしたら、そしたら亮さんは……っ」
「し、静!? だ、大丈夫……?」
「え、ええ……ごめんなさい、ちゃんと伝えないと……いけない、のに……」
「ゆっくりで構わないから……」

 思わずここで涙を流せば、雪ちゃんはどんどん私を疑えなくなる。それを分かっていて私はぽろっと涙を零して、慌てて顔を隠すように下を向いた。
 そんな私の反応を見て、雪ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込んでくる。雪ちゃんは、優しすぎるし人を疑う事を知らなさすぎる。

「あの、ね……」
「うん」
「……雪ちゃんの事は確かに気に入っていた、と言っていたわ」

 その瞬間、雪ちゃんの表情が桜の花が咲くように華やいだのが分かった。
 本当に、亮さんの事が好きだったのね。
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