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第6章【守護者二人の過去】

47罪 リスクとは①

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「リスクは――――」

 声が震えてしまうのを必死に抑えながら、聖月みづきは呟くと大きく息を吸い込んだ。
 その吸い込む息ですら震えてしまう。すぅっと吸い込む音が、ふるふると震えているように聞こえる。

「彼女たちの記憶と能力を封印する物を守護すること――――です」
「え? それだけ?」
「…………」

 すべてを言うことがまだできなかった聖月みづき。その発言の内容に、もっと凄まじいリスクを想像していたひかるは素っ頓狂な声を上げた。
 ぱちぱちと何度も瞬きを繰り返す瞳が、真っすぐに聖月みづきを見つめる。その真剣さは、見つめられている聖月みづきの顔面に穴が開きそうなくらいだ。

「それだけなわけ……ありませんよね?」
「――っ」

 耀ひかりの問いかけに、息を呑む。『いいえ』と言うことも、『はい』と言うことも出来なかった。

聖月みづきさん」
「――――前世の記憶と能力を、一つにまとめて封印するにはあまりにも膨大で強力で……おそらく分割しなければ封印したものは壊れてしまいます。それに、ただ封印するだけでは、馴染みのない彼女たちの記憶と能力は抜け出てしまうでしょう」

 ひかる耀ひかりの真剣な眼差しに負けた聖月みづきは、ぽつりぽつりと詳細を話し始めた。
 本当はすべて、一人で抱えて一人で完結させるつもりだった。ひかるにも耀ひかりにも知らせることなく、こっそりといなくなるつもりだったのだ。

「封印するものも、小さいものでは膨大で強力なそれらを抱え続ける事は出来ません。なので、私は彼女たちの記憶と能力を封印するための媒介は『石碑』が良いと思っています」
「石碑?」
「はい。大きすぎず、けれど小さくもない。それならば、彼女たちの分割した記憶と能力の強大さに耐えうると思うのです」

 なるべく感情を乗せないように、聖月みづきは淡々とした口調で話を続けた。感情に任せてしまえば、言えなくなってしまう。言葉が続かなくなってしまう。そう聖月みづきは考えたからこそ、感情を押し殺すことを決めた。
 だって、この先の話をすることはとても辛くて苦しいことだから。

「――――それで?」

 ひかるの問いかけに、聖月みづきは拳を強く握りしめた。その先を求める彼の言葉は、声は……まるで『わかっている』と言っているようだったから。

「まさか、彼女たちの記憶と能力を分割して封印した石碑を順繰り順繰り守護し続けるだけ――――なんて言いませんよね?」
「そんなの無理だし、ありえないって僕でもわかるよ?」

 そんな嘘を吐くなら、わかっているよね? と問いかけているように感じるほどに耀ひかりひかるの声は冷たかった。
 嘘を許さない。はぐらかしてもいけない。正直にすべてを告げなければならない。そのことに、聖月みづきの心臓はバクバクと聞こえそうなほどに脈動した。

「馴染みのある者のオーブが近くにあれば、おそらく封印された彼女たちの記憶と能力は抜け出ることなくとどまると……思います」
「――つまり?」

 決定的な言葉までひかる聖月みづきに求める。
 『僕たちは何をしてどう守護すればいいの?』と遠回しに問い掛けるように、視線を見つける。沈黙がただただ痛くて怖かった。
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