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幕間
ハッピーバースデーver静①
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私の誕生日は、毎年豪華だった。
みんながみんな、私へのプレゼントをたくさんくれる。
母も、父も、女友達も、男友達も。そのプレゼントにいろいろな思惑が乗せられていることは、もちろん知っていたわ。けれど、私はそれに基本的には気付かないふりをして受け取り続けていたわ。
プレゼントはもらえるのであれば喜んで貰うわ。だって、物は悪くないもの。
(……今年の誕生日は何がもらえるのかしらね)
私達の世界からこちらの世界へ来てしまった時は、誕生日なんてものはもう祝ってもらえないと思っていたわ。
けれど、真兄さんの提案で雪ちゃんの誕生日パーティーを行ったことで、私の誕生日の可能性も高まったはず。というより、おそらく確定……だと思うわ。
雪ちゃんの性格上、お祝いしてもらっておいて私の誕生日をお祝いしない……なんて絶対にありえないもの。
(でも……こっちの世界だもの、たかが知れていると思うのよね)
私が雪ちゃんの誕生日を見繕った時だって、そんな良いものはあげられなかった。
私が雪ちゃんのために見繕ったプレゼントは、食堂で簡単に作れるようなクッキーだった。もちろん、可愛い星の形をした、ね。
綺麗にラッピングされた箱の中に、それなりの量のクッキーが入っていたから、プレゼントをあげた直後はしばらくおやつにクッキーを食べている姿を目撃したわね。
(雪ちゃんの時のように今日、食堂の近くを通りかかったらガチャガチャ音がしたから……おそらく今日だと思うのよね)
こちらの世界に来てからというものの、日付の感覚というものはなくなった。もちろん、寝て起きて……という生活をしていれば一日の日が過ぎていくのは分かる。けれど、今が何月何日なのか……というのは、もうすでに定かではないわ。それは仕方のないことだと思うし、当たり前のことだと思う。だって、こちらの世界の日付の概念と私達の世界の概念が違うのだから。
とにかく、パーティーをするならきっと今日! と思い、私は部屋に戻ってきた。何も知らない顔をして、部屋で過ごして、サプライズとしてやってきてくれるであろう真兄さん達を待つつもりよ。
(といっても、暇……なのよね)
準備にそれなりに時間がかかるのは、雪ちゃんの誕生日パーティーを計画した時点で身に染みている。だからこそ、今までの私の誕生日に意識が向いてしまうのは仕方のないことだと思うのよね。
私が、自分が他と違うと気付き始めたのは幼稚園の頃だったわ――――
* * *
「まま? ぱぱ?」
小さかった頃の私は、父と母に全く知らない会場に連れてこられていた。
見たことのない大きな広間。円形のテーブルが点々と置いてあり、そこにいろんな食べ物が置いてあった……と記憶している。
みんながみんな、私へのプレゼントをたくさんくれる。
母も、父も、女友達も、男友達も。そのプレゼントにいろいろな思惑が乗せられていることは、もちろん知っていたわ。けれど、私はそれに基本的には気付かないふりをして受け取り続けていたわ。
プレゼントはもらえるのであれば喜んで貰うわ。だって、物は悪くないもの。
(……今年の誕生日は何がもらえるのかしらね)
私達の世界からこちらの世界へ来てしまった時は、誕生日なんてものはもう祝ってもらえないと思っていたわ。
けれど、真兄さんの提案で雪ちゃんの誕生日パーティーを行ったことで、私の誕生日の可能性も高まったはず。というより、おそらく確定……だと思うわ。
雪ちゃんの性格上、お祝いしてもらっておいて私の誕生日をお祝いしない……なんて絶対にありえないもの。
(でも……こっちの世界だもの、たかが知れていると思うのよね)
私が雪ちゃんの誕生日を見繕った時だって、そんな良いものはあげられなかった。
私が雪ちゃんのために見繕ったプレゼントは、食堂で簡単に作れるようなクッキーだった。もちろん、可愛い星の形をした、ね。
綺麗にラッピングされた箱の中に、それなりの量のクッキーが入っていたから、プレゼントをあげた直後はしばらくおやつにクッキーを食べている姿を目撃したわね。
(雪ちゃんの時のように今日、食堂の近くを通りかかったらガチャガチャ音がしたから……おそらく今日だと思うのよね)
こちらの世界に来てからというものの、日付の感覚というものはなくなった。もちろん、寝て起きて……という生活をしていれば一日の日が過ぎていくのは分かる。けれど、今が何月何日なのか……というのは、もうすでに定かではないわ。それは仕方のないことだと思うし、当たり前のことだと思う。だって、こちらの世界の日付の概念と私達の世界の概念が違うのだから。
とにかく、パーティーをするならきっと今日! と思い、私は部屋に戻ってきた。何も知らない顔をして、部屋で過ごして、サプライズとしてやってきてくれるであろう真兄さん達を待つつもりよ。
(といっても、暇……なのよね)
準備にそれなりに時間がかかるのは、雪ちゃんの誕生日パーティーを計画した時点で身に染みている。だからこそ、今までの私の誕生日に意識が向いてしまうのは仕方のないことだと思うのよね。
私が、自分が他と違うと気付き始めたのは幼稚園の頃だったわ――――
* * *
「まま? ぱぱ?」
小さかった頃の私は、父と母に全く知らない会場に連れてこられていた。
見たことのない大きな広間。円形のテーブルが点々と置いてあり、そこにいろんな食べ物が置いてあった……と記憶している。
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