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幕間

ハッピーバースデーver静②

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「静ちゃん、お誕生日おめでとう」

 そう言って、年末年始などにしか会ったことのなかったような親戚のおじさんやおばさんが声を掛けてきたのを覚えている。
 父と母以外にお祝いしてもらえることがとても嬉しかったのよね。そして、それと同時にこんな広い会場を貸切って家族以外のたくさんの人が私の誕生日をお祝いしてくれるという事実に、少しだけ誇らしく思った。
 そして、それが普通ではないと知ったのは小学生の頃だった。

* * *

「えー? 雪ちゃんのおうち、そんなに親戚の人からお祝いしてもらえるの!?」

 小学生に上がると、友達の誕生日パーティーに呼ばれたりすることが増えた。
 その中で気付いたのは、皆の誕生日は正直……質素だった。だって、たくさんの親戚の人が来てお祝いしてくれるわけでもないし、大きな広い会場を貸切って大きなパーティーをするわけでもない。
 友達数名を呼んで、それ以外にいるのはその子のお母さんとお父さんだけ。その時点で私の誕生日パーティーは――――ううん、私は凄いんだって、気付いたわ。私は特別なんだって。

「ええ、おっきな会場を借りて、ママとパパが親戚中に声を掛けてくれてね! パーティーが終わる頃にはプレゼントの箱が山積みになるのよ!」

 それが誇らしかったし、嬉しかった。私は特別で、皆から誰よりも愛されるんだって……凄く優越感も感じた。
 もちろん、そんな風にみんなに愛されている事を妬んで意地悪してくる子ももちろんいたわ。陰口だって叩かれた。
 だけど、そんな私を慕ってくれる子も居た――――雪ちゃん。
 あの子だけは、どんな話を聞いても「凄い」とか「さすがだね」って私を持ち上げてくれた。私を尊敬のまなざしで見つめてくれた。だからこそ、私はずっとあの子より凄い存在で居たかったの。
 あの子より優れて、あの子より愛されて、あの子より必要とされて…………あの子に「凄いね」と言って欲しかったの。「さすが静だね」と言われたかったの。
 私はあの子に、いつまでも慕われて、尊敬されて、目標とされて、そして……敵わないと思ってもらいたかった。
 私はあの子の上に居たかった。

 そんな私達が中学生に上がった頃、雪ちゃんが男の子達に人気が出てくることがあった――

* * *

「し、静ぁ」
「どうしたの? 雪ちゃん」

 情けない顔をして私を見てくる雪ちゃんの顔が、とても印象深かったわ。

「こ、告白を……されてしまったのだけれど…………ど、どどど……どうしたらいいのかなっ」
「――――告白?」
「う、うん。ほら……二組の、遠藤君」

 雪ちゃんの言葉に、私の右眉がピクッと動くのを感じた。
 二組の遠藤くんと言えば、サッカー部の子で女子人気も高い子で、当時この話を聞いた時は大層驚いたわ。だって、私じゃなくて雪ちゃんが好き……だなんて。正直、悔しいものよね。
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