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幕間
ハッピーバースデーver雪③
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(……どう、しよう)
不安と恐怖で足がすくんで前に進めない私は、壁にもたれかかるようにして背中を預けた。
ひんやりと背中に広がっていく冷たい感覚に、体の底からブルッと震えた。
「……雪ちゃん?」
「……ぁ」
そこで座り込んでいた私を見下ろすようにして、食堂から半身だけ身を乗り出したヴェル君が私の名前を呼んだ。
ふわりと彼の髪の毛が揺れ、前髪から彼の瞳が覗き見えた。
ちょっとだけ、バツが悪いというか……申し訳ない気持ちになった。へらッと、情けない笑顔を浮かべてスクッと立ち上がると。
「み、皆の姿が見えないから……探してたん、だ!」
そう言いながら、アハハと笑った。しかし、この場から立ち去りたいと少しでも考えていた私の体が勝手に動いたのか、じりじりと私の足はいつの間にか後ずさりしていた。
「あ、ちょっといろいろ二人と話をしててね。あ、食堂は今使えなくなってて……雪ちゃんには悪いんだけど――――」
「――――うん! 邪魔しちゃって、ごめんねっ! 私、部屋に……戻ってるっ」
ヴェル君の言葉をすべて聞き終わる前に、私は大きく声を吐き出して部屋に戻ると宣言してしまった。
だって、私には悪いんだけどって……そんなの、邪魔って言いにくいだけのようにしか思えなかった。だから、私は自分の部屋に逃げることにした。
(みんながいつ食堂じゃない場所に移動するかもわからないし……部屋に、いないとっ)
応接間や図書室、浴室などに行って皆とまた鉢合わせしてしまっても申し訳ない。私はそんな風に思った。
そう思ったからこそ、部屋に閉じこもろうと思った。だってそれが一番誰も傷つかない。
私も、静も、真兄も、ヴェル君も……誰も。
(早くっ……部屋にっ……)
自分の胸のあたりをギュッと掴みながら、私はひたすら自分の部屋に向かって階段を駆け上がった。
らせん状の階段を駆け上がれば、すぐに私の部屋のドアが見える。
YUKI‘S ROOMと書かれたプレートが私のドアに掛かっている。それらは、私達の部屋を決めた後にヴェル君が誰の部屋だか分からなくなるから……とくれたものだ。それに、各々が自分の部屋だと分かるように文字を掘った。
(……惨めになってくる。寝てよ……)
みんなでどんなふうに書こうか、なんて笑って決めていたあの日が懐かしく感じるくらい、今は凄く寂しかった。
パタン、と後ろ手に扉を閉めると私はベッドへと一直線に歩いた。そして、その勢いのままボフッとベッドに身を沈めた。
胸を下にして、うつぶせの状態で横になる。柔らかいベッドの感触が私を包み込んでくれる。
(――――あたたかい)
当たり前のことを思い、そして内心笑ってしまった。
そして、そのまま私の意識は闇の中へとまどろんでいった。
不安と恐怖で足がすくんで前に進めない私は、壁にもたれかかるようにして背中を預けた。
ひんやりと背中に広がっていく冷たい感覚に、体の底からブルッと震えた。
「……雪ちゃん?」
「……ぁ」
そこで座り込んでいた私を見下ろすようにして、食堂から半身だけ身を乗り出したヴェル君が私の名前を呼んだ。
ふわりと彼の髪の毛が揺れ、前髪から彼の瞳が覗き見えた。
ちょっとだけ、バツが悪いというか……申し訳ない気持ちになった。へらッと、情けない笑顔を浮かべてスクッと立ち上がると。
「み、皆の姿が見えないから……探してたん、だ!」
そう言いながら、アハハと笑った。しかし、この場から立ち去りたいと少しでも考えていた私の体が勝手に動いたのか、じりじりと私の足はいつの間にか後ずさりしていた。
「あ、ちょっといろいろ二人と話をしててね。あ、食堂は今使えなくなってて……雪ちゃんには悪いんだけど――――」
「――――うん! 邪魔しちゃって、ごめんねっ! 私、部屋に……戻ってるっ」
ヴェル君の言葉をすべて聞き終わる前に、私は大きく声を吐き出して部屋に戻ると宣言してしまった。
だって、私には悪いんだけどって……そんなの、邪魔って言いにくいだけのようにしか思えなかった。だから、私は自分の部屋に逃げることにした。
(みんながいつ食堂じゃない場所に移動するかもわからないし……部屋に、いないとっ)
応接間や図書室、浴室などに行って皆とまた鉢合わせしてしまっても申し訳ない。私はそんな風に思った。
そう思ったからこそ、部屋に閉じこもろうと思った。だってそれが一番誰も傷つかない。
私も、静も、真兄も、ヴェル君も……誰も。
(早くっ……部屋にっ……)
自分の胸のあたりをギュッと掴みながら、私はひたすら自分の部屋に向かって階段を駆け上がった。
らせん状の階段を駆け上がれば、すぐに私の部屋のドアが見える。
YUKI‘S ROOMと書かれたプレートが私のドアに掛かっている。それらは、私達の部屋を決めた後にヴェル君が誰の部屋だか分からなくなるから……とくれたものだ。それに、各々が自分の部屋だと分かるように文字を掘った。
(……惨めになってくる。寝てよ……)
みんなでどんなふうに書こうか、なんて笑って決めていたあの日が懐かしく感じるくらい、今は凄く寂しかった。
パタン、と後ろ手に扉を閉めると私はベッドへと一直線に歩いた。そして、その勢いのままボフッとベッドに身を沈めた。
胸を下にして、うつぶせの状態で横になる。柔らかいベッドの感触が私を包み込んでくれる。
(――――あたたかい)
当たり前のことを思い、そして内心笑ってしまった。
そして、そのまま私の意識は闇の中へとまどろんでいった。
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