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幕間
ハッピーバースデーver雪②
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(応接間……かな?)
螺旋階段を上りに上ってきてから応接間まで行くのは少しだけ億劫だ。なにせ、住人の居住区よりも下なのだ。
今度は降りて行かなければいけないという状況に、少しだけため息を吐いた。でも、目的の応接間も食堂も近接されているから、下りきってしまえば問題ない。
(今度はいますように!)
淡い期待を胸に、私はテンポよく階段を下って行った。トントントンと、リズミカルに下る足音は少しだけ音楽みたいだった。
食堂を通り過ぎて、先に応接間に向かおうと階段を降りようとした瞬間だった。私の耳に覚えのある声が聞こえてきた。
(……ヴェル君?)
みんなの声を聞き間違えるはずがない。私はごくりと息を一つ飲んでから、食堂の方へと体の向きを変えた。
冷たい鈍色の壁に等間隔に浮かぶ、小ぶりのオシャレなロウソクのような灯りが揺らめいていた。私の部屋にもある控えめなデザインのシャンデリアもそうだが、このロウソクのような灯りもコンセントなどの線に繋がれているわけでもなく、壁に取り付けられていたり繋がれているわけでもない。本当に、そこに浮かんでいる。
(何度見ても不思議な作り……)
そんな事を思いながらも、私の足はゆっくりと、でも確実に食堂へと進んでいった。
すると、先ほどまで微かに聞こえていた声がどんどん大きくなってくる。声以外にも、何か金属などがぶつかり合うような音が聞こえる気がする。
(ここに居たんだ……よかった)
聞こえる音で、皆の存在を認識する事が出来てホッと一安心した。
けれど、それと同時に感じるもう一つの感情。
(なんで……私、仲間外れにされているのかな?)
そう思ってしまうからこそ、食堂にみんながいると分かっているのに食堂内に足を踏み入れることが出来なかった。
私はまだ、壁の裏側……私からみんなが見えない、皆からも私が見えない、そんな場所に佇んでいた。
(仲間外れにされてたんだとしたら……どうしよう)
静と真兄は私抜きでも仲がいい。それは昔からだから知っているというか、真兄が静のことを大切に思っているからそれは仕方ないと理解している。
それでも、やはり私のいない間にこっそりと……というのは、少しだけ寂しい。
その中に、まさかヴェル君まで入ってしまっているとしたら……本当に悲しすぎる。寂しすぎる。そして、それを確認するのが怖い。
螺旋階段を上りに上ってきてから応接間まで行くのは少しだけ億劫だ。なにせ、住人の居住区よりも下なのだ。
今度は降りて行かなければいけないという状況に、少しだけため息を吐いた。でも、目的の応接間も食堂も近接されているから、下りきってしまえば問題ない。
(今度はいますように!)
淡い期待を胸に、私はテンポよく階段を下って行った。トントントンと、リズミカルに下る足音は少しだけ音楽みたいだった。
食堂を通り過ぎて、先に応接間に向かおうと階段を降りようとした瞬間だった。私の耳に覚えのある声が聞こえてきた。
(……ヴェル君?)
みんなの声を聞き間違えるはずがない。私はごくりと息を一つ飲んでから、食堂の方へと体の向きを変えた。
冷たい鈍色の壁に等間隔に浮かぶ、小ぶりのオシャレなロウソクのような灯りが揺らめいていた。私の部屋にもある控えめなデザインのシャンデリアもそうだが、このロウソクのような灯りもコンセントなどの線に繋がれているわけでもなく、壁に取り付けられていたり繋がれているわけでもない。本当に、そこに浮かんでいる。
(何度見ても不思議な作り……)
そんな事を思いながらも、私の足はゆっくりと、でも確実に食堂へと進んでいった。
すると、先ほどまで微かに聞こえていた声がどんどん大きくなってくる。声以外にも、何か金属などがぶつかり合うような音が聞こえる気がする。
(ここに居たんだ……よかった)
聞こえる音で、皆の存在を認識する事が出来てホッと一安心した。
けれど、それと同時に感じるもう一つの感情。
(なんで……私、仲間外れにされているのかな?)
そう思ってしまうからこそ、食堂にみんながいると分かっているのに食堂内に足を踏み入れることが出来なかった。
私はまだ、壁の裏側……私からみんなが見えない、皆からも私が見えない、そんな場所に佇んでいた。
(仲間外れにされてたんだとしたら……どうしよう)
静と真兄は私抜きでも仲がいい。それは昔からだから知っているというか、真兄が静のことを大切に思っているからそれは仕方ないと理解している。
それでも、やはり私のいない間にこっそりと……というのは、少しだけ寂しい。
その中に、まさかヴェル君まで入ってしまっているとしたら……本当に悲しすぎる。寂しすぎる。そして、それを確認するのが怖い。
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