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第6章【守護者二人の過去】
48罪 愛①
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「封印した石碑の数だけ守護者の魂を分割させる、ということは……守護者は『死ぬ』ということですよね?」
「……そう、ですよ。だから…………だから私がっ」
「だから駄目なんだよ。聖月」
なんで、と言わんばかりに聖月は燿と耀を見つめた。真っすぐに向けてくる瞳から、大粒のダイヤが溢れ出るようにボロボロと彼は泣き続けた。
「あなたは神国を守ってください」
「それは聖月にしか出来ないことだよ」
「私達は私達にしか出来ないことをします」
「ハルナちゃんとゑレ妃ちゃんと『前世から』関わりの深かった僕達にしか、彼女達の封印された石碑を守ることは出来ないからね」
「なん……で…………」
近づく別れの予感に、聖月の声は震えはじめた。心が嫌だと叫ぶ度に心が大きく揺さぶられ、声が震えて涙が溢れる。
けれど、燿も耀も涙を流してはいなかった。だって、悲しくはないから。辛くもないから。寂しくもないから。
「確かに守護者となったら僕達はもうこの世に干渉することは出来なくなる。だけど、悲しい事じゃないし寂しい事でもないんだよ」
燿はそう告げながら、淡く輝くハルナの魂と眩しく輝くゑレ妃の魂を見つめた。その視線は慈しむようでも、懐かしむようでもあった。たくさんの感情が渦巻いているのが見て取れた。
「僕達はある種、彼女達と一つになれる。未来の新しい彼女達に確実に会う事が出来る。死した彼女達と…………ずっと共にいることが出来る」
「これほどまでに嬉しいことはありませんよ」
聖月には本当の意味で、彼らの言っていた気持ちは分からなかったかもしれない。けれど、それでも何となく言わんとしていることが分かった気がした。
「お二人は……そうまでして、ハルナさんと……ゑレ妃さんと……共にい続けたいんですね」
「そうですね」
「なんたって僕達……惚れた弱みがあるからね」
その惚れた相手がハルナなのか、ゑレ妃なのか、それとも彼女たちの前世なのか、そのすべてなのか。それは燿達にしか分からない。けれど、そんな些細なことはどうでもよかった。大切なのは彼女達を大切に思う気持ちだ。それが愛なのか情なのか……その違いだけだ。
「決意は固い……ということですね」
「だからそうだって言ってるじゃん」
燿の回答に聖月は苦笑を浮かべて肩を竦めた。
もう何も言うまいと、その時彼は思った。何を言っても、彼らの意思を曲げる事なんて出来ないと、気付いた。
「私達はいつでも準備万端ですから」
それは、彼女たちの記憶と能力を封印する合図。彼らの魂を分割するサイン。
「……嫌な役目を負わせてしまってすみません、聖月さん」
「そんな事、ないですよ。お二人の最期に立ちあえて……私は嬉しく思います」
すぐにここで石碑に封印というわけにはいかない。けれど、ハルナとゑレ妃の魂をこのままここに留めておくこともできない。
聖月は、既に封印を施すための下ごしらえを終えていたのだ。それを燿も耀も理解していた。知ってはいなくても何となくわかっていた。
「もう……やるの?」
「……はい」
燿の問いかけに、聖月は小さく答えた。真っすぐ彼らを見ることが出来ない。溢れ出した涙をグイッと袖で拭うと、大きく息を吸い込んだ。
「彼女たちの魂を留めることが限界になってきていることに気付いていたので、封印出来るようにとすでに手は打ってあります。あとは、彼女たちの魂から記憶と能力を抜き出して……」
「封印したのち、僕達の魂を分割して守護者として配置する……って感じ?」
「そう、なりますね」
言葉にしてしまえば簡単なことかもしれない。それでも実際に行うにはとても大変な作業だ。
「……そう、ですよ。だから…………だから私がっ」
「だから駄目なんだよ。聖月」
なんで、と言わんばかりに聖月は燿と耀を見つめた。真っすぐに向けてくる瞳から、大粒のダイヤが溢れ出るようにボロボロと彼は泣き続けた。
「あなたは神国を守ってください」
「それは聖月にしか出来ないことだよ」
「私達は私達にしか出来ないことをします」
「ハルナちゃんとゑレ妃ちゃんと『前世から』関わりの深かった僕達にしか、彼女達の封印された石碑を守ることは出来ないからね」
「なん……で…………」
近づく別れの予感に、聖月の声は震えはじめた。心が嫌だと叫ぶ度に心が大きく揺さぶられ、声が震えて涙が溢れる。
けれど、燿も耀も涙を流してはいなかった。だって、悲しくはないから。辛くもないから。寂しくもないから。
「確かに守護者となったら僕達はもうこの世に干渉することは出来なくなる。だけど、悲しい事じゃないし寂しい事でもないんだよ」
燿はそう告げながら、淡く輝くハルナの魂と眩しく輝くゑレ妃の魂を見つめた。その視線は慈しむようでも、懐かしむようでもあった。たくさんの感情が渦巻いているのが見て取れた。
「僕達はある種、彼女達と一つになれる。未来の新しい彼女達に確実に会う事が出来る。死した彼女達と…………ずっと共にいることが出来る」
「これほどまでに嬉しいことはありませんよ」
聖月には本当の意味で、彼らの言っていた気持ちは分からなかったかもしれない。けれど、それでも何となく言わんとしていることが分かった気がした。
「お二人は……そうまでして、ハルナさんと……ゑレ妃さんと……共にい続けたいんですね」
「そうですね」
「なんたって僕達……惚れた弱みがあるからね」
その惚れた相手がハルナなのか、ゑレ妃なのか、それとも彼女たちの前世なのか、そのすべてなのか。それは燿達にしか分からない。けれど、そんな些細なことはどうでもよかった。大切なのは彼女達を大切に思う気持ちだ。それが愛なのか情なのか……その違いだけだ。
「決意は固い……ということですね」
「だからそうだって言ってるじゃん」
燿の回答に聖月は苦笑を浮かべて肩を竦めた。
もう何も言うまいと、その時彼は思った。何を言っても、彼らの意思を曲げる事なんて出来ないと、気付いた。
「私達はいつでも準備万端ですから」
それは、彼女たちの記憶と能力を封印する合図。彼らの魂を分割するサイン。
「……嫌な役目を負わせてしまってすみません、聖月さん」
「そんな事、ないですよ。お二人の最期に立ちあえて……私は嬉しく思います」
すぐにここで石碑に封印というわけにはいかない。けれど、ハルナとゑレ妃の魂をこのままここに留めておくこともできない。
聖月は、既に封印を施すための下ごしらえを終えていたのだ。それを燿も耀も理解していた。知ってはいなくても何となくわかっていた。
「もう……やるの?」
「……はい」
燿の問いかけに、聖月は小さく答えた。真っすぐ彼らを見ることが出来ない。溢れ出した涙をグイッと袖で拭うと、大きく息を吸い込んだ。
「彼女たちの魂を留めることが限界になってきていることに気付いていたので、封印出来るようにとすでに手は打ってあります。あとは、彼女たちの魂から記憶と能力を抜き出して……」
「封印したのち、僕達の魂を分割して守護者として配置する……って感じ?」
「そう、なりますね」
言葉にしてしまえば簡単なことかもしれない。それでも実際に行うにはとても大変な作業だ。
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